メモ

4500万件の納税記録の分析により億万長者は税金を高くしても引っ越ししないことが判明

By 401(K) 2012

アメリカは州ごとに税率が異なり、州によっては所得税がゼロに設定されているところもあります。パナマ文書が暴露されたことから「富裕層は高額な納税を避ける」と考えられがちですが、13年間にわたって4500万件の納税記録を分析した結果、毎年の所得が100万ドル(約1億1100万円)以上の億万長者は、租税回避のために居住地を変える確率が非常に低いということが、スタンフォード大学の調査によって明らかになりました。

Millionaire Migration and Taxation of the Elite: Evidence from Administrative Data
(PDFファイル)http://www.asanet.org/journals/ASR/Jun16ASRFeature.pdf

Higher Taxes Don’t Scare Millionaires Into Fleeing Their Homes After All - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-05-26/higher-taxes-don-t-scare-millionaires-into-fleeing-their-homes-after-all

高額な納税を嫌って居住地を変える億万長者の例として、投資家のデビッド・テッパー氏がニュージャージー州から所得税の徴収がゼロのフロリダ州に引っ越したことが報じられたことがありました。ニュージャージー州にとって、億万長者の納税がなくなることは大きな損失です。有名なゴルフ選手フィル・ミケルソン氏もカリフォルニア州の高額な税金に不満を漏らしており、フロリダ州への移動をほのめかしていました。

もしある州が「億万長者税」を設定することになると、その州は高額納税者が他州に流出してしまうリスクを抱えることになりますが、研究論文誌American Sociological Reviewで公開されたスタンフォード大学の研究によると、富裕層は「税金」だけが理由ではるか遠方の地へ引っ越してしまうことはほとんどないとのこと。課税基準に悩む政治家は、富裕層の税率を上げる余地が残されていることを研究が示しています。


スタンフォード大学の研究は1999年~2011年の13年間にわたって、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)の4500万件にのぼる納税記録を、統計モデルに基づいた富裕層の過去の移動歴データと合わせて分析したもの。その結果、もし州が最高税率となる10%を設定したとしても、トップクラスの富裕層が別の州へ移住してしまう可能性は1%にも満たないと算出されています。

4500万件の納税記録をもとに、州外へ移住する世帯の割合を収入別にプロットしたのが以下のグラフ。最低100万ドル(約1億1100万円)の年間所得を得ている富裕層およそ50万世帯が移住する割合は2.4%レベルであるのに対し、グラフの左に位置する年間所得が1万ドル(約110万円)の層の実際の移住率は約4.5%となっており、「金持ちほど移住しない」という結果が浮き彫りになっています。


この理由について、ほとんどの富裕層は「働く金持ち」であり、自らのビジネスや生活が深くコミュニティに根付いていることが挙げられます。以下は億万長者の移住率を条件ごとに示した表で、既婚であること・子どもの数が1人以上いること・高齢であること・事業主であること、など条件によって億万長者の移住率が低下することもわかっています。


ある種のIT系起業家にとって、税率の低いニューハンプシャー州やテネシー州は、シリコンバレーの代わりにはなりません。ウォールストリートの弁護士はウォールストリート街の近くに居を構える必要があります。有名な俳優や映画監督は、カリフォルニア州のハリウッドと同じ地名でも、フロリダ州のハリウッドに住む意味はありません。巨額の利益を得るビジネスがやりづらくなるため、富裕層は単に租税回避のために遠方の地へ移住してしまう可能性が低くなるということです。

なお、今回の分析により「金持ちはフロリダ州が好き」というような、興味深い発見も報告されています。アメリカには所得税徴収がゼロに設定されている州が全部で7つあり、フロリダ州のみ富裕層の移住が確認されています。同じ所得税徴収がゼロのテキサス州・テネシー州・ニューハンプシャー州などでは、租税回避目的の富裕層の移住は確認されていないのですが、これはフロリダ州がアメリカで唯一、カリブ海海岸沿いに位置していることが関係していると見られています。「租税回避」+「美しい海が見える家」という2つの条件が、富裕層を引き付ける要因になっている可能性があり、研究者はこの現象を「フロリダ・エフェクト」と名付けています。

By Kim Seng

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
巨大企業・富裕層がいかにタックスヘイブンなどで巨額の金を隠し持っているか暴露する「パナマ文書」が公表される - GIGAZINE

「パナマ文書」とは何なのかまとめ、問題の本質や資産隠しの現状、そして各界の反応は - GIGAZINE

貧困層よりも富裕層の方が10年から15年長生きできる - GIGAZINE

格差の頂点「超富裕層」とはどのような人たちなのかがわかるレポート「The Wealth Report 2015」 - GIGAZINE

お金で人は変わってしまうのか? - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.