2016年オリンピック会場となる「リオ」が世界から隠したいこと


2016年8月5日にブラジル・リオデジャネイロでオリンピックが開幕します。世界中が注目するビッグイベントということで、オリンピック開催地では、国を挙げてのインフラ整備を行うのが通例で、リオも例に漏れず、大規模な都市開発が行われています。ニュースサイトVoxは、華やかな祭典の影にある、知られざるリオの街の実態を明らかにするムービーを公開しています。

2016 Olympics: What Rio doesn’t want the world to see - YouTube


ブラジルのリオデジャネイロを訪れて……


空港からオリンピックが行われる会場を目指すとなると、誰もがあのよく映像で紹介されるビーチを思い浮かべるものです。


しかし、ビーチにたどり着くまでには「Mare」という地域を避けて通れません。


Mareはリオデジャネイロ空港に隣接する街で、貧困層が多いことで知られています。


しかし、今では観光客は幹線道路沿いに建設された壁のおかげでMareの街並みを目にすることはありません。


リオ周辺を地図で確認してみます。


南西の海岸沿いに広がるのが、有名なビーチが多数広がる「South Zone」


一方、北側にある空港の南側に広がる「North Zone」にあるのがMareです。


Mareに住むダグラスさんは幹線道路沿いの壁について、「騒音対策が目的だと言われているんだ」と話します。


「だけど、空港からSouth Zoneへ向かう観光客が、Mareの街並みを一目見ることさえ防ごうというのが狙いなのは明らかだよ」


Mareに住むトーマス・ラモスさんは「Mareには家もなく、着る服もなく、お腹をすかせた人がたくさんいるんだ。そんな人たちよりも騒音問題の方が大事だと言うのか?」と憤りを隠しません。


そんなMareに数カ月前に大きなニュースが出ました。


例の壁が透明になったとのこと。ただし、透明な壁の先にあるのは真新しい学校の校舎などきれいに建て直された建物ばかりです。


「リオの街の関心事と言えば、いかにして観光客に美しくすばらしい街であるかを見せるかということだけなのです」


リオデジャネイロは、2007年のパンアメリカン競技大会を皮切りに、地球温暖化会議、ワールドカップ、オリンピックと立て続けに国際的なイベントが続いています。


このため、街の主要な場所は整理されました。


しかし、周辺に広がる比較的貧しい地域は手つかずです。


「観光客はリオを訪れた後、自分の土地に帰るでしょう。しかし、ここにいる人たちは、リオに住み続けるしかないのです。メインストリートには多くの投資がされますが、それ以外の場所は無視されているのです。オリンピックの場合も同じです」


リオに住むパトリシアさんは、あることに気づいたと言います。


それは最近行われたバスのルート変更。


以前のように、North ZoneとSouth Zoneを縦断するルートはなくなり、南北の境で切り分けられたとのこと。


なぜなのか?


「オリンピックを成功させたい人たちは、リオの街がきれいであって欲しいのです。North Zoneの黒くて、汚くて、はだしで、みすぼらしい人たちを見てもらいたくないのです」


そのもくろみを達成するべき期限はリオオリンピックの開幕日というわけです。


再び地理的状況を確認すると……


美しいビーチのあるSouth Zoneの西側に、「BARRA」という地域があります。


BARRAにはオリンピックパークが建設されるなど、オリンピック開催中の中心地となることが決定しています。


オリンピックの観光客を出迎えるために、リゾート都市として生まれ変わる予定。


このBARRA地区の再開発を主導したのは、カルロス・カバロ氏。ブラジルで12位の資産を持つ不動産王です。


カバロ氏の夢は、BARRAを新しいリオの顔にすること。


新しいリオは、美しい街並みを持ち、貧困層でなく富裕層のための街でなければなりません。


これは、リオデジャネイロ市長がIOCの視察団を率いるロゲ会長にリオの都市開発計画を説明している写真。リオ市長のとなりで説明を聞いている青い服の男性がカバロ氏です。


美しい新リオを作り上げるカバロ氏たちの夢の実現にとって最大の障害は、元々の住人たち。


「彼らにとって、BARRAは投資すべき場所であって、人が住む場所ではないんだ」


その土地で昔から暮らしていた人、とくに貧しい人は都市開発計画にとっては邪魔者以外のなにものでもありません。


BARRA周辺にあった街の住人は……


BARRAから離れた場所で、決して観光客の目に触れることのない公共スペースへの移住を求められました。


降ってわいたようなオリンピックのための都市計画のせいで引越を余儀なくされた人たち。


ほとんどの人たちは見舞金を手に土地を捨てました。そしてコミュニティは失われました。


しかし、その土地を奪われたくないという人がいたのは当然です。


移住に反対する人たちと、当局との間で衝突が起こりました。


強制的に排除される人が出るなど、しだいにBARRA周辺から人の姿はなくなりました。


それでも、依然としてBARRA周辺にとどまりコミュニティを維持するごくわずかな人たちもいます。


マリア・ダ・ペンハさんは、「オリンピック招致が決まった頃から状況は悪くなる一方です」と話します。


当局との衝突で負傷するペンハさんの当時の映像。


家は壊され……


街並みはすっかり変わりはてました。


BARRAのオリンピックパークの隣に位置するもともとは600世帯から成り立っていた「Vila Autodromo」というコミュニティ。


ここにも今なおコミュニティが残っています。


オリンピックパークのすぐ隣ということで、退去を求める圧力が非常に強かったことは想像に難くありません。


今のVila Autodromoはこんな感じ。


変わり果てた街並みですが、故郷の記憶を失うことを固辞するかのように、残り続ける人たちがいます。


多くの血が流された結果……


600世帯のうちの20世帯のみがとどまり続けて、居住権を勝ち取ったとのこと。


世界中の報道機関が様子を伝えたこともあり、住宅も建て直されたそうです。


「もともと、自分たちで植えてきた果物の木があったんだ。けれど、また植え直さなければいけない」と、ルイス・クラウディオ・シウバさんは話しています。


「なぜVila Autodromoが、オリンピックパークと隣接できないんだ?経済的な理由以外には考えられない」


こうしてかろうじて居住する権利を守ったVila Autodromoの人たちですが、これは極めてまれなケースです。


2009年から移住を余儀なくされた人の数は政府発表だけでも7万7200人に上ります。


都市開発の専門家のセレサ・ウィリアムソンさんは、「ワールドカップやオリンピックのために都市を『きれいに』することで、多くの街やコミュニティが個性を失ったという事実は恥じるべき事です」と述べています。


もちろん、オリンピックによってインフラ整備が行われたことで、都市の利便性が高まったのは事実です。


バスターミナルが作られ……


博物館ができるなど、都市の生活は豊かになりました。


しかし、恩恵を享受する比較的豊かな人たちがいる一方で……


多くの犠牲を余儀なくされた多くの貧しい人たちもいるのです。


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