サイエンス

月の軌道近くに宇宙基地「ディープスペース・ゲートウェイ」を浮かべて火星を目指す2030年の探査計画をNASAが公表


民間のSpaceXとは別に独自の火星探査計画を進めているNASAは、2030年までに火星に人類を到達させて探査を行うための具体的プランを発表しました。この計画によると、NASAは月に近い軌道を飛ぶ宇宙基地「Deep Space Gateway」に物資や燃料、人員を運び込み、そこを拠点として別の宇宙船「Deep Space Transport」に乗って火星を目指すこととなるようです。

Deep Space Gateway to Open Opportunities for Distant Destinations | NASA
https://www.nasa.gov/feature/deep-space-gateway-to-open-opportunities-for-distant-destinations

NASA Unveils Deep Space Gateway and Transport Architectures | Inverse
https://www.inverse.com/article/29948-nasa-deep-space-gateway-transport-architectures-mars-travel

NASAは2015年10月、宇宙探査を進めて人類を火星へ到達させる構想をまとめた文書「NASA’s Journey to Mars: Pioneering Next Steps in Space Exploration (NASAの火星への旅: 宇宙探査の先駆的な次なるステップへの挑戦)」を発表していました。この中では、火星に至るまでの3つのフェーズ「Earth Reliant (地球近傍)」「Proving Ground (宇宙実証試験)」「Earth Independent (地球からの独立)」に分け、それぞれの段階で行うべき研究や準備の内容が記載されています。


NASAが発表した文書はコレ。

(PDF:22MB)NASA's Journey to Mars - Pioneering Next Steps in Space Exploration - journey-to-mars-next-steps-20151008_508.pdf


この計画では、実際に人や物資を火星やその先の宇宙へ運ぶ手段についての明確な記載がありませんでしたが、2017年3月末、NASAはそれらを実現するための具体的な方法についての発表を行いました。

この計画で重要となるのが、「Deep Space Gateway (DSG)」および「Deep Space Transport (DST)」と呼ばれる2種類の構造物です。DSGとDSTは、NASAが打ち上げる大型打ち上げロケット「スペース・ローンチ・システム (SLS)」を中心としたロケットによって分割して打ち上げられ、宇宙空間で組み立てが行われる予定です。


計画ではまず、最初の「フェーズ1」でDSGの組み立てが行われます。DSGは4人分の居住空間を備える宇宙ステーションであり、地球から打ち上げられた物資や乗組員、燃料などを補給する基地として使用されます。


計画では、2018年から2025年にかけてDSGの主要なモジュールを順次打ち上げて組み立てて行きます。2023年予定の「EM-2」では、発電容量40キロワットの「電力・推進力モジュール」をまず打ち上げ、続いて「居住モジュール」「輸送モジュール」を組み立てればDSGは完成します。その後、「エアロック (気密室)」モジュールなども拡張用に打ち上げられる予定の模様。


完成イメージはこんな感じ。向かって左上には、3つのモジュールが連結されたDSGが宇宙に浮かんでおり、右下には地球からSLSで打ち上げられたオライオン宇宙船がドッキングのために近づいている様子が描かれています。DSGは自ら推進する力を持っており、地球と月の間に存在する「シスルナー空間 (cis-lunar space)」から、月の軌道の間を移動することで、そこから先の探査に適した場所に移動できるようになっています。


DSGが完成したら、次は実際に火星やその先の深宇宙を目指す宇宙船「Deep Space Transport (DST)」を打ち上げます。DSTは重量41トンにも及ぶ大型の宇宙船で、乗組員4人が生活を送る居住空間を持ち、4年におよぶ火星への道のりに必要な食糧や水、医療設備やミッションに必要な物資などを搭載して目的地を目指します。


DSTの打ち上げは2027年に実施される予定。その後は200日前後のチェックを行い、2028年から2029年にかけては、実際の惑星間航行をシミュレートしたクルーズ試験を300日から400日にかけて実施し、長距離・長期間の航行に問題がないかをチェック。問題がなくゴーサインが出ると、実際に人や物資を載せて火星へと出発します。


なお、DSTは使い捨てではなく、何度も再使用することを念頭に設計されるとのこと。また、DSGはNASAだけが利用する施設というわけではなく、他国や民間の機関が使用することもできるように計画されています。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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