「立ち仕事」よりも「仕事中の散歩」の方が消費カロリーが高いという研究結果

by Travis Wise

仕事中にイスに座り続けることで、肥満、心疾患、糖尿、早世といった健康上の問題が引き起こされる危険性が指摘されている中で、通常の机とは異なり、イスを使わず立ったまま作業することで座り仕事の負担を軽減できるスタンディングデスクが脚光を浴びています。しかし最新の研究では、スタンディングデスクなどを使って立ったまま仕事をするよりも、仕事の途中にオフィス内を散歩する方が、カロリーを多く消費できることが判明しています。

Energy Expenditure During Acute Periods of Sitting, Standing, and Walking
http://dx.doi.org/10.1123/jpah.2015-0419

Here’s how many calories you may burn standing at work versus sitting, strolling | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/06/heres-how-many-calories-you-may-burn-standing-at-work-versus-sitting-strolling/

ピッツバーグ大学の運動生理学者のSeth Creasy氏は、「減量やカロリー消費を期待しているならば、立って仕事をするだけでは、座りっぱなしで仕事をしているのと比べてもあまり大差がありません」と語ります。もちろん、スタンディングデスクを選ぶ人の中には、カロリー消費を目的としている人ばかりではなく、立って作業をすることで、生産性をアップさせて、正しい姿勢を手に入れるためにスタンディングデスクを使っている人もいます。しかしながら、「立ちっぱなしで作業をすることのメリットが本当に正しいのかどうか、検証が必要だ」とCreasy氏は言います。

by Logan Ingalls

Creasy氏は、「立ったり座ったり歩いたりする動作を、8時間連続で行うことはほどんどありません。仕事中には、座りながら姿勢を変えたり、休憩をとるために立ち上がったり、オフィス内を歩いたりするものです」と語ります。そこでCreasy氏の研究チームでは、立つ・座る・歩くという3種類の動作について、2つの動作を行った場合の消費カロリーを測定しました。実験では、健康体の被験者74名を集めて、「15分間座ってテレビを見た後、15分間直立する」というグループ、「15分間座ってテレビを見た後、15分間歩く」というグループ、「15分間ゆっくりと好きな速度で歩いた後、15分間座ってテレビを見る」というグループ、「15分間直立した後、15分間座ってPCを操作する」というグループの4種類に分けました。30分後、それぞれの被験者がフェイスマスクをかぶり、どれくらいのカロリーを消費したのかが測定されました。

この実験の目的は、動作を行う順序によって消費カロリーが変動するかどうかを見るというものでした。しかし実験の結果、動作の順序は消費カロリーにほとんど関係ないことが明らかになったとのこと。また、実験から明らかになった平均的な15分間の消費カロリーは、歩いた場合は55.9kcal、座ってPCを操作していると19.63kcal、座ってテレビを見ている状態では18.66kcal、立っている状態だと21.92kcalでした。座っている状態と立っている状態の消費カロリーを比べると、立っている状態の方がわずかに消費カロリーが多いものの、研究チームでは「立った状態と座った状態の消費カロリーの差は微々たるもので、立って仕事をすることで健康にいい影響をもたらすかどうかは不明」と分析しています。

by Tnarik Innael

また、実験に参加した被験者は全員健康体でやせ気味だったため、研究チームは「減量を目的として立ったまま作業をする場合は、今回の実験とは異なる結果が出るかもしれない」としています。Creasy氏は「さらなる研究が必要です」と述べて、今後は「運動によって座り作業の悪影響を改善できるか」「スタンディングデスクは本当に生産性、快適さ、健康問題の改善に役立つか」を研究していきたいとのこと。

Creasy氏は「今回の研究で明らかなのは、オフィスで歩くことを心掛けるのがいい、ということです。例えばオフィスで自分の席から離れた場所に置いてあるプリンターを使う際にいつもより遠回りして行ったり、同僚との会議を歩きながら行ったりするなど、毎日の仕事に歩く動作を加えるべきです」と語っています。

by Masa Israel Journey