サイエンス

世界最古のアナログコンピューターと言われる「アンティキティラ島の機械」の秘密が明らかに


古代の沈没船から発見された、青銅製の歯車式の道具「アンティキティラ島の機械」は、発見後長らく作られた年代や場所、使用方法など多くが謎に包まれていました。しかし、X線分析の結果、道具の表面に3500以上の文字が書かれているのが見つかり、古代ギリシャ人が天体観測やオリンピックの時期を知るためなどに使っていたことが判明しています。

The world’s oldest computer is still revealing its secrets - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2016/06/14/the-worlds-oldest-computer-is-still-revealing-its-secrets/

アンティキティラ島の機械は、1901年にエーゲ海の沈没船から発見されました。現在では、同じ沈没船から見つかった青銅製の豪華な彫刻や、宝石、アンティークコインなどの遺物と共に、アテネ国立考古学博物館に収蔵されています。アンティキティラ島の機械の表面に記された文字は読みにくく、歯車は石灰化して腐食しているため、他の遺物と比べるとあまり目を引きませんが、発見後1世紀以上にわたって科学者を魅了しています。


沈没船が見つかったアンティキティラ島は、エーゲ海に浮かぶ島で、クレタ島の北西部に位置します。


「アンティキティラ島の機械」は発見からおよそ50年の間、天体観測儀のようなシンプルな設計のものだと考えられていて、「ギリシャ人が非常に精巧かつ正確な機械を作り、1400年もの間歴史の表舞台から消え去っていた」とは誰も考えなかったとのこと。その後、イェール大学に所属する博学の物理学者・科学史家のDerek de Solla Price氏がアテネ国立考古学博物館を訪れてアンティキティラ島の機械を観察し、「アンティキティラ島の機械は天体の動きを計算して宇宙の営みを示す機械であり、世界最古のコンピューターと言える」という論文を1959年に発表。以後25年間にわたって、Price氏はアンティキティラ島の機械がどのように動くのかというメカニズムの解明に取り組みました。

Price氏は「このような機械は、世界中の他のどこにも残されていません。古代の科学に関する研究を見ても、アンティキティラ島の機械に匹敵するものは他に何もありません」と書き残しています。しかし、実際には紀元前1世紀のローマの哲学者・キケロが、ロドスのポセイドニオスによって紀元前1世紀に作られた道具について文書を書き記しています。ポセイドニオスの道具は、回転させることで太陽・月・5つの惑星の昼夜の動きを再現したものでした。しかしながら、アンティキティラ島の機械の発見により、現代の科学者が古代ギリシャの技術について考えを改めたのは事実であり、Price氏は「古代ギリシャの文明が失われる直前には、現代の技術に非常に近いところまで発展していたようだ」と記しています。

アンティキティラ島の機械は、内部の部品の多くが壊れたり腐食したりしていた上に、表面に刻まれた文字が薄れたり、部品同士が重なって文字がつぶれたりしていました。


X線分析や画像解析技術が発達し、表面に書かれた文字を判別できるようになったため、2005年に世界中の考古学者・天文学者・歴史家による研究プロジェクト「The Antikythera Mechanism Research Project」(AMRP)が発足しました。


プロジェクトに参加しているニューヨーク大学で古代の科学について研究している歴史家のAlexander Jones氏は古代ギリシャ語に詳しかったため、画像解析から判明した文字の解読に携わり、3500単語以上の長い文章が書かれていることを突き止めました。表面に書かれている文字は、発見当初は機械の使い方を説明したものだと考えられていましたが、実際にはより抽象的な文章が書かれているのが分かったとのこと。


X線分析により明らかになった、機械表面の文字。


Jones氏は、「アンティキティラ島の機械は非常に小さく、壊れて腐食していますが、古代の技術、科学、時間の知識について知ることができます」と語ります。Jones氏によれば、アンティキティラ島の機械は、古代の遺物の中で最も情報に富んだ発掘物とのこと。

研究結果から、アンティキティラ島の機械は約2100年前に作られたと推測されています。構造は非常に複雑で、くるくると回る部品や、少なくとも30個の青銅製のギアを含む精巧な部品が使われているとのこと。ギアには何千個もの歯があり、以下の写真では中央部分に白い歯車が残っているのが分かります。


目盛りが刻まれた円形の部品もあり、驚くべき精度で時間の経過や天体の動きを示していたと見られています。少なくとも3種類のカレンダーで日数を計算し、オリンピックの時期を計算するための目盛りもあるとのこと。


AMRPでは、アンティキティラ島の機械の部品をスキャンして……


3Dモデルを作成。


メインの歯車の他に、小さな歯車や部品がいくつも使われています。


完全体はこんな感じ。


機械の正面には目盛りがあり、恒星や惑星を表す印が地球の位置に基づいて書かれていました。月を模した小さな球が細長い軸の上でくるくると回り、月の満ち欠けを示すために黒と白で塗られていました。側面には機械を動かすための取っ手がついています。


機械の裏面。アンティキティラ島の機械は、古代ギリシャの遺物の中で最も精巧に作られていて、同じような精巧さを持つ機械は、14世紀のヨーロッパで歯車式の時計が登場するまで現れませんでした。


内部構造は以下の通り。


機械に刻まれた文章からは、古代ギリシャ北部の街・コリントの独特のカレンダーについての記述や、機械の表面に取り付けられた小さな球についての記述、ロドスの街で開催されていた競技会の日程についての記述なども発見されています。沈没船からはロドスで作られたと見られる陶器も見つかっていることから、「アンティキティラ島の機械はロドスで作られたのではないか」と見られています。また、Jones氏は、「機械作りの技能や表面に書かれた文字の筆跡から見て、機械は古代ギリシャの小さな工場で複数人の手によって作られ、アンティキティラ島の機械以外にも似たような道具を作っていたのでは」と推測しています。


アンティキティラ島の機械で太陽や月の食を予測するためのダイヤルは、食が発生した際の月の色や、当日の天気も予測できるとのこと。Jones氏は、「アンティキティラ島の機械についての研究は、人間が道具を使い始めた起源や目的について理解を深めるのに役立つ」と語っています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log