まるでSF映画のように化学反応でドローンを”成長”させる設計・製造システム「Chemputer」

イギリスの国防・情報セキュリティ・航空宇宙関連の中核をなし、音速の5倍で地球の裏まで飛ぶロケットエンジンを開発した「Reaction Engines」に2000万ポンド(約27億3000万円)以上を出資したイギリスの航空防衛大手企業「BAE Systems」が、特殊な3Dプリンターから液状の素材を出力すると化学的に合成が行われ、ドローン(無人航空機：UAV)の形へと自己結合して行く「成長するドローン」のコンセプトを示すムービーを公開しています。

Lifting the lid on future military aircraft technologies | BAE Systems | International
http://www.baesystems.com/en/article/future-technologies-growing-uavs-through-chemistry

液状の素材から1台のドローンが生成される様子は、以下のアニメーションムービーから見ることができます。

Growing UAVs Through Chemistry - YouTube


将来の軍事行動においては、台頭する敵の脅威に対抗するために、短期間での設計と実機の製造が可能な新種の航空機が必要になるとBAE Systemsは予想しています。

そこで考案されているのが、ディスプレイから選ぶだけで科学者たちがドローンを製造できる「Chemputer」という独自システム。

必要なドローンを選択すると、「合成と自己結合」のボタンが押されました。

すると製造ルームでは巨大な3Dプリンターが稼働開始。

従来の3Dプリンターのように固体を出力するのではなく、ドローンの元となる「液状の部品」のみが出力されました。まるで映画ターミネーターの「液体金属」のようです。

出力された液体は化学反応を促され、周囲の「部品」と結合していきます。

同時にドローンに必要な基盤もあっという間に生成され……

基盤を包み込むように液状の部品が集結し始めました。

液体は硬質化していき、ついに飛行可能なドローンの姿へ。

完成したドローンが取り出されているところ。周りにいる人を見ると、人間が1人搭乗できるほど巨大なドローンであることがわかります。

ベルトコンベアに乗せられ、最後にエンジンを搭載すればドローン1基の製造が完了。従来の製造方法では数カ月～1年以上かかる航空機の製造期間を、わずか数週間という短期間に短縮可能なコンセプトとなっています。

Chemputerが実現すれば、幅広い軍事活動を素早く、効果的にサポートできるとのこと。

Chemputerは液状の部品を自己結合させるというまるでSF映画のようなアイデアですが、まだ開発段階のコンセプトで、実現には至っていません。一方で、BBC Newsによるとすでにイギリスでは3Dプリンターのパーツを使用した軍用飛行機が運用されており、3Dプリンターと航空機製造の分野を組み合わせるという軍事的利点は明白とのこと。Chemputerの開発に携わるグラスゴー大学のリー・クローニン教授は「人間の手を使わずに複雑な構造の小型機を製造するのは非常に困難な試みですが、材料システムと化学の組み合わせは、デジタルプログラミング業界を牽引するアイデアになるでしょう」と話しています。

今や3Dプリンターやドローンなどの技術は世界中の軍隊で使われるようになっており、軍隊の設備は遠隔操作で運用できる無人基地・航空機・水中機などに依存しているとのこと。アメリカ軍では戦闘機のパイロットよりもドローン操縦者の訓練の方が盛んに行われており、最新の戦闘機であるF35は「最後の有人戦闘機」とも呼ばれているそうです。実現にいたるまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、Chemputerのコンセプトは映画「スター・ウォーズ」のような技術が現実になるのはそう遠くないことを予感させられるアイデアとなっています。

New research considers 'growing' drones - BBC News
http://www.bbc.com/news/uk-36694899