あえて使いにくいデザインを採用する理由とは?


公園や駅、バス停やその他の公共の施設には、必ずと言って良いほど座るためのベンチやちょっとしたスペースが設けられています。しかし、そういったスペースの多くが、長く居座れないように何かしらの工夫が施されています。こういったデザイン戦略は「Hostile architecture(有害環境)」もしくは「Unpleasant Design(不愉快なデザイン)」と呼ぶのですが、その事例をアート・デザイン・建築関連のメディア99% Invisibleがまとめています。

Unpleasant Design & Hostile Urban Architecture - 99% Invisible
http://99percentinvisible.org/episode/unpleasant-design-hostile-urban-architecture/

書籍「Unpleasant Design」の著者であるゴルダン・サヴィッチ氏とセレーナ・サヴィッチ氏によると、「不愉快なデザイン」と呼ばれるものはデザインの失敗例ではなく、むしろ一定の活動を阻害することに成功したデザイン例であるそうです。例えば、公共のスペースにベンチを配置しようと考えた場合、通常は快適で居心地良いものをデザインしようとします。しかし、公共の場や誰もがアクセス可能なプライベートスペースなどでは、ホームレス対策などで意図して「不愉快なデザイン」を取り入れることがあるそうです。


また、こういったデザイン戦略のもとデザインされたベンチなどは、座り心地が良くないため、外をふらつきたむろする若者たちへの対策にもなります。こういった戦略はデザイン以外でもとられており、例えば若者の入店を抑制したい店舗がクラシック音楽を流したり、若者にだけ聞こえる高周波の騒音を流したりすることもあるそうです。

他にも、イギリスのある団地では、若者がたむろするのを防ぐために公共のスペースにピンク色の照明を設置しているそうです。


この「不愉快なデザイン」を採用する戦略は実際にどのような効果を発揮するのかを調査したデータも存在します。例えば、公共便所の照明を青色照明にした場合、便所内でドラッグを打つことを抑止する効果が得られたというデータがあります。このように、色は人間の気分に強く作用する効果があるので、「不愉快なデザイン」などにうまく組み込むことができると非常に効果的です。

青色には鎮静効果や人々を不快にする異常な雰囲気を作り出す効果があるといわれており、スコットランドのグラスゴーでは路上犯罪を減らすために街灯を青色にしています。また、東京では地下鉄での自殺数を減少させるために青色照明を採用しています。しかし、青色光と犯罪件数の減少の間に因果関係が存在することは明らかではあるものの、青色光がその直接的な原因であると断定することは難しいそうです。


公共の場で光の色を用いて群衆をコントロールすることは、古くから行われてきました。セレーナ・サヴィッチ氏によると、ボスニア・ヘルツェゴビナ併合の際、政府は反乱や暴動のために深夜に人々が集会を開くことを防ぐために、ヴィシェグラードの街灯に不快なくらいに明るい街灯を採用しています。


他にも、店先での座り込みや排尿が難しくなるように、金属製のトゲを配置する場所もあります。通常、店先に座り込むホームレスなどがいれば警備員が注意する必要があるわけですが、金属製のトゲを配置して物理的に座り込みづらくすることで、対話なしでそういった人々を遠ざけることができる点が、こういったデザインの特徴とのこと。

the fakir's rest - YouTube


これは空港にあるバス停のベンチ。ちょっとした休憩には使えそうですが、長時間の休憩などにはまったく適さないであろうことは一目瞭然。


長居しづらいベンチのデザインとして名高いのが、ロンドンにあるカムデンベンチです。カムデンベンチは天面部分に微妙に角度がついたコンクリートのかたまりです。エッジ部分は鋭く尖っており、全てが一定方向に傾斜しているわけではなく、一定間隔ごとに傾斜の角度が変わっています。カムデンベンチは見た目は普通のベンチのようですが、この上で眠り続けるのは不可能とのこと。その理由は、カムデンベンチには溝がなく、ドラッグやゴミを隠すスペースが一切ないからだそうです。また、特殊なコーティングにより落書きに対する耐性も持ち合わせているとのこと。


優れたデザインだろうと、不愉快なデザインだろうと、デザインには作成した側の意思が隠れます。例えば、ユーザビリティ設計と言われるようなスマートフォンであろうと、「顧客に購入させよう」という意思のもと、徹底した使い勝手が追求されています。対して、不愉快なデザインなどが採用されている街頭の備品などにも、デザインする側の「店先に座り込んでほしくない」などの確かな意思が存在します。

こういったデザインを「排他的なものだ」と捉えるか、それとも「素晴らしいものだ」と捉えるのかは人それぞれですが、例え、「ここには誰も近づけたくないから金属のトゲを配置して座れなくしよう」といったデザインであっても、それは利用者のために決められた決定であるということは非常に重要とのこと。なお、不愉快なデザインを採用すると、いびつな形になることが多いため、外観を愉快なものにしてくれるというちょっとした驚きもあるそうです。

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in 動画,  デザイン, Posted by logu_ii