ディープラーニングでキュウリを選別する人工知能搭載仕分け機が開発中


現在で最も華やかなコンピューター技術と言えば、ディープラーニングを用いた人工知能と言えますが、農業の分野にもそんな波は訪れようとしているようです。元制御システム開発者で、現在は家業であるキュウリ農家を営んでいる小池誠さんは、GoogleのTensorFlowを使って学習させたAIを駆使することで、収穫されたキュウリを自動で選別して等級ごとに仕分けする装置を開発しています。

【CCB9】きゅうり仕分け機試作2号機 | Workpiles
http://workpiles.com/2016/08/ccb9-prototype2-complete/

Google Cloud Platform Japan 公式ブログ: キュウリ農家とディープラーニングをつなぐ TensorFlow
http://googlecloudplatform-japan.blogspot.jp/2016/08/tensorflow_5.html

小池さんが開発した「きゅうり仕分け機」は、縦型のラックの横に仕分け用のベルトコンベアが装着されている構造。右のラックにキュウリを載せるとカメラが外観を撮影してAIが等級を判別し、ベルトコンベアで所定の段ボール箱に入れられる仕組みになっています。


きゅうり仕分け機が実際に稼働している様子がコレ。従来ならば人の目と手で行っていた作業を、機械が自動で行う様子を見ることができます。

TensorFlow powered cucumber sorter by Makoto Koike - YouTube


キュウリを仕分け機のトレーの上に載せると……


複数のカメラで撮影したキュウリの外観をもとに、どの等級に仕分けるかをAIが判断。AIには事前に何千枚ものキュウリの写真を見せ、自分で等級を見極める能力を学習させてあるそうです。


判断が終わったら、キュウリを乗せていたトレーがカタンと倒れてキュウリをベルトコンベアに落とし……


ベルトコンベアがキュウリを左へ送ります。


そして、レバーが動いてキュウリを段ボールの中にシュート。段ボールは左に行くほど等級が上がるように置かれているようで、先ほど判定されたキュウリはB級品でしたが、ベルトコンベアに残された見るからに立派なキュウリはさらに高い等級の箱に入れられることになるようです。


小池さんは、Googleの人工知能「AlphaGo (アルファ碁)」が世界最強の棋士と互角に囲碁を差し合う様子を目にして「これは凄いことが起こっている」と直感したことをきっかけに、ディープラーニングを使ったキュウリ仕分け機の開発に乗り出したとのこと。


実家がキュウリ農家を営んでいるという小池さんは、繁忙期になると1日8時間にわたって延々とキュウリの仕分けを行う母親の姿を目の当たりにします。仕分けの作業が自動化されれば、その手間を本来のキュウリ作りに向けられると考えた小池さんは、わずか4か月で試作機の完成にこぎ着けたそうです。記事作成時点では試作機の2号機が完成しているとのこと。


新鮮なキュウリ作りを信条とする小池さんの父親は「棘が刺さるキュウリ」にこだわりを持っており、表面に残る凹凸の「イボ」があるキュウリこそが品質の証しと考えているとのこと。


実はキュウリの等級にはこれといった規格がなく、農家が独自に判断を下しているそうです。小池さんのところでは、キュウリの太さや色、ツヤ、キズの有無などで9等級に選別を行っているとのことで、これは人間でも簡単にできる仕事ではありません。


そんな作業を自動化させるための技術として、ディープラーニングを使ったAIが用いられているというわけです。


それまでディープラーニングや機械学習に触れる機会がなかったという小池さんは、オープンソースのライブラリである「TensorFlow」を用いることからディープラーニングの世界に入ったそうです。TensorFlowはディープラーニングの実装に必要な数理モデルや最適化アルゴリズムについて熟知していなくても、公開されているサンプルやチュートリアルを用いて「とりあえず触り始める」ことができるというもので、入門用ツールとしては最適なものといえます。

試作2号機のシステム構成は以下の通り。Webカメラによる画像撮影をRaspberry Pi 3で制御し、そこでTensorFlowによる小規模なニューラルネットによってキュウリのあり・なしを判断。そして、撮影したキュウリ画像をLinuxマシン上のTensorFlowで動作するディープラーニングによる認識エンジンに送ります。キュウリ画像の認識には、TensorFlowのサンプルコード「Deep MNIST for Experts」をベースに、若干手を加えたディープニューラルネットワークを用いているとのこと。畳み込み層とプーリング層を数回通したあと、全結合層を配置という構成で、扱う画像の解像度と分類数をキュウリ仕分け用に変更しているそうです。


現時点での判断スピードは1本あたり数秒を要している模様。さらに、学習が途上段階にあるようで、判断の正解率は70%程度ということで、改善の余地は残されている状態だそうです。しかし、これらの課題もクラウドによる分散学習でさらに多くのキュウリを学習させることで、劇的な改善が期待できるものとみられます。

かつて、農家の人々が行っていた大変な農作業を軽減させるために技術を開発したのがヤンマーなどの農機具メーカーでした。それから約1世紀がたち、21世紀の農業は以下のAlphaGoのサーバーを用いた人工知能によって負担減と効率アップが実現されるということになるのかもしれません。


なお、実際の技術の詳細などは、ページ上部の元ソースでガッツリ読み込むことが可能です。また、小池さんのキュウリ仕分け機は、Googleの英語ブログにも掲載されて世界に紹介されています。

How a Japanese cucumber farmer is using deep learning and TensorFlow | Google Cloud Big Data and Machine Learning Blog  |  Google Cloud Platform
https://cloud.google.com/blog/big-data/2016/08/how-a-japanese-cucumber-farmer-is-using-deep-learning-and-tensorflow

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