シリコンバレーにはびこる詐欺まがいのスタートアップの実態


シリコンバレーのスタートアップで重要なポジションを得たものの詐欺まがいの創業者によって翻弄された自身の経験について、ペニー・キムさんがまとめています。同じような経験を他の人がしないようにという目的でかかれた投稿の中には、シリコンバレーのスタートアップで働く場合に覚えておくべき教訓が挙げられています。

I Got Scammed By A Silicon Valley Startup – Startup Grind – Medium
https://medium.com/startup-grind/i-got-scammed-by-a-silicon-valley-startup-574ced8acdff#.yc1xjv613

ダラスに住んでいたペニー・キムさんは、Angel.coでシリコンバレーの仕事を探したところ、あるスタートアップX社から、マーケティングディレクターのポジションでのオファーを受けました。面接は最高技術責任者(CTO)が担当し、「次に日にでも会えないか?」というシリコンバレーのスタートアップならではのスピード感に戸惑いながらも、翌日X社を訪れて面接を受ける事になったそうです。

X社のマイケル(仮称)CEOは国際的な鉱業事業グループやJPモルガンでのアナリストとしての経歴を持つと自身を紹介し、共同創業者でもあるチャーリー(仮称)CTOはIBM出身と説明したとのこと。結局、二人の創業者は自分たちの製品のことよりも自分たちの経歴について話すことが多かったそうです。


マイケルCEOはすでに投資家から400万ドル(約4億円)の出資を受けており、使い道はゆだねられているため新規事業に投入する見込みだとのこと。条件を詰める過程で試用期間がないのかとキムさんがたずねたところ、「すぐに雇い、すぐクビにすることがあるのでありません」とマイケル氏が話したそうです。

・教訓01:「すぐ雇い、すぐクビにする」という言葉は信じるべき。そしてそんな会社とは距離を置くべき

雇用条件の交渉の結果、年俸13万5000ドル(約1350万円)、引越費用を含むボーナス1万ドル(約100万円)、条件変更にともなう3カ月ごとの契約破棄オプションなどの条件でキムさんはX社で働くことになりました。

・教訓02:信じられないほどの好条件は信じるべきではない

シリコンバレーに移り住む前に日本に旅行に出かけていたキムさんでしたが、旅行の予定を伝えていたにもかかわらず早くもX社からユーザー獲得戦略についての意見を尋ねる電話を受けたとのこと。結局、旅行も早々に切り上げて、大慌てで6年間住んだアパートと12年間住み慣れた町に別れを告げ、自動車に荷物を詰め込んで引越ししたそうです。

・教訓03:小さなことを与えると、大きなものを要求される。どこに限界があるのか「境界線」についてテストされる

マーケティングに関する仕事を与えられると告げられていたキムさんですが、2016年7月5日の初出勤日に、マーケティングディレクターとして新しい人が雇われたことを知りました。振り返ればマーケティングに関する仕事をする自分に何の相談もなかったことは、これから続く災難を暗示していたと感じるそうです。


・教訓04:相談なくマネージャーが雇われる場合、自分の仕事と競合する可能性がある

キムさんが出勤すると、その他にもH-1Bビザで8人の中国人が短期労働者として雇われていることを知ったとのこと。

・教訓05:リーダーが専門的な経験・資格以外の理由で人を雇う場合、そのリーダーはダメかもしれない

X社のサービスは3種類のサブスクリプションを持つビジネスモデルでしたが、無料版と有料版との差別化がうまくいっていないとキムさんは感じ、ホワイトボードを使った会議を主催して新しいブランド戦略を説明しました。最終的にキムさんの意見は通らず、チャーリーCTOの考えが採用されましたが、2016年10月に製品のベータ版をリリースすることは定まったそうです。


・教訓:自社の製品について説得力のある説明をできないならば、製品はリリースする準備ができていない

すでにX社は400万ドルという十分な資金を獲得済みと聞いてはいましたが、何が議論されているのかを知りたいと思ったキムさんは、X社で働き始めた翌週に、マイケルCEO、チャーリーCTOの投資家との面談への参加を申し出ました。その面談では最初の投資家が製品についての説明を求めたときに、マイケルCEOは30分間も製品についてではなく自身の人脈や資格について延々と話したとのこと。「市場をどう壊し、客をどう惹きつけるのか?」などの投資家の質問に、マイケルCEOとチャーリーCTOは魅力的な回答を出せなかったと感じたそうです。

・教訓07:創業者が誇大な説明をするときは、欠けている何かを補っている

7月後半にキムさんの最初の給料の支払いが遅れました。新しい会計システムへの移行の問題で小切手で給料を支払われたキムさんは、引越費用を捻出できなくなったため一時的にAirbnbで部屋を借りることになったそうです。このころ、同僚で信頼できると考えていたブルースさん(仮称)が、なんとマイケルCEOに5万ドル(約500万円)を貸していることを知りました。


・教訓08:創業者や共同出資者がチームメンバーからお金を借りているのはとても悪い兆候である

その後、給料が支払われていないH-1Bの短期労働者はいらだちをかくさなくなったとのこと。8月2日にキムさんは「銀行手続きで支払いが遅れている状況について詳しく話したい。他の支払い手段など最良の方法を模索したい」旨のメールをマイケルCEOに送ったところ、返事はなかったそうです。


カリフォルニア州では賃金請求プログラムが非常に充実しており、弁護士を雇うことなく会社に請求できることを知ったキムさんは、賃金請求プログラムの利用手続きを進め始めました。それと同時に知人の弁護士に相談したところ、「X社と交わした雇用条件の書類が役立つのは間違いないが、会社がお金を持っていない場合、法廷闘争は価値がないだろう」というアドバイスを受けたとのこと。その弁護士によると、このようなトラブルはシリコンバレーではこれまでに何度も見た光景なのだそうです。

8月4日にマイケルCEOは、各従業員にあてて支払い手続きのトラブルによって未払い状況が続いているため、マイケルCEO個人の口座からの支払いをした旨のメールと、領収書のPDFをメールで送ってきました。しかし、電信送金を確認する旨のメッセージの横にある日付が、なんと2014年のものだったとのこと。


画像をGoogle検索すると、すぐにオリジナル画像を見つけることができたそう。オリジナル画像とマイケルCEOが偽装した画像を比較するとこんな感じで、マイケルCEOがフォトショップを使って偽の領収書を作ったことは明らかだったそうです。当然のようにお金が送金されることはありませんでしたが、「確かに送った。後はそっちの銀行口座の問題で、私には責任はない」と言い逃れるマイケルCEOに対して、キムさんは正式な賃金請求プログラムを実行することにしたそうです。


・教訓10:支払いを受けていない場合、仕事にいくべきではない

結局、X社を辞めたキムさんですが、いまだに賃金請求プログラムは続いており、賃金の支払いを受けていません。会社を辞めてからX社のサイトをチェックしたところ、マイケルCEOがプロフィール画像をブルドッグの写真に変更したことに気づいたそうです。マイケルCEOのLinkedInやFacebookのプロフィール画像には、イメージ画像が使われており、インターネット上にマイケルCEOの写真を見ることはできないとのこと。

・教訓11:会社のCEOがオンラインページで自身の画像を載せていなかったり、「経歴ロンダリング」のために業者を使っている場合、何かを隠している

ダラスに戻ったキムさんは、「はたしてマイケルという名前すら本名なのだろうか?」という疑念を抱いているそうです。

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