「喜ばない子ども」はうつ病の可能性が高いという研究結果が発表される

By Tony Alter

クリスマスや誕生日は多くの子どもにとってプレゼントがもらえる待ちに待った最高の月かもしれません。しかし、すべての子どもがプレゼントに喜びを示すわけではなく、プレゼントをもらっても喜ばない子どももいます。プレゼントに限らず、何か楽しいことなどを経験したはずなのにあまり喜ばない子どもはうつ病の可能性があることを新しい研究結果が発表しています。

Depressed children respond differently to rewards than other kids – Science Bulletin
http://sciencebulletin.org/archives/8313.html


セントルイスにあるワシントン大学の医学大学院が、臨床的にうつ病と判断された子どもは健常な子どもと比べて「報酬に対するが反応(喜び)が少ない」ことを脳波測定を用いた研究により明らかにしました。「今回の研究で明らかになった事実により、うつ病の幼い子どもがどうやって脳で感情を処理しているかがわかるようになるかもしれない」と語るのは、ワシントン大学のEarly Emotional Development Programでディレクターを務めるジョアン・ルビー氏です。

児童の感情発達について研究しているジョアン氏は、「オモチャやプレゼントなど、人間は何かしらの報酬を得ると『喜び』を感じます。そして、1度経験した『喜び』が、さらなる報酬や成功を求める糧となります。しかし、成長の初期段階(幼い頃に)にこのプロセスを鈍らせてしまう(うつ状態になって喜びのプロセスが健常者とは異なるものになってしまう)ことは、重大な懸念となります。なぜなら、どのように喜びを感じるかは年をとってからの『人がどのようにして報酬を受けられるタスクに取り組むか』にまで影響する可能性があるからです」と語っています。

今回の研究結果はJournal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryの2016年12月号で公表されます。論文の第一著者であり、児童精神医学の准教授を務めるアンドリュー・C・ベルデン氏は、「脳が報酬に対して反応が鈍くなる症状は、10代の青年や大人など、幅広い年齢層のうつ病患者の脳で確認されていました。今回の研究では、脳が報酬に対して鈍い反応を示すようになる症状が、未就学児童にもみられるのかに興味を持ち、研究を行いました。そして、実際に幼い子どもの脳でも同様の反応がみられました。今回の発見により、うつ病の人はいくつになっても多くの神経反応で同じような反応をみせることが判明しました」と語っています。

By Richard Leeming

研究では臨床的にうつ病と診断された3歳から7歳の子ども84人を被験者として、ジョアン氏やPsychological&Brain Sciencesで課長を務めるディアンナ・バーチ氏、医学部の精神医学の分野で教授を務めるグレゴリー・カウチ氏らがセラピーと脳波スキャンを行っています。脳波スキャン時には、子どもたちはシャワーキャップのような見た目の装置を頭に装着しており、これを用いて脳の電気的な反応を計測したそうです。

脳波スキャン時には被験者となった子どもたちに簡単なコンピューターゲームをプレイしてもらっています。このゲームはとても単純なもので、画面上に表示された2つのドアのいずれかを選択し、一方のドアを開けるとポイントが加算され、もう一方を開けるとポイントが減少する仕組みになっています。過去には10代の子どもや大人を対象に、「ポイントを獲得したら現金をプレゼント」という条件で同様のテストが行われたそうですが、今回の研究では被験者が幼い子どもであったため、現金報酬の代わりに正しいドアを十分な回数選べた場合にはおもちゃをゲットできるようにし、実験前にどんなおもちゃで遊べるようになるのかを示すことで、被験者のモチベーションを刺激しています。


この実験の結果、ポイントを失った時には、臨床的うつ病の子どもたちと健常な子どもたちの脳の反応は同じようなものだったことがわかっています。一方、ポイントを得られるドアを選んだ時の反応は両者で異なり、健常な子どもの反応と比べるとうつ病の子どものの脳の反応は明らかに鈍いことがわかりました。論文著者のアンドリュー氏は「脳波調査によりわかったのは、うつ病の子どもの脳は、正しいドアを選らぶという愉快な出来事に対しては明らかに反応が鈍いということでした」と語っています。

さらにアンドリュー氏は、「うつ病の子どもの脳が間違った選択をさせようと過剰に反応しているわけではありません。これは、失敗した時の脳の反応がうつ病の子どもと健常な子どもの間で変わりないことからもわかります。我々の調査しで明らかになった『違い』は、報酬に対する反応だけでした」とコメントしています。

ジョアン氏とアンドリュー氏の次の研究目標は、報酬に対して反応が鈍くなってしまった脳に対する治療方法を見つけ出すことだそうです。「(もしも治療方法が見つかればそれが)標準化するかもしれないし、そうならないかもしれない」とジョアン氏。

なお、とても幼い子どもがオモチャやプレゼントといった報酬に喜びを示さない場合、これは子どもがうつ病になった、もしくはその傾向にあるサインと考えてよいとのこと。また、もしもそういった状態が続く場合には、親が小児科医に相談するべきであると提案しています。「自分の行いに対して過度に罪の意識を持ってしまう子どもや、睡眠や食欲に急激な変化が見られる子どももうつ病になる危険性があります。もし、絶え間なく悲しんでいたり、イライラしていたり、やる気がなかったりする場合、これはうつ気味であるサインとなるわけですが、これは大人だけでなく、3~4歳の幼い子どもにさえ当てはまります。そして、そういった反応が子どもに見られる場合、両親は自分の子どもをしっかりと評価してあげるべきです」とジョアン氏は語っています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii