メモ

マイクロフィルムの不思議な歴史、伝書鳩からマンガ本まで

by Thacher Gallery at the University of San Francisco

図書館などの限られたスペースで、膨大な量の資料を保管するために使われているのが「マイクロフィルム」と呼ばれる写真フィルムです。マイクロフィルムは文書や写真を縮小してフィルムに焼きつけて、閲覧する際には専用の機械で拡大して使うのですが、マイクロフィルムの誕生から普及までの歴史を、ニュースレター配信サービスのTediumがまとめています。

Microfiche's Long Path to the Library
http://tedium.co/2016/06/14/microfiche-microfilm-libraries-history/

The Strange History of Microfilm, Which Will Be With Us for Centuries | Atlas Obscura
http://www.atlasobscura.com/articles/the-strange-history-of-microfilm-which-will-be-with-us-for-centuries

マイクロフィルムを発明したのは、イギリス人のジョン・ベンジャミン・ダンサーです。父親が顕微鏡などの光学製品を扱う会社を経営していたことから、ダンサーは銀板写真技術を使ったマイクロフィルムと光学製品を組み合わせることを思いつきます。ダンサーは1839年に、写真を160分の1サイズに縮小したマイクロフィルムを生み出しました。

次いで1859年には、フランス人のルネ・ダグロンがマイクロフィルムの特許を取得します。ダグロンは、マイクロフィルムの作成方法を確立し、技術を大幅に改善しました。1870年の普仏戦争中には、まだ電子通信技術が確立されていなかったことから、情報伝達のために伝書鳩にマイクロフィルムを運ばせるという方法が多く使われていました。伝書鳩は、パリ市外で気球の上から飛び立ち、戦場となっているパリ市内に情報を運んで、また市外へ戻るように訓練されていました。ダグロンの開発した技術は、文書を写真で撮影してマイクロフィルムに収めて、伝書鳩の羽根に取り付けられた小さな管の中にマイクロフィルムを入れて運ぶ、というもの。届けられたマイクロフィルムは、プロジェクターを使って内容を目視できるサイズに拡大・閲覧されていました。


しかし、伝書鳩を上空から飛ばすための気球がプロイセン軍によって打ち落とされたり、ダグロンたちが軍に捕まりかけて道具を失ってしまったりと、伝書鳩でマイクロフィルムを運ぶ計画はあまりうまくいかなかったようです。そこでダグロンはフランス中部のトゥールの街に移動し、化学者のCharles Barreswilと協力して11mm×6mmの非常に小さいサイズのマイクロフィルムを開発。伝書鳩1羽あたり20枚のマイクロフィルムを運ぶことができるようになり、戦争中に政治や軍の情報などを収めた15万枚以上のマイクロフィルムがパリ市内に輸送されたという記録が残っています。

以下のイラストは、ダグロンがプロジェクターを使ってマイクロフィルムを投影している様子を描いたもの。


ダグロンは、肉眼でマイクロフィルムを見ることができる「スタノップ・レンズ」も開発し、19世紀にマイクロフィルムが流行しました。

世界一小さな「マイクロ写真」が19世紀に大流行した理由とは?


1906年には、図書館のスペースを削減するための手段としてマイクロフィルムが注目を集めはじめます。ベルギー人の情報科学者のポール・オトレとロバート・ゴルトシュミットはマイクロフィルムの有用性を伝えるため、アメリカ図書館協会でのデモンストレーションを行ったりしましたが、マイクロフィルムは急速に普及することはありませんでした。マイクロフィルムが情報記憶媒体として脚光を浴びるのは1930年代になってからのこと。The New York Timesのような大手新聞やハーバード大学などが、古い新聞を保存する方法としてマイクロフィルムを使い始めたのを発端に、あらゆる図書館でマイクロフィルムによる保存方法が普及していきました。


インターネットが発達した現代では、あらゆる情報をインターネットで検索できるようになりましたが、マイクロフィルムが他の媒体と比べて優れている部分もあります。例えば古いマンガ本を保存する場合、マイクロフィルムには3つの利点があります。

・1:マンガ本に使われている紙は最高級上質紙ではないため、長期間保存するには向いていない。一方でマイクロフィルムは、何十年も劣化することなく保存できる。
・2:古いマンガ本を複製するにはお金がかかり、紙がもろいため難しい。マイクロフィルムならば簡単に複製可能。
・3:格式の高い図書館では、マンガ本は俗っぽいものと考えられて、閉架書庫に隔離されることが多い。マイクロフィルムならば、収蔵スペースを限りなく減らすことができる。


マイクロフィルムの内容を読むには、以下のような専用の機械を使って、フィルムに記された内容を拡大表示します。マイクロフィルムは何百年も情報を保存できるようにデザインされていて、ハードディスクやCD-ROMと比べると長い間劣化しにくいことから、インターネットが普及した現代でもマイクロフィルムが情報記憶媒体として重宝されているというわけです。

・関連記事
世界一小さな「マイクロ写真」が19世紀に大流行した理由とは? - GIGAZINE

寿命のない永久に使えるデータストレージ「5次元データストレージ」が登場 - GIGAZINE

FD・CD・DVD・Blu-ray・HDD、どんどん大容量になっていく記録媒体の進化の歴史「Evolution of Storage」 - GIGAZINE

決して主流になることは無く、歴史の表舞台から姿を消した非常に個性的な記録媒体いろいろ - GIGAZINE

「容量無限のHDD」実現の可能性も、新たな物理現象が発見される - GIGAZINE

SFが現実のものに、データを10万年以上安定して保存できる次世代記憶技術を日立が開発 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log