サイエンス

クローン羊ドリーのクローン姉妹たちは寿命が短くなっていないことが判明

By Mark A Coleman

「世界初の哺乳類の体細胞クローン」として世界的に有名なクローン羊のドリーは、一般的な羊よりも短命で、このことから「クローンは寿命が短くなるのでは?」と考えられるようになりました。しかし、最新の研究で、ドリーのクローン姉妹たちは寿命が短くなっていないことが判明し、「クローン=短命」という考えが打ち崩されています。

Healthy ageing of cloned sheep : Nature Communications : Nature Research
http://www.nature.com/ncomms/2016/160726/ncomms12359/full/ncomms12359.html


Dolly the Sheep’s Fellow Clones, Enjoying Their Golden Years - The New York Times
http://www.nytimes.com/2016/07/27/science/dolly-the-sheep-clones.html


The normal, boring life of a clone: Dolly’s cloned cohort hits old age | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/07/the-normal-boring-life-of-a-clone-dollys-cloned-cohort-hits-old-age/


今から20年前の1996年7月、クローン羊のドリーがスコットランドのロスリン研究所で誕生しました。メスのクローン羊・ドリーは世界初の哺乳類の体細胞クローンとして一躍世界的に有名になります。世界で最も有名な羊になったドリーですが、その寿命はとても短いものでした。

ドリーは異常な若さで骨関節炎を患い、研究者たちは「ドリーが急速に老化している」と推測しました。実際に、2003年の2月14日、ドリーが6.5歳の頃に進行性の肺疾患を起こし、最終的に安楽死させられることとなります。これはドリーの品種であるフィン・ドーセット種のヒツジの平均寿命のおよそ半分で、「クローンは寿命が短くなるのでは」という考えが出てくることにつながっています。しかし、当時のドリーが暮らしていたロスリン研究所の農場では、他の羊たちが同様の病を患っていたそうで、ドリーが早死にしたことは「クローンであることとは関係がない」という意見も生まれ、科学者の間でどちらが真実なのか長らく議論されてきました。

By Toni Barros

しかし、「クローンであることと寿命が短いことの間には関係性がない」という考えを裏付けるような研究結果が、2016年7月に公表されました。その研究結果というのはノッティンガム大学の発生生物学者であるケビン・シンクレア氏たちが公表したもので、研究チームは13頭のクローン羊を飼育し、老齢になるまで一連の試験を行うことで「クローン羊は単に健康なだけでなく、完全に通常の羊と同じように老化していく」ことを明かしています。

この研究では13頭のクローン羊を被験体としてその健康状態を追跡調査したわけですが、被験体となったクローン羊の中の4頭は、クローン羊のドリーを生み出す際に使用されたものとまったく同じ「乳腺細胞株」から作られた、ドリーの「一卵性のクローン姉妹」であるそうです。この4頭はそれぞれデビー、デニス、ダイアナ、デイジーと名付けられ、2007年の7月に誕生しましたが、2016年7月の9歳(人間では70歳相当)になった時点でも健康な状態を保っているそうです。なお、ドリーのクローン姉妹4頭以外は、別の培養細胞から作成されたクローン羊です。

被験体となった13頭のクローン羊は、クローン動物の加齢関連疾患を検査するために血圧・糖尿病・筋肉と骨の強度などが調査され、ドリーのクローン姉妹の1頭であるデビー以外は正常な数値、つまりは健康な状態を保っていることが明らかになりました。デビーは「小さな例外」とされていますが、軽度の関節炎を患っているだけで、同年齢の羊からすれば珍しいものではないとのこと。なお、デビーは現在、関節炎の症状を緩和するために朝食時にイブプロフェンを摂取しているそうです。

By Lennart Tange

NPRによるインタビューの中で、クローン羊のドリーが早死にしてしまったことについて、シンクレア氏は「まさに不運としか言えない」とコメント。また、New York Timesのインタビューに答えたテキサスA&M大学の科学者であるチャールズ・ロング氏は、「この研究結果はこれまで我々が抱いていたクローンに対する認識をはっきりと変えてしまった」と語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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