洋上で飛行機から電波を受信してリアルタイムの位置情報を知らせるドローン船「Wave Glider」の運用テストが進行中

上空を飛んでいる航空機の位置をリアルタイムで表示するFlightradar24のカバーエリアを広げるドローン船「Wave Glider」のテスト運用が順調に進んでいます。このドローン船は太陽電池と波の力だけを使って洋上を無人航行し、飛行機から送られてくる電波「ADS-B」を受信する仕組みを備えています。

Setting Sail for Global Coverage—Flightradar24 ADS-B Receivers On-board a Surface Ocean Robot – Flightradar24 Blog
https://blog.flightradar24.com/blog/setting-sail-for-global-coverage-flightradar24-ads-b-receivers-on-board-a-surface-ocean-robot/

Wave GliderはLiquid Robotics社が開発したドローン船。船体の上面に電波を送受信するアンテナと電源用の太陽光パネルを搭載し、船体内に制御用のコンピューターやセンサー類を搭載できるようになっています。

海上から見えるのはサーフボードのような船体だけですが、実は海中にも潜水体を持つ構造になっているのがWave Gliderの大きな特長。長さ8メートルのテザーでつながれた潜水体は6対・12枚の「ひれ」を備えており、洋上の波の力で上下に揺さぶられることで船体を推進させる力を生みだすようになっています。

全体像はこんな感じ。海上の船体の長さは3.05メートルで、テザーにつながれた全長2.13メートルの潜水体が8メートル下に潜る構造となっています。なお、推進力を得る潜水体にはスクリューも備わっており、太陽光パネルが作った電力を使って航行することも可能。

船体には制御機器や観測機器を収納するためのスペースが確保されており、自然観測や今回の取り組みのように電波を送受信するための機器を搭載できるようになっています。

実際にWave Gliderが航行している様子は、以下のムービーで見ることができます。

The Wave Glider: How it Works - YouTube


このWave Gliderを使い、従来はサポートエリア外だった洋上でも航空機からの電波を受信できるようにするというのが、Flightrader24Liquid Roboticsによる取り組みです。飛行機が好きな人なら知っている人も多いFlightrader24は、航空機が自機の位置を知らせる電波「ADS-B」を受信して、マップ上にほぼリアルタイムで表示させるというもの。以下の画像のように飛行機の位置が黄色いアイコンで示されるほか、アイコンをクリックすると機体の名称や運航しているキャリア、機体の登録番号や出発・目的地、フライト情報などが、実際に飛んできた航路とともに表示されるサービスとなっています。

Flightradar24.com - Live flight tracker!
https://www.flightradar24.com/

多くの情報が得られるFlightrader24ですが、航空機からの電波(ADS-B)を受信する必要があるという仕組み上、受信機器を設置できない洋上などがカバーできないという死角がありました。そんな死角を埋めるために開発されているのが、Wave Gliderを使ったドローン船というわけです。

Flightrader24では、Wave Gliderをノルウェーの沖合200kmのエリアを設定して、6～8週間にわたるテストを実施中とのこと。この海域は、海面を航行する船舶の数が少ないこともあり、テスト運用にはうってつけの地域でもあるそうです。

実際にWave Gliderからの中継信号の受信に成功しており、Flightrader24の画面上でも表示が行われています。Wave Gliderによって受信された航空機の情報は、以下のように水色のアイコンでわかるように表示されているとのことです。