レビュー

消え行く運命にあった貴重な記録フィルムをデジタル化してアーカイブする「科学映像館」


昭和の時代に到来した日本の高度発展期は、先人のさまざまな技術や知識によって支えられてきました。そんな当時の風景や技術の姿を克明に捉えた映像のアーカイブを進め、インターネットで公開しているサイト「科学映像館」では、2016年12月時点で800本以上の貴重な映像を誰でも見ることができるようになっています。

科学映像館
http://www.kagakueizo.org/

このサイトは、NPO法人「科学映像館を支える会」によって運営されているもので、技術や知識を収めた貴重なフィルム映像、いわゆる「科学映画」をデジタル化して一般に公開するという取り組みが進められています。


収められている映像のジャンルは、「教育」「自然」「動物」といったものから、「医学・医療」「食品科学」「工業・産業」、そして「農業・漁業・暮らし」など多岐にわたります。それぞれのジャンルごとに、今ではもう見られなくなった昔の姿がフィルムからデジタルアーカイブされています。


その中でも人気がある作品の1つが、この「68の車輪」という映像。1965年に映像製作会社「東京シネマ」が製作した作品で、重量280トンにも及ぶ超大型の変圧器を、日本通運が作った専用のトレーラーで完成品のまま輸送する様子が克明に記録されています。映像の中に所々現れる、昭和中期の日本の原風景も見逃せないところ。

68の車輪 東京シネマ製作 - YouTube


また、出光が所有・運航していた巨大タンカー「日章丸」の姿を収めた映像も。小説がヒットし、映画にもなった「日承丸」のモデルとなったのは5世代ある歴代の日章丸のうちの2代目となる日章丸なのですが、この作品に収められているのは3代目の日章丸となっています。

日章丸 東京シネマ製作 - YouTube


さらに、産業に関わる内容ばかりではなく、以下の「女性と着物」のような当時の様子を収めた作品も。これらの映像は、何もしないまま放置されていると、そのまま朽ち果てる運命にあった作品です。

女性と着物 WOMEN IN KIMONO 古賀プロダクション製作 - YouTube


映像の元になったフィルムは、「東京シネマ」をはじめとする映像制作会社や当時の関係者、関係企業などから寄せられたもの。原版となるメディアは35mmネガフィルムなどのアナログメディアで、同NPO法人では寄せられた寄付金などを財源としてプロによるデジタル化とアーカイブを行っているそうです。


収蔵されている映像は実に多岐にわたります。プロジェクトの第一弾としてデジタル化された「生命誕生」は1963年に製作された17分間の映像で、「ニワトリの受精卵から胚盤を取り出し、ガラス容器の中で培養してその成長を、顕微鏡微速度撮影を駆使しながら観察することによって、生命の誕生という感動的な出来事を描」くというもの。(ブラウザで映像を再生する場合はMicrosoft Silverlightプラグインのインストールが必要なことがあります)

生命誕生|配信映画|科学映像館



近代の工業に欠かせない「アルミニウム」の生産技術を収めた映像もアーカイブされています。

アルミニウムの誕生|配信映画|科学映像館


また、「戦後初の国産機」として開発されたYS-11型機や、日本が世界に誇る新幹線の当時の姿を収めた作品を見ることができるのも素晴らしいところ。

YS-11 新しい日本の翼|配信映画|科学映像館


映像は科学技術だけにとどまらず、敗戦後に占領下におかれた日本の状況をとらえたものも収められているのも興味を惹かれます。

ウォークプロモーション|配信映画|科学映像館


ちなみに、創設以来の配信映画の延視聴時間トップ10は以下の通りとなっているそうです。

以下は創設以来の配信映画の延視聴時間(分)トップ10
「東日本大震災巨大津波」  3,013,738 (10%)
「68の車輪」 東京シネマ1965年製作 2,833,557 (9.6%)
「美しき国土 その生い立ち」東京シネマ ...

科学映像館さんの投稿 2016年12月12日


このように、科学映像館では貴重な映像を誰でも無料で自由に閲覧できるようになっていますが、もちろんそこにはコストがかかっていることも事実。同館では広く寄付を募っているので、取り組みに価値を見いだし、同館の理念に賛同できる人は支援を検討してみてるのもいいかも。


科学映像館寄付金|科学映像館

これらの貴重な映像は、いずれも倉庫に保管されていたものや、再生装置そのものがなくなってしまい、誰も見ることができなくなってしまったものをデジタル化したものです。実際の作業では、元となる16mmフィルムをSD画質でデジタル化し、後にハイビジョン画質でのデジタル化が行われれるなど、時代を追ってさまざまな進化や変更が加えられているとのことで、そのあたりのエピソードを紹介したページの解説も興味深いので必読。

映像の数々は、科学映像館のサイトでも再生できるほか、NPO法人「科学映像館を支える会」理事長である久米川 正好氏のYouTubeチャンネルでも閲覧することが可能です。

久米川正好 - YouTube
https://www.youtube.com/user/MASAYOSHIKUMEGAWA/featured

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