サイエンス

人間を好んで刺す蚊と牛を好んで刺す蚊には遺伝子に違いがある

by tanakawho

蚊はヒトだけではなくウシなど他の生き物の血も吸います。この「ヒトを好む個体」と「ウシを好む個体」を調べていった結果、この好みの差が遺伝子の違いにあることがわかりました。

PLOS Genetics: The Genetic Basis of Host Preference and Resting Behavior in the Major African Malaria Vector, Anopheles arabiensis
http://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1006303


The genetics behind what mosquitos choose to bite | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/09/the-genetics-behind-what-mosquitos-choose-to-bite/


蚊の中でも「ハマダラカ」はマラリアの媒介者として広く知られています。ハマダラカはヒトだけではなく、ウシなどの血も吸うので、もし「吸血先」としてヒトを選ぶことが多ければそれだけマラリアの感染者が増える可能性が高まりますが、ヒトが刺されることが少なければ、それだけマラリアの感染者数を減らすことができます。

そこで、カリフォルニア大学のブラッドリー・J・メインさんらは好みの異なる蚊を捕まえて、その遺伝子を調べることにしました。

メインさんらは「ウシを好む蚊」25匹と「ヒトを好む蚊」23匹の遺伝子を比較。すると、合計480万の塩基対の違いが見つかりました。違いがあったのは、においの発信や受容に関連する遺伝子で、これが好みの違いを生んだのではないかと考えられています。つい先日も、ニワトリのニオイがマラリア予防に効果的という研究が発表されています。

この結果から、今すぐに何かができるというわけではないのですが、将来的には蚊の抑制装置に役立てられたり、あるいは「ヒトを好む蚊」を減らすことで、マラリアの脅威を押さえ込むことができるのではないかと期待されています。


ちなみに、アフリカではマラリア対策として「長期残効型蚊帳」の利用が増加していて、功を奏しています。住友化学の長期残効型蚊帳「オリセットネット」は、蚊帳の素材であるポリエチレンに防虫剤ピレスロイドを練り込んであり、薬剤が徐々に溶け出してくる「コントロール・リリース」という技術によって防虫効果が5年以上続くという代物。

住友化学のマラリアへの取り組み | 「オリセット®ネット」を通じた支援 | 住友化学
https://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/olysetnet/initiative.html


蚊は戸外で休むものと屋内で休むものがいて、屋内で休むということはそれだけ人との接触が増え、マラリアの感染源になると考えられるので、メインさんらは「戸外で休む蚊」と「屋内で休む蚊」の遺伝子の違いも調べましたが、ここでは差は見られなかったとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ニワトリのニオイが「マラリア予防」に効果的であることが研究で明らかに - GIGAZINE

ゲノム編集でマラリア原虫に耐性を持つ蚊が誕生、マラリア克服の決め手になる可能性 - GIGAZINE

遺伝子操作した蚊でマラリア・デング・ジカを媒介するネッタイシマカを撲滅する放出実験がアメリカ本土で実施される可能性 - GIGAZINE

歴史上最も多くの人間を殺している「蚊」のマラリアを根絶する「遺伝子組み換え蚊」問題まとめムービー - GIGAZINE

ビル・ゲイツがマラリア撲滅のために有効な「遺伝子ドライブ」技術は5年以内に登場すると発言 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.