映画

特定の映画が何度も何度もリメイクされる理由を科学的に分析

By Clara Jordan

2002年に公開された映画「スパイダーマン」が、2012年に映画「アメイジング・スパイダーマン」としてリメイクされるなど、人気の高い作品がリメイク・リブートされることは多いものです。そんな「特定の映画が何度もリメイクされる理由」が、童話「赤ずきん」を使った最新の研究で解明されようとしています。

The structure and evolution of story networks | Open Science
http://rsos.royalsocietypublishing.org/content/3/6/160071


New study could explain why we remake certain movies over and over again | Ars Technica
http://arstechnica.com/the-multiverse/2016/06/new-study-could-explain-why-we-remake-certain-movies-over-and-over-again/

多くの映画ファンが「なぜこんなに多くのリメイク・リブート・続編作品が存在するのか?」と考えたことがあるはずです。その問いのヒントが、オランダ人ネットワーク理論家であるFolgert Karsdorp氏とAntal van den Bosch氏がRoyal Society Open Scienceで公開した最新の科学研究に含まれています。

2人のネットワーク理論家は、リメイク・リブート・続編などが行われる理由を探るために、多くの国と地域でリメイクや翻訳されてきた童話「赤ずきん」を調査しました。調査では赤ずきんのリメイクを200種類以上集め、自然言語処理や情報検索などで用いられる「Bag-of-words」モデルを用いてさまざまな年代に作成された赤ずきんの中の「ストーリーの類似性」を分析しています。さらに、研究では分析結果からそれぞれの赤ずきんが持つ共通点などを可視化した「ストーリーネットワーク」を作成しています。

By Simon Cockell

作品としての赤ずきんで最も古いものは、1697年にフランスで出版されたペロー童話集の中の赤ずきんですが、それ以前にもスウェーデンの民話「黒い森の乙女」やフランスに伝わるメルヘンなどで、似たような作品が確認されており、オリジナルがいつ誕生したのかは不明です。しかし、その中でも初期に出版された赤ずきんを「初期の赤ずきん」、それ以降に作られた、初期の赤ずきんをもとにリメイクされたものを「初期の赤ずきんのリメイク」として、200種類以上ある赤ずきんを分類。そして分析結果から、「初期の赤ずきん」は、それ以降の赤ずきんよりも多くの「プレテキスト(赤ずきんのリメイクなどで見られる共通の文章)」を持っていることが明らかになっています。

以下の図は左が「初期の赤ずきん」の中で見られるストーリーの類似性をストーリーネットワークとして示したもので、右は「初期の赤ずきんのリメイク」の間で見られるストーリーの共通点を可視化したストーリーネットワーク。ネットワーク上の点は別個の作品を示しており、点をつなぐ線が作品間に存在するプレテキストを現わし、黒・白・赤といったカラーはそれぞれの物語が作成された年代を示しています。初期のものほど作品間の共通点が多いのは一目瞭然です。


何度も映画化された「吸血鬼ドラキュラ」という作品でこのストーリーネットワークを考えるなら、1897年に出版されたブラム・ストーカーの著書・吸血鬼ドラキュラが、その後生み出される数々の「吸血鬼ドラキュラを原作とした作品」にとってのプレテキストとなります。そして、ストーリーネットワークは、続編やリメイクが作られるほどに徐々に大きくなっていきます。

分析の中で明らかになったのは、「リメイク作品は、めったに初期のプレテキストに近いものになることはないものの、リメイクされる度により世間に好まれるものになっていく」ということ。「吸血鬼ドラキュラ」の場合、19世紀に誕生した際は恐ろしいモンスターとして表現されていたドラキュラが、近年になるとより一般化し、恐ろしさの中にも性的な魅力を持った「ハンサムな生物」として描かれることが少なくありません。そして、新しくドラキュラをリメイクしようとする人は、1番最初の「恐ろしいモンスターとして表現されたドラキュラ」ではなく、近年の「恐ろしくも魅力的なドラキュラ」のイメージに引っ張られて、それに類似したものを作品の中で表現してしまう模様。

吸血鬼ドラキュラで言えば、最も影響力を持っているリメイク作品は1930年代に主演ベラ・ルゴシで公開された「魔人ドラキュラ」です。研究によると、プレテキストの影響力は時間と共に指数関数的に衰えていくそうで、その結果、新しいリメイク作品が初期の作品に近いものに戻れなくなってしまっている、とのことです。

By vagueonthehow

ここで大きな問題となるのは、この分析結果をしっかりと理解し、リメイクや続編を作成する際に役立てることができるかどうかです。続編の作成は、作品のリメイクとは明らかに異なりますが、スタートレックのようなフランチャイズ作品はある種のストーリーネットワークを形成していると言えます。シナリオに関して言えば、スタートレックシリーズはそれぞれに共通する部分があり、小さなストーリーネットワークを形成していると言える、とのこと。また、スータートレックシリーズが形成する小さなストーリーネットワークは、SF作品全体が形成する巨大なストーリーネットワークの一部である、とも言えるそうです。

この巨大なストーリーネットワークの中で考えると、スタートレックやアベンジャーズなどが、多くに好まれるプレテキストを持った作品であることは明らかで、それ故に続編やリメイク作品が大量に製作される運命である、と海外ニュースサイトのArs Technicaは述べています。

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in 映画, Posted by logu_ii

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