インターネットが今後どうなるかを理解するためのトレンド情報満載のレポート「2016 Internet Trends」

By ITU Pictures

インターネット全般のアナリストであるメアリー・ミーカーさんが毎年公開している、インターネットに関わるさまざまなデータを網羅したレポート「Internet Trends」の2016年版が公開されました。ネットの成長はもはや先進国ではなく、アジアを中心とした新興国がメインの舞台になりつつあるという実態などが、200ページを超える資料とともに明らかにされています。

2016 Internet Trends — Kleiner Perkins Caufield Byers
http://www.kpcb.com/internet-trends

全世界におけるインターネットユーザーの数は30億人で、人口への浸透率は42%。ただし、赤色の線で示された前年比(Y/Y)の増加率は2009年の15%から下降を続け、2015年は9%となっています。


一方、インドにおけるインターネットユーザー数は急激に増加している状況。その増加率もまさに右肩上がりで、2015年には40%にも達しています。また、人口全体における浸透率が22%というのも、今後の成長を感じさせる数字。


スマートフォンユーザー数の増加率は、特にアジア地域で大きな伸びがみられています。2008年には全世界の34%だったアジア・パシフィック地域のユーザー比率が、2015年には52%と大きく伸びており、まさにこの地域での伸びが市場の拡大をけん引していると言える状況。


スマートフォンの出荷台数の伸びは、2010年の約80%をピークに下落を続けている状況。2015年には10%前後にまで落ち込んでいます。


Android端末とiOS端末の出荷台数の変化を比較すると、Androidだけが飛躍的に成長を見せていることが分かります。成長率の違いも注目ポイントですが、下部に書かれているASP(平均販売価格)の数値にも注目。iOS端末は平均価格が600~700ドル台(約6万円~7万円台)のレンジの中で上下を繰り返しているのに対し、Android端末は2010年の441ドル(約4万5000円)をピークに下落を続けて2016年末には208ドル(約2万3000円)にまで下落すると予測されています。これはつまり、Androidの成長は低価格モデルの増加と強い関連があることを伺わせるものと言えそう。


世界の国をインターネットへの障壁度で5つのグループに分類し、「Incentives (行動動機)」「Low incomes and affordability (低賃金度および入手性)」「User capability (ユーザーの習熟度)」「Infrastructure (インフラ整備)」の項目でまとめたのが以下のグラフ。黒い線で示されている日本や韓国、アメリカといったIT先進国ではいずれも数値が高いのに対し、「インターネットへの障壁度」が高い国々になるほど数値が低くなっていることがわかります。


スマートフォンを手に入れるために必要なコストが、年収に占める割合を比較したのが以下のグラフ。グラフの長さはコストの絶対値を示しており、右側のだ円の中に、年収に占める割合が記載されています。最も比率が高かった(=負担が大きい)のがエチオピアで、端末価格262ドルは年収の47.6%を占めるという結果に。以下、タンザニアの21.5%、バングラデシュの11.4%などと続いているのですが、日本や韓国、スペイン、イタリアなどの先進国ではその割合が1%以下となっています。濃いグラフで示された先進国が、グラフの下部に集中しているのも興味深いところ。これは先進国になるほどスマートフォンを入手しやすい環境に変化することを意味します。


◆全世界の経済トレンド
全世界のGDP成長率を見ると、2012年以降は減速傾向にあることがわかります。1980年から2015年までの平均成長率3.5%に対し、2012年以降は平均値を超えられない状況が続いています。


ニュースメディアのブルームバーグが提供しているブルームバーグ商品指数が示す、先物市場の変化がこれ。2012年ごろを境に、明確に下落傾向に入っていることが見てとれます。


1985年当時、世界全体のGDPは19兆ドル(約2000兆円)で前年度比の成長率は4%。当時の経済は北米とヨーロッパ、そして日本の市場が多くを占めていましたが、2015年になると世界全体のGDPは114兆ドル(約1京2400兆円)へと増大し、北米・ヨーロッパ・日本が占める割合は29%へと激減。残りの7割を中国とアジアの新興国が占めるという状況に変化しています。


とりわけ成長が著しいのが中国。新規に購入された有形又は無形の資産を示す総資本形成の変化を見ると、過去6年間の金額がそれ以前の30年間の合計よりも大きくなっており、近年の急激な成長の様子がわかります。とはいえ、この成長も頭打ちの様相を見せている点にも要注目。


その成長を象徴するものの一つが、上海の景観の変化。1987年当時は全くといっていいほど見られなかった高層ビルが、2016年時点になるとまさに林立している状況に変化。


一方で、先進国では経済全体に対する負債(=借金)の割合が増える傾向にあることも明らかに


GDPに占める負債の割合を新興国(水色)と先進国(オレンジ色)ごとにプロットしたグラフがこれ。先進国ほど割合が高い傾向がハッキリと見えてきます。


世界の人口増加率は減少の傾向


日本でも大きな問題とされる出生率の減少ですが、全世界で見ても減少傾向にあることがわかります。


一方で、社会全体の寿命は伸びる傾向が見られます。1960年代は50歳半ばだった全世界の平均寿命は2014年には70歳代にまで変化。


これらの状況を見ると「ネットへの接続性の成長低下」「新興国の成長鈍化」「各国政府の負債増加」「金利の低下」「人口増加率の低下と高齢化」により、今後のインターネットの成長は力を失いつつあることが浮き彫りになっていると言えそう。


これまでにも世界経済には定期的な上昇と下降が見られています。2015年から2016年はアメリカのNASDAQがピークに達していることから、ここからどのように変化をするのかが気になるところです。


◆インターネット広告
アメリカにおけるインターネット広告市場の伸びは、15%~20%台をキープしながら推移している状況。特に、水色で示すモバイル広告の伸びが市場全体の成長に大きく影響を与えています。


2014年から2015年にかけ、Googleは18%の伸びを見せているほか、規模は小さくなりますがFacebookは59%もの伸びを見せているほか、その他の広告市場も13%の好調な伸びを見せている状況。


しかし、広告に触れている時間は既存のメディアよりも少なくなると言うのがモバイル広告の特長と言えます。ラジオやテレビ、インターネット全体ではほぼ同じ時間になっているのに対し、モバイルでは大きく減少していることが判明。


Googleの市場そのものは成長していますが、実際のユーザーは動画広告をミュートしたり、動画の前に挿入されるプリロール広告を不快に感じていることもわかっています。とはいえ、エンターテインメント性を高めたり、有用性を挙げるなどの対応策が効果を発揮することも。


モバイル広告の世界で大きな潮流となっているのが、広告ブロック機能への対処策。2013年ごろからインターネット上では広告ブロック機能を持つソフトが拡大するようになりましたが、青色が示すモバイル端末の広告ブロックが著しく成長しています。


これに対して有効な効果を出しているのが、10秒程度の短さでスキップする必要のない(できない)広告の導入。


世代によっても反応がまったく異なることも分かっています。


インターネット広告の成長は、これまでのラジオやテレビの広告に比べても高い成長率を示しています


モノを買う場所も、従来の個人商店からスーパーマーケット、ショッピングモール、ディスカウント/ホールセールストアと変化し、現在はオンラインショップなどのEコマースが大きく存在感を示すように変化。


各時代の主たる小売業者も、アメリカの場合ではJ.C.ペニー→マイヤー→ウォルマート→コストコ→Amazonと変化し、「ジェネレーションZ」世代がメインストリームになる頃にはCasperが存在感を示すようになるのかも。


そして人口の27%をしめるミレニアル世代が、今後10年から20年の間でもっともモノを買う世代へと成長します。


そしてEコマース業態も2000年以降は成長を続けています。


ネット小売の最大手、Amazonは自社ブランド(プライベートブランド)を立ち上げるなどの施策を実施し、シェアの拡大を図っています。


商品とブランド、そして小売業の垣根があいまいになっているのも潮流の一つとのこと。多くのブランドが自社で小売を行ったり、小売業がブランドを立ち上げたりと、変化の激しい状況が存在。


これまでは実在する店舗からネット店舗への流れがおこっていましたが、現在では膨大なデータをもとにした実店舗型の小売業態が形になりだしているのも面白いところ。


ネットにつながるデバイスが増えたことで、モノを買うタイミングが容易にわかるようになったり、「シェア」の文化によってさまざまな恩恵を受けられるようになっています。


多くのネット小売業者は、5年で1億ドルの売上に成長することに成功しています。これは、従来の企業に比べて非常にペースが速いものとなっています。


◆SNS・メッセージングアプリなどの成長
モバイルを中心に、メッセージアプリの成長が近年のトレンドです。その主たるものが、WhatsAppやFacebook Messenger、WeChatなど。


メッセージ交換プラットフォームの進化によって、シンプルに自分を表現する手法が増えています。記号を組み合わせた1990年代の絵文字にはじまり、AOLチャットのイラスト絵文字などが普及した後は、メッセージングアプリのスタンプなど新しい機能を持つコミュニケーション方法が普及し続けています。


アジア地域で大きな成長を見せるメッセージングアプリも存在感を示しています。カカオトークやWeChat、LINEなどがその最たる例。


そしてそのメッセージングアプリをビジネスに活用するという流れもおこっています。


現代において、ミレニアル世代にアプローチする方法はソーシャルメディアやメッセージングアプリです。逆に、最もイケてない方法は「電話」という結果に。


端末にインストールしてあるアプリの数は、全世界平均で33個とのこと。そのうち、毎日使っているのは12個で、1日のうち4時間は端末を操作する、というのが平均的な現代人の姿。


いまや、メッセージングアプリが「第2のホームスクリーン」と言える状況になっているとのこと。


コンピューターを操作する方法は、キーボードなどを操作していた「タッチ1.0」からマウスなどによる「タッチ2.0」、そして画面を直接操作する「タッチ3.0」へと進化し、その次に訪れたのが声による「ボイスコマンド」の時代。


コンピューターが声を認識する精度は、騒音の少ない環境であれば90%にも達しており、判別できる語彙の数も飛躍的に増加しています。


BaiduやGoogle、Hound Voice Searchなどの音声認識技術も、年を追うごとに軒並み精度を高めています。


アメリカにおいて、音声操作機能を使用しているユーザーは2013年の30%台から、2015年には65%へと大きく増加。


Googleで音声を使って検索した内容で大きく増加したのが「自宅へナビ」と「ママに電話」というものだったとのこと。2008年と比較すると、およそ35倍の使用数だったことがわかっています。


Baiduにおいても、音声認識などのAPIを呼び出した(=機能を使った)回数は、2年で約4倍になっているとのこと。


このような音声による検索は、検索全体の10%~20%を占めるにまで増加を見せています。


音声認識機能を使う理由は、運転などで手がふさがっているときや、移動中に手早く操作を行いたいような場面。また、いちいち操作するのではなく、サクッと答えを返してくれるという利便性も評価の理由になっているようです。


そしてもちろんAmazonなどの小売業者も、音声で操作して注文を行えるデバイスの普及に力を注いでいます。このように、まだ日本ではそれほど広がっているとは言えなさそうな音声認識機能ですが、アメリカでは想像している以上に大きなウェイトを占めるようになっている様子が伺いしれます。


iPhoneの販売は2015年がピークということになりそうですが、Amazonの音声認識デバイス「Echo」はまだまだ成長を続けるとみられています。


近年の大きな潮流の一つが、さまざまな製品の「スマート化」が挙げられます。電気自動車などは、コンピューターとの統合が著しく進んでおり、もはや依然の「自動車」の概念を大きく変えるものとなっています。


今や、スマートウォッチで電気自動車を操作して、実際に走行させることが可能な時代に達しています。


昔の自動車は、文字どおり機械の寄せ集めと言えるものでした。1980年代には車両の状態を電子的に把握するシステムの搭載が始まり、1990年代には「OBD II」と呼ばれる、現在でも使われている車両診断システムが実用化されます。その後もコンピューターの仕様はどんどんと進み、いまやコンピューターなしに自動車は走ることができないというレベルに。


完全自動運転が可能な「レベル4」を視野に入れたGoogleの自動運転カーや、セミ自動運転を公道で使用可能なテスラの機能が実社会での経験を蓄積し、日々改良が行われています。


自動車技術の進歩は、もはや自動車業界だけのものではなく、IT業界と切り離せないものとなっています。


自動車製造の規模とシェアをグラフにすると、アメリカ(一番下)のシェアが下落傾向にあること、そして中国(水色)とその他地域(緑)が大きく成長していることがわかります。


現代の自動車のムーブメントは、「シェアライド」という概念の広まりといえます。uberPOOLのように、自動車を持つ人が自分の車に人を乗せてシェアするという使い方がいま注目されるようになっています。


◆データの持つ意味と価値
全世界におけるデータの量は増加の一途をたどっており、それに伴うようにストレージ(保管)にかかるコストは低下を続けています。


いまや全てのモノがデータを吐き出し、活用する時代といえます。


そしてデータは今や一つの「成長プラットフォーム」。サービスやシステム、アプリで活用される状況になっています。


1990年代から2016年にかけて見られたデータの進化は、データの量が限られたものだった「第1の波(First Wave)」からデータが急激に増加した「第2の波(Second Wave)」、そして大量のデータからインテリジェンスが生まれる「第3の波(Third Wave)」と変化。


データ解析は、従来のように専門知識が求められる複雑なツールから、データをビジュアライゼーションして理解しやすくする「Looker」などのソフトウェアが活用されるように変化しています。


顧客データや関係のインテリジェンスは、SalesforceIQを活用して管理


データをマップに落とし込む際には、Mapboxといったツールが活用されます。


クラウドデータのモニタリングには「Datadog


データのセキュリティ管理にはIONIC SECURITYなどの専門ツールを使うことが可能。


ここ数年、データプライバシーに関する議論が巻き起こる機会が増加しています。個人のプライバシーと社会の利益のどちらを優先するのか、永遠のテーマともいえる問題が頻繁に問われるようになりました。


サイバー犯罪の増加も近年のトレンドの一つ。2013年以降は、40億件のデータ記録が不正なアクセスなどにより流出していると見られています。


このような状況を受けて、消費者の間でもデータプライバシーへの関心は高まりを見せており、ある調査では実に96%の人が何らかの関心を示しているという結果も。


消費者が特に関心を寄せているのが、「データが売られているのではないか」「どこにデータがあるのか」「どのようにして私個人を特定することができるのか」「いつまでデータは保管されているのか」などのポイント。


プライバシーに関しては、誰がその情報を取得しているのかということもポイントです。Amazonの音声認識デバイス「Amazon Echo」は周囲の全ての会話をモニタリングしているほか、スマートフォンで入力した内容も品質向上のためという理由でクラウドに送信され、活用されているという実態も存在しているのです。

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