サイエンス

二酸化炭素を吸収してエネルギーを生み出すバクテリアの研究が進む

by BearOnATrike

人工葉と二酸化炭素を吸収するバクテリアを使ってエネルギーを生成する研究を行っていたハーバード大学の研究チームが、バクテリアの遺伝子を操作することでエネルギー効率を10%にまで上げることに成功しました。太陽光と水と二酸化炭素さえあれば汚水からでもエネルギーを生み出せるため、電気の供給が行われていない場所での活用が見込まれています。

Harvard Scientist Engineers Bacterium That Inhales CO2, Produces Energy - Forbes
http://www.forbes.com/sites/jeffmcmahon/2016/05/29/harvard-scientist-engineers-a-superbug-that-inhales-co2-produces-energy/


植物は光合成によって太陽光と水と二酸化炭素から炭水化物を作りだしますが、これは10億年以上前に編み出されたエネルギー変換・エネルギー貯蔵の方法です。ハーバード大学のダニエル・G・ノセラ教授は2008年に、太陽光を当てると水を水素と酸素に分解するという「人工葉」を開発しました。燃料としての水素を生成するプロセスは通常、材料として天然ガスが用いられますが、ノセラ教授の人工葉は水を原料とするのが画期的であるとして注目されました。

その後、ノセラ教授は人工葉の研究を発展させ、人工葉に存在するバクテリアに水素の供給を行い、バクテリアに水素と二酸化炭素を結びつけさせて液体燃料の2-プロパノールを生成するという研究を開始。当初は人工葉で光合成を行った際の5倍であるエネルギー効率5%が目標とされており、2015年にノセラ教授が研究内容を発表した時には、多くの研究者から「産業レベルにまで実用化するのは難しいだろう」という声が上がっていました。

人工葉・バクテリア・太陽光・二酸化炭素からエネルギーを生み出す仕組みは以下の記事を読むとよくわかります。

人工葉とバクテリアを用いて太陽光エネルギーから液体燃料を生成する技術が登場 - GIGAZINE


しかし、2016年4月にシカゴ大学で発表された内容によると、ノセラ教授は人工葉・バクテリア・太陽光を利用して10%のエネルギー効率を実現したとのこと。

ノセラ教授は18カ月間にわたって、水素と二酸化炭素を消費してアデノシン三リン酸に変換するラルストニア・ユートロファというバクテリアを研究し、バクテリアがアデノシン三リン酸ではなくアルコールの一種である2-プロパノールを生成するよう遺伝子を操作しました。これによって、人工葉のみであれば燃料としての水素をエネルギー効率1%で生み出すしかできなかったのが、10.6%のエネルギー効率でバイオマスを、6.4%のエネルギー効率でアルコールを生み出せるようになったそうです。

ノセラ教授らのバクテリアで満たされた1リットルのリアクターは、空気中の二酸化炭素を1日あたり500リットル吸収。毎キロワット時のエネルギー生成のために237リットルの二酸化炭素を大気中から取り入れます。また、生成したアルコール燃料を燃焼させると、吸収された二酸化炭素の大部分が空気の中に戻ってしまいます。ノセラ教授は「この技術は空気中の二酸化炭素を吸着しますが、精製した燃料を燃やすと二酸化炭素は再び空気中に放出されます。つまりこれはカーボンニュートラルなものであるということであり、二酸化炭素問題を全て解決するというものではありません」と語っています。

by Mathias Pastwa

人工葉は尿や汚水からでも水素を生み出すことが可能であり、バクテリアが消費する二酸化炭素は大気中に存在するものなので、この技術は電気の供給が十分でない場所での活用が見込まれています。ノセラ教授は、人工葉とバクテリアによる再生可能エネルギーが、人口が多く電気のインフラが整っていないインドにおいて特に大きな影響力を持つものと考えており、現在はインドの研究機関などに技術を伝えるための資金を提供してくれる投資家を求めている最中です。

なお、実験が成功したのは2016年5月17日(火)のことで、今回の研究内容はまだ正式に発表されていないものの、近いうちに科学雑誌に掲載される見込みとなっています。

・関連記事
全世界のエネルギー源を再生可能エネルギーに置き換えたときのコストは? - GIGAZINE

激変する世界のエネルギー事情が簡潔に目で見てわかるレポートムービー2012年版 - GIGAZINE

無料で無限の「クリーンエネルギー」はいつ登場するのか? - GIGAZINE

Google、再生可能エネルギーに数百万ドルを投資する計画を実行へ - GIGAZINE

アメリカ軍も採用した「バイオ燃料」の普及に立ちはだかる問題点とは? - GIGAZINE

4人の女子学生がおしっこを燃料にした発電機を開発 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logq_fa