取材

4Kテレビの4倍の情報量+さらなる高画質・高音質を実現する「フルスペック8Kスーパーハイビジョン」をNHK技研公開2016で見てきました


NHK放送技術研究所が開発している技術を一般に公開するNHK技研公開2016が2016年5月26日(木)から29日(日)まで一般公開されています。この中では4Kテレビの4倍の高精細度を持つことに加え、さらに高画質や高音質を実現可能な「フルスペック8Kスーパーハイビジョン」を実際に体験できるとのことだったので、見てくることにしました。

NHK技研公開2016 〜進化が続く放送技術をご体感ください〜
https://www.nhk.or.jp/strl/open2016/

東京都世田谷区砧(きぬた)にあるNHK放送技術研究所に到着。最寄りの鉄道駅から徒歩で行くことはまず無理なので、小田急線 成城学園前駅、東急田園都市線 用賀駅、東急田園都市線 二子玉川駅、渋谷駅から出ているバス各線のいずれも「NHK技術研究所」で下車すれば、すぐ目の前にこのビルが見つかるはず。ちなみに、駐車場はないとのこと。


正面入り口前には、2016年の技研公開の看板。開場時間は午前10時から17時までで、入場は無料です。


1階のエントランスロビーを入って最初に目に入るのが、多くの人が足を止めて見入っていた8Kディスプレイの展示コーナー。85インチという巨大なフルスペック8Kスーパーハイビジョン液晶ディスプレイには、CGで描かれた花火や自然の風景などが表示されていたのですが、その精細さは確かに思わず見入ってしまうほど。


たくさんの木々が生い茂ったジャングルのような風景では、木の葉の1枚1枚や水面の様子が細かく再現されており、4Kに慣れた目でも「おっ?」と思わされてしまうレベル。


ただの8Kではない「フルスペック8Kスーパーハイビジョン」ということですが、その中身は画素数7680×4320という高精細ディスプレイを120fpsという高いフレームレートで駆動し、階調12bitの滑らかな映像表現、明暗差を豊かに表現するHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)、従来の表現幅を超える広色域、そして最大で22本のスピーカーで臨場感のある音場を再現する22.2chのマルチチャンネル音響を実現するという技術。


開発が進められているスーパーハイビジョンは、2016年8月1日から衛星放送による試験放送が開始されることになっています。そしてその後は2018年の実用放送開始を経て、東京オリンピックが開催予定の2020年には実用段階に入ることが目指されています。


ちなみに、ディスプレイの開発はシャープとの共同で進められているとのこと。スーパーハイビジョンに求められる85インチサイズ・7680×4320ピクセルのディスプレイ、フレーム周波数60fps(表示は120fps)、12bit階調、HDRというスペックを確保するもので、シャープから発売された85V型ワイド 8K映像モニター「LV-85001」は市販価格が1600万円という驚きの価格が付けられていたことを覚えている人も多いはず。ついでにいうと、消費電力も1440ワットと、こちらもなかなかのヘビー級。しかし、今後はさらに手頃で消費電力が低いものも登場する見込み。


8Kテレビに映す映像を撮影するための「8Kカメラ」も横に展示。


映像センサーを3枚使用する「3板式」のカメラは3300万画素/120HzのCMOSセンサーを搭載し、8Kスーパーハイビジョンに求められる画質を実現。現在では、さらにコンパクトな単板式のカメラも開発されています。


また、厚さ数ミリという極めて薄い8K有機ELディスプレイの試作品も展示されています。


自ら発光することでバックライトを必要とせず、非常に薄い設計が可能になるという有機ELのメリットを活かしたディスプレイ。展示モデルはガラス式のため巻き取りはできませんが、プロジェクタースクリーンのように巻き取り可能なタイプの実現に向けた研究開発も進められているとのこと。


裏から見てもフレームなどがなく、ほとんどフィルムのような驚異の薄さとなっています。なお、試作品はLG Displayとアストロデザインとの共同で開発されたものとのことで、4枚の4K有機ELディスプレイを連結して8K化しているそうです。


8K放送を視聴者に送るための放送技術も研究が進められています。


従来の地デジに比べ、2~5倍という帯域幅が必要なスーパーハイビジョン放送を可能にするために、次世代の映像符号化技術や複数の電波を併用して束ねるMIMO技術を使って大容量化が実現されてきたとのことです。


ロビーから1フロア下りた地下1階では、さらに詳細な展示が行われています。


フルスペックスーパーハイビジョンでは、現実世界における色のほぼ全てをカバーするという広い色域性能が使われていたり……


非常に優れた高精細度のおかげで、粒子感をほとんど感じさせないリアル感を実現。


写真では表現できませんが、現地では実際に従来の2Kや4Kと8Kの画質を比較する表示も。いちど8Kの精細さと比較してしまうと、これまでキレイだと思っていた4Kディスプレイが色褪せてくるというから、技術の進歩というのはおそろしいものです。


また、フレームレートが120fpsと高いのもフルスペックスーパーハイビジョンの特長の一つ。実際に卓球のラリーやスケートボードのシーンやなど動きのある映像がデモ表示されていたのですが、確かに驚くほどのリアルさを感じてしまう内容でした。


フルスペックスーパーハイビジョンの特長をわかりやすく示す、パンダのイラストが掲げられている場所も。


8Kでの番組制作の現場を再現したコーナーを見ることもできます。


このようなミニセットが組まれ、周りを複数の8Kカメラが取り囲んでおり……


その横にはスイッチング卓がセットされ、各カメラから送られてきた映像を確認しながら調整して出力する様子が再現されています。特に、このセットでは明暗差を強く付けたセットづくりが行われており、レンジの広い画作りが可能なHDR(高ダイナミックレンジ)の効果を実感することができるようになっていました。


この写真は、実際に調整が済んで出力された映像の一部を切り取ったもの。ガラスやパンの質感が非常によく再現されていること、そして明るい部分でも白飛びが発生していないところなどから、8Kの高精細さとダイナミックレンジの広さを目の当たりにすることができました。


ここで使われているHDRは、デジタルカメラやスマートフォンのカメラのように露出の違う写真を複数枚撮って合成するものとはまったく異なり、BBCとNHKが共同で開発したHLG方式(ハイブリッド・ログ・ガンマ方式)と呼ばれるものとのこと。従来のSDR方式との互換性を保ちつつ、対応する機器では明暗度が格段に広い映像を扱えるようになっているとのことでした。

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in 取材,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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