100%植物原料なのに焼くと肉汁がしたたり味も匂いも肉そのものな「Impossible Foods」


動物性の原材料はまったく使わずに植物100%でできているのにも関わらず、匂い、食感、味のどれをとっても牛肉としか思えない食べ物「Impossible Foods」を、スタンフォード大学の生化学者パトリック・ブラウン氏らのチームが開発しました。肉ではないのですが、フライパンで焼くと表面が茶色くなり、「肉汁」のような脂がじゅわっとあふれ出してくるそうです。

Impossible Foods
http://impossiblefoods.com/

Impossible Foodsがどのくらい肉に似ているのかというのは、以下のムービーから確認できます。

The Impossible Burger - YouTube


包装紙を剥がすと……


ミンチを買ってきただけに見える肉が登場。しかし、これが「Impossible Foods」です。


ハンバーグの要領で成形していきます。


熱したフライパンにのせると、じゅわりと肉汁があふれ出してきました。


裏返すとこんがり茶色に。火が通ってない部分は赤いのに、熱された部分は茶色に変化するという、まさに肉そのものの見た目です。


肉をフライパンに押しつけるとさらなる肉汁があふれます。


パンにマヨネーズを塗り……


野菜の上にこんがり焼けたImpossible Foodsをのせます。


肉や野菜をパンで挟めば、植物由来の食べ物オンリーのハンバーガーが完成。


アップになっても肉だとしか思えない見た目。


断面はこんな感じ。肉の焼き具合がレアのハンバーガーにしか見えません。


人間が家畜を育てるには大量の水・食料と飼育場所を必要とします。現在では家畜を育てるためにアフリカ大陸の大きさに等しい3300万平方キロメートルという土地が使われており、牛肉1kgを作るために1万5000リットルもの水が消費されています。以下の記事を読むと、牛肉・豚肉・鶏肉を作るのがどのくらい高コストであるかがよくわかります。

世界中の人間が菜食主義者・ベジタリアンになると何が起きるのか? - GIGAZINE


人口の増加や経済の成長によって肉の需要は増加傾向にありますが、全ての人を満足させるだけの家畜を育てるのはもはや難しいという状況。そこで、赤身の肉よりも「製造に必要な資源が少なく、健康的で、かつ安価な」代替物として、Impossible Foodsが提案されているわけです。

人工肉を製造するという試みは今に始まったことではありません。オランダの研究機関は「牛の幹細胞を採取して培養する」という方法で人工肉を作っており、豆から作られているにも関わらず焼くと牛肉のように肉汁がしたたる「Beyond Burger」という食べ物も既に発表されています。Impossible FoodsやBeyond Burgerのような「植物から肉を作り出す」という試みには、Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏も投資を行っています。また、Impossible Foodsは2015年にGoogleから200~300億円で買収を提案されて断っているなど、投資家や企業からの注目も非常に高まっています。

Impossible Foodsの特徴は、単に野菜や豆を集めて「肉っぽいもの」を作ったのではない、という点です。ブラウン教授らは肉を分子レベルで解析し、何がハンバーガーのパティの味・匂い・食感を作り出しているのかを明らかにした上で、「火を通していない時はぐにゃぐにゃとしていて、熱すると牛肉のように固まり色が変化する」という食べ物の開発を目指しました。

「全ての動物が持つ脂肪や筋肉などの細胞は、植物由来の化合物で置き換えられる」というのがブラウン教授の考え。ブラウン教授によると、肉の味や見た目のカギとなっているのは、酸素を運搬するタンパク質として知られるヘモグロビンで、動物の血の中に多く含まれるほか、植物にも存在します。ヘモグロビンは赤身に多く含まれていますが、植物にも含まれているものです。

植物からヘモグロビンを取り出すため、研究チームはまず、豆科の植物の根から「レグヘモグロビン」と呼ばれるヘムタンパク質を抽出するという方法をとりましたが、コストがかかりすぎる上に、植物を引き抜く際に炭素を大気中に放出してしまうという問題がありました。そこで、研究チームが次に行ったのは、大豆の遺伝子を使ってヘムタンパク質をコードして、イースト菌に変えるという方法。研究チームはこの方法によって、動物の血液に似た化合物を大量に得ることに成功し、クオーターパウンドのImpossible Foodsを2万個も製造したそうです。

「肉でないのに肉のような」バーガーは、ベジタリアン(菜食主義者)向けに販売されることもありますが、Impossible Foodsがターゲットとしているのは、あくまで肉食主義者。そのため、研究者らは、小麦やじゃがいものタンパク質から食感を作り出し、ココナツオイルを肉の脂の変わりとして加えています。じゃがいもに含まれるタンパク質は肉の表面を焦がした時と同じような食感を生み出し、ココナツオイルはフライパンで焼いた時に本物の肉のようにImpossible Foodsから溶け出すとのこと。また、本物の肉よりもタンパク質が多く、脂肪が少なく、コレステロールも含まれていないので、健康によい食べ物にもなっています。


実際にImpossible Foodsを食べた人によると、「味は本物の肉ほど濃くないが、植物から作られていると知らないで食べたら、違和感を感じなかっただろう」とのこと。食感は本物の牛肉に近く、特に、ブラウン教授らが合成した「匂い」は肉を焼いた時の匂いそのものだった、と語られています。

フードアナリストは「Impossible FoodsやBeyond Burgerがひとたび市場に出ればヒットする可能性は大いにある」としつつも、「肉の価格が手ごろである限り、肉食主義者たちが食事を人工肉に置き換えることはないだろう」と考えており、植物製の人工肉は菜食主義者たちに受け入れられるものと見ています。

現時点では、Impossible Foodsは高コストゆえに価格が高いため、ブラウン教授らは市販の牛肉よりも安価にすることを今後の目標としています。また、Impossible Foodsがスーパーに並ぶにはまだ時間がかかる見通しで、まずはレストランで流通させることが考えられているそうです。

・つづき
植物由来の人工肉を使う「Impossible Burger」がいよいよ全米に店舗を大展開スタート - GIGAZINE

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in サイエンス,   動画,   , Posted by logq_fa