取材

銀座ソニービル建て替えのカウントダウンイベント「It’s a Sony展」が懐かしすぎて胸が苦しくなった


昔よくCMで流れていたので意識しなくても「It's a Sony」はあの抑揚でつぶやけます。生活のそばにソニーはありました。そんなソニーの歴史を振り返ることができるイベントが銀座で開催中だったので、ふと足を運んでみました。

こんにちは、自転車で世界一周した周藤卓也@チャリダーマンです。私も気がつけば33歳。ずいぶんと過去の時間が増えました。だからこそ、展示されていた古いソニーの製品が懐かしく、胸が苦しくなったりするのでした。

◆It's a Sony展
銀座・ソニービルの所在地は東京都中央区銀座5-3-1。


ソニービルは1966年にオープンしたソニーのショールームで、50年にわたりソニーという会社とお客さんを繋いできた場所でした。老朽化によりビルの建て替えが決まり、その流れでソニーの歴史を振り返ることができる「It's a Sony展」というカウントダウンイベントが行われることになりました。建て替えが決まった2016年はソニー創業70年、ソニービル誕生50年という節目の年でした。

Sony Japan | ニュースリリース | ソニービル建替前のカウントダウンイベント 「It's a Sony展」開催
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201611/16-108/

EVENT|GINZA SONY PARK PROJECT|ソニービル
http://www.sonybuilding.jp/ginzasonypark/event/

こちらが銀座のソニービル。年始1月4日の訪問だったので街には日の丸が掲げられていました。


ビル入り口近くの告知。


ソニービルは2017年4月1日に解体が始まり、2018年夏に「銀座ソニーパーク」として生まれ変わる予定。その後、2020年に東京五輪が終わってから新しいソニービルが建設されるというスケジュールです。


◆年代別の展示
このイベントは入場無料。しかも写真撮影オッケー(フラッシュ不可)でした。ソニー創業から現在にいたるまでの製品を1940~1950年代、1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代と6つのエリアに分けて展示していました。

SONYの前身となった「東京通信工業」という会社の旗。


電気炊飯器(1945):木製のおひつが当時を偲ばせる、今では考えられないソニーの白物家電。ご飯の炊きあがりに難ありという失敗作。


電気ざぶとん(1946):こちらも今のソニーからは考えられないような製品。大ヒット商品でしたが問題も多く、「銀座ネッスル(熱する)商会」という別会社を販売元にしていました。


TR-63(1957):当時としては世界最小のポータブルラジオ。このサイズのラジオは日本一周でも使ったことあって、あまり古さを感じませんでした。


H型テープレコーダー(1951):一般普及型のテープレコーダー1号機。トランク大の筐体は重さが13kgあります。


ICR-100(1967):ポータブルラジオは50年も前に手のひらサイズにまでコンパクト化されていました。重さは90g。


かつて存在していたソニー坊やというマスコットキャラクター。


ICC-500(1967):今でこそ100円ショップにすらある電卓ですが、昔は「家電」のくくりでした。この製品は6.3kgという重量ながらも取っ手が付いた「ポータブル電卓」という位置づけです。


TV5-303(1962):50年以上前、白黒ですがポータブルテレビはありました。当時世界最小、最軽量の製品。


19C-70(1965):ソニー初のカラーテレビ。クロマトロンという方式のブラウン管のテレビですが、製造コストや故障率から普及することはありませんでした。しかし、この苦難がトリニトロンテレビという大ヒット製品の誕生へと繋がります。


D-50(1984):世界初のポータブルCDプレーヤー。企画時にCDジャケット4枚分の厚さという目標サイズがあったので、開発時には目標サイズに合わせた木型を用意。ほぼ同じ大きさで製品化を果たしています。


CCD-TR55(1989):「パスポートサイズ」のキャッチコピーで人気を博した8ミリビデオカメラです。わずか790gという重さは発売当時で世界最小、最軽量。バブル経済の真っ最中、海外旅行に持っていきたいビデオカメラというコンセプトでした。


FDL-33S(1988):これもまた目を引くおもちゃのような小型テレビ。モニター、チューナー、電源と3つに分割できる奇抜な仕組みでした。


MVC-FD5(1997):記録メディアが3.5インチのフロッピーディスクというデジタルカメラです。CCDは41万画素、液晶は2.5インチ、電源は1250mAhのリチウム電池、記録枚数は1.44MBのフロッピーディスクで約40枚という性能でした。


LBT-V715(1987):黒で統一されたミニコンポに少し昔を感じてしまい撮影。


PLM-50(1997):グラストロンという名称で発売されたヘッドマウントディスプレイ。最近話題のVR機器を彷彿とさせる外観です。「場所をとらずに52型相当の迫力ある映像が楽しめる」という触れ込みでした。


PCG-505(1997):「VAIO(バイオ)」ブランド初のノートPC。OSはWindows95、CPUは133MHz、メモリーは32MB、HDDは1GBとスペックは今のものと比べれば劣りますが、厚さ23.9mm、重量1.35kgという筐体は、2012年に購入した私のノートPCよりコンパクトで、昔の機種なのにすごいと感心しました。


PTC-500(1990):当時としては画期的な手書き入力を採用、手の上で扱えるコンパクトコンピュータということから「Palm Top(パームトップ)」という名称で販売されていた製品。手のひらを英語で「パーム(Palm)」と呼ぶところに由来します。今ならタブレット端末というくくりになりそうですが、PDA(携帯情報端末)の一種です。


NSA-PF1(2009):室内のコーナーにポツンと置いてあったのですが、こちらも展示品でした。約1mの有機ガラス管を振動させて360度全方向に音を伝えるという今までにない形の「Sountina"(サウンティーナ)」という名前のスピーカーです。


GIGAZINEでも2009年当時、大阪ソニースタイルストアへ体験しに行きました。

音を全方向に響かせるソニー製の有機ガラス管スピーカー「Sountina」速攻レビュー - GIGAZINE


VGN-P70H(2007):ジーパンのポケットに入るサイズ(収まるとはいっていない)という宣伝が話題となったポケットスタイルPC。海外を旅していた頃だったので「あったら便利だろうな」と惹かれる製品でした。


KDL-40X1000(2005):液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」ブランドの1号機。それ以前は「WEGA(ベガ)」というブランドでした。現在と比べるとだいぶ厚みのある液晶テレビです。


XEL-1(2007):日本メーカーが続々参入するなど、また新たな動きを見せる有機ELテレビですが、市販品としての発売はソニーが世界初でした。つい最近の感覚でしたが、もう10年も前なんですね。手で掴むと割れそうなくらいの薄いディスプレイにきめ細かい鮮やかな画面は、今の製品かと見間違うほどの完成度でした。


SDR-4XⅡ(2003):今でこそソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」が日本を賑わせていますが、かつてソニーも「QRIO(キュリオ)」という愛称のロボットを開発していました。ホンダの「ASIMO(アシモ)」とともに新時代の幕開けと話題となっていたのを覚えています。


こうしてソニーの歴代製品を振り返ると、今まで抱いていた「守りの企業」というイメージが変わりました。私の知っているソニーは「ベータマックス」「ミニディスク(MD)」「メモリースティック」と独自規格を頑なに推し進めるメーカーで、PCもテレビゲームも既存市場に割って入っただけというものでした。でも、私の知らないソニーはヘッドマウントディスプレイのグラストロンや、全方向スピーカーのサウンティーナなど新しいアイデアの製品を送り出していました。最近だとレンズだけしかない「レンズスタイルカメラ」や、バーチャルリアルティの世界が楽しめるPlayStation VRがそうですね。ロボット掃除機のルンバにしてもアクションカメラのGoProにしても、新しいコンセプトの製品は大ヒットの可能性を秘めています。だからこそ、攻めの企業だったソニーがまた何か変えてくれないか楽しみにしたいところです。

そんな新しいアイデアがコンセプトの新製品もいくつか並んでいました。

MESH:遊び心を形にできる、アプリとつなげるブロック形状の電子タグ|ソニー
https://meshprj.com/jp/

MESHはスマホアプリと電子タグを使って、モノのインターネット化(IoT)をレゴブロックのように直感で扱えるようにした製品。電子タグにはボタンやライト、モーションセンサーと様々な機能があり、それらを組み合わすことで自分だけの便利なシステムを構築することができます。


◆ブランド別の展示
年代だけでなく、ブランド別の展示もありました。

・ウォークマン
ポータブル音楽プレイヤーの代名詞とも言える「ウォークマン(WALKMAN)」はソニーの商標だったりします。私も高校生の頃にはソニーのMDウォークマンのお世話になっていました。

年代を感じるパッケージは、1979年に発売された初代ウォークマン「TPS-L2」という製品。


カセットウォークマンは持っていなかったにも関わらず、広告でも見ていたのか記憶を揺さぶられる製品がありました。


CDウォークマンやら現在のMP3プレイヤーまで。


・記録メディア
こちらも昔から今にいたるまでソニーが力を入れている事業です。ベータマックス対VHS、Blu-ray Disc対HD DVD、メモリーカード市場におけるメモリースティックなど記録メディアの規格争いにはいつもソニーが関わっていました。

カセットテープ以前のオープンリールという磁気テープの規格。


ずらーっと並んだカセットテープ。道端でヒラヒラと風になびく磁気テープって、今はもう見ない光景なんでしょうね。


MD、MO、DVD-R、メモリースティック、USBメモリなど。


・携帯電話
携帯端末事業は合併時代のソニー・エリクソンのイメージが強かったのですが、それ以前にもソニー単独で機種を販売していました。現在は「Xperia(エクスペリア)」というブランドをソニーモバイルコミュニケーションズ単独で展開しています。

1989年に発売されたCP201(一番左)がソニー初の携帯電話。


白黒液晶のストレート端末に、学生時代を思い出しました。


・アイボ
ロボットペットというジャンルを確立させた「AIBO(アイボ)」も年代別に展示されていました。

ロボット感まるだしの試作機。


ERS-100シリーズ。外観が犬のようになっています。


ERS-200シリーズ。100シリーズと比べるとスタイリッシュで近未来的なイメージへと変身。


ERS-300シリーズ。なぜかここで従来の路線から、可愛さを全面に押し出す方向へ。


・PlayStation(プレイステーション)
1994年末、ソニーはプレイステーションでゲーム市場に新規参入し、ファミコンやスーパーファミコンの普及でゲーム市場の中心にいた任天堂を主役の座から引きずり下ろしました。紆余曲折を経た新規参入にいたるまでの過程も見逃せません。

スーパーファミコンの次の王者となったプレイステーション。


プレステ2の小型軽量版。プレステ3の初期版と小型軽量版。


・グループ企業
ハードを作る電機メーカーだけでなく、ソフトを作るエンターテイメント企業という一面もあります。

音楽事業のソニー・ミュージック。玉置浩二氏の「田園」、奥田民生氏の「イージューライダー」とちょっと懐かしい曲が流れていて胸がキュンとなりました。


映画事業のソニー・ピクチャーズ。液晶ディスプレイに「ラストエンペラー」「メン・イン・ブラック」「スパイダーマン」といった映画の宣伝告知が次々に切り替わっていました。1989年にアメリカのコロンビア・ピクチャーズを買収したもので、1991年に社名を変更しました。


◆その他の展示
他にも雑誌POPEYEとのコラボ企画で、コムアイ氏(水曜日のカンパネラ)、ピエール瀧氏、みうらじゅん氏、平井一夫社長まで10人の著名人によるMy Favorite Sonyとして思い出深いソニー製品を取り上げるコーナーがあったりと、かなり時間をかけて回れる内容でした。


ソニービルを代表する仕掛けのメロディステップのミニ版もどこかにあるので探してみてください。階段を踏むと音が鳴ります。

It's a Sony展で見つけたソニービルの「メロディステップ」ミニ版 - YouTube


今回のイベントで何より心に残ったのはトランク大のテープレコーダーの再生でした。ボタンを押すと当時の声が再生されます。「1年後どんな声の変化があるだろうか楽しみです」と話していました。1年どころか50年、60年経った今の人が聞いていますよ。当時声を吹き込んだ人でもう一度ここで自分の声を聞ける人はそういないでしょう。それにも関わらず、テープの向こうに彼らは存在していて、何とも言えない気持ちになりました。


2017年2月12日まで同じ展示が行われているので、興味を持った方がいたら、ぜひ足を運んでみてください。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/
)

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in 取材,   ハードウェア, Posted by logc_nt

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