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三菱自動車に続いて「スズキ」も燃費を国が定める方法とは異なる形で測定していたことが判明

By Sean MacEntee

自動車メーカーの「スズキ」が燃費のデータ測定を、国が定める方法とは異なる形で行っていたことが明らかになりました。

スズキも燃費データ異なる測定 - NHK 首都圏 NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20160518/5409661.html


ことの発端は2016年4月20日に判明した、三菱自動車工業の燃費試験データの不正操作。三菱自動車工業は軽自動車の型式認証取得の際に国土交通省へ提出する燃費試験データに、燃費を実際よりも良く見せるための不正な操作を行っていました。また、国内法規で定められた燃費の測定試験方法とは異なる方法でデータの測定が行われていたことも判明しています。

当社製車両の燃費試験における不正行為について | MITSUBISHI MOTORS JAPAN
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/info/20160420/index.html


当社製車両の燃費試験における不正行為について | MITSUBISHI MOTORS
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2016/news/detailg420.html


燃費不正が行われたのは三菱自動車工業が2013年6月から生産している「ekワゴン」および「ekスペース」と、日産自動車向けに三菱自動車工業が供給している「デイズ」と「デイズルークス」の計4車種。三菱自動車工業は不正が発覚した2016年4月20日の前月までに当該車種を計15万7000台販売、さらに日産自動車向けに「デイズ」と「デイズルークス」の2車種を計46万8000台生産しています。

燃費不正の行われた4車種は、すべて三菱自動車工業が燃費試験を担当しています。燃費不正が発覚した経緯としては、次期車の開発にあたって日産自動車が該当車の燃費を参考に測定したところ、届出値と実測値が大きくかけ離れていた模様。そこで日産自動車は三菱自動車工業に対して試験で設定した走行抵抗値についての確認を求めます。これを受けて三菱自動車工業が社内調査を行った結果、実際より燃費に有利な走行抵抗値を使用した不正を把握することになった、というわけです。

なお、不正行為発覚後に三菱自動車工業が国土交通省に提出した調査報告書の概略は以下の通り。

当社製車両の燃費試験における不正行為に係わる国土交通省への報告について | MITSUBISHI MOTORS
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2016/news/detailg427.html

1.当社製軽自動車における燃費試験データ不正の経緯について
(1)14型『eKワゴン』『デイズ』(2013年2月申請)に設定されている4つの類別(燃費訴求車、標準車、ターボ付車、4WD車)のうち、燃費訴求車の開発において、目標燃費は当初(2011年2月)26.4km/lであったが、その後の社内会議で繰り返し上方修正され、最終的(2013月2月)には29.2km/lまで引き上げられた。
(2)同燃費訴求車につき、法規で定められた惰行法と異なる方法「高速惰行法」で走行抵抗データを実測。燃費を良く見せるため、計測したデータの中から小さい値を選別し、走行抵抗を設定した。残る3類別については、実測を行うべきところ、同燃費訴求車の値を基に机上算出した。
(3)14型『eKスペース』『デイズルークス』(2013年10月申請)、15型『eKワゴン』『デイズ』(2014年3月申請)、15型『eKスペース』『デイズルークス』(同年12月申請)、16型『eKワゴン』『デイズ』(2015年6月申請)のいずれについても、14型『eKワゴン』『デイズ』を基に目標燃費に合わせて机上算出し、申請していた。

2.法規に定められたものと異なる測定法「高速惰行法」使用の経緯について
以下のいずれについても、当時の判断理由については調査中。
(1)1991年、道路運送車両法により走行抵抗の測定法が「惰行法」と指定されたが、当社ではそれと異なる「高速惰行法」で国内向け車両の計測を始めた。
(2)1992年1月、走行抵抗から惰行時間を逆算する計算法が作られた。
(3)2001年1月、「惰行法」と「高速惰行法」の比較試験を実施し、最大2.3%の差にとどまることを確認。
(4)2007年2月、試験マニュアルにより、「DOM(国内)はTRIAS(「惰行法」)」と追記改定したが、以降も「高速惰行法」を継続して使用していた。

3.今後の調査方針について
(1)上述の経緯1、2について、一定の調査が進んだものの、原因や責任については未解明であり、引き続き調査を進める。
(2)上述の軽自動車以外の当社製車両についても十分な調査が進んでおらず、引き続き調査の上、別途ご報告する。


さらに、2016年5月に入ってから三菱自動車工業が国土交通省に対して追加報告した調査報告書の概略が以下のもの。

当社製車両の燃費試験における不正行為に係わる国土交通省への報告について | MITSUBISHI MOTORS
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2016/news/detailg511.html

1.当社製軽自動車4車種の調査について
(1)燃費を良く見せるための走行抵抗の不正な操作は、14型『eKワゴン』『デイズ』(2013年2月申請)の燃費訴求車の開発において始まった。他の類別(標準車、ターボ付車、4WD車)や『eKスペース』『デイズルークス』、各年式変更車では、走行抵抗は同燃費訴求車のデータから机上計算された。
(2)同燃費訴求車の開発において、燃費目標は26.4km/lから29.2km/lまで計5回引き上げられた。新型競合車の燃費を強く意識したもので、現実的には達成が困難でありながら、根拠に乏しい安易な見通しに基づく開発が進められた。
(3)担当者らは、燃費が「商品性の一番の訴求ポイント」と認識し、開発関連部門の管理職・役員からの燃費向上の要請を必達目標として感じていた。
(4)開発関連部門の管理職(複数)は、業務委託先とのコミュニケーションを十分に行っていなかった上、高い燃費目標の困難さを理解していたにも係わらず、実務状況の確認をしなかった。
(5)再発防止策については、各問題点をふまえ、抜本的な改革を検討している。

2.今後の対応について
(1)その他の現在販売している9車種及び、既に販売を終了した車種については、ヒアリングの結果、正しく走行抵抗を算出していなかったり、『RVR』などについて机上計算により算出したりしたものがあることが疑われるため、測定データによる裏づけや経緯などを調査中で、別途ご報告する。
(2)「高速惰行法」使用の理由・経緯を含む本件の徹底的な調査のため、外部有識者のみによる特別調査委員会を4月25日に設置した。同委の報告と提言を受け次第、弊社としての適切な対応を立案し、別途ご報告する。


燃費不正が発覚してから3週間後、日産自動車は2370億円を三菱自動車工業に出資して同社の株式34%を取得することを発表。三菱自動車工業は事実上、日産自動車の傘下となることが決定しました。

日産自動車と三菱自動車、戦略的アライアンスを締結 - 日産自動車ニュースルーム


この三菱自動車の燃費不正問題を受け、国土交通省は他の国内自動車メーカー各社に対しても、不正がなかったかどうかの調査報告を求めていました。その結果、軽自動車の大手メーカーであるスズキで、国が定める方法とは異なるデータ測定が行われていたことが発覚したというわけです。

なお、実際のところスズキが「どの車種」で「どのくらいの期間」にわたり、規定とは異なる測定方法を行っていたのかは不明です。また、規定の方法とスズキが行っていた測定方法で燃費にどのくらい差が出るのかなども不明で、これらについてはスズキの鈴木修会長が5月18日の午後に国土交通省を訪れて報告することになっています。

・追記 2016/05/18 17:42
2016年5月18日の午後、スズキの鈴木修会長が会見を開き「定められた測定方法を用いず、深くおわびする」と謝罪しました。

スズキ会長「深くおわび」 燃費測定16車種で不備  :日本経済新聞


なお、同タイミングでスズキは国土交通省への報告内容に関するリリースを出しており、これによると規定と異なる測定方法を行っていたものの、燃費性能を偽る不正行為は存在しなかったそうです。

スズキ株式会社 企業ニュース 2016年5月18日 国土交通省への報告内容について


不適切な測定方法がとられたのは以下の16車種。海外での販売車両は今回の件とは無関係とのことです。

<軽四輪車>
アルト(2014年12月22日発売)、アルト ラパン(2015年6月3日発売)
ワゴンR(2012年9月19日発売)、ハスラー(2014年1月8日発売)
スペーシア(2013年3月15日発売)、エブリイ(2015年2月18日発売)
キャリイ(2013年9月20日発売)、ジムニー(2010年JC08対応)

<登録車>
ソリオ(2015年8月26日発売)、イグニス(2016年2月18日発売)
バレーノ(2016年3月9日発売)、SX4 S-CROSS(2015年2月19日発売)
スイフト(2010年9月18日発売)、エスクード2.4(2012年JC08対応)
エスクード(2015年10月15日発売)、ジムニーシエラ(2010年JC08対応)

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in 乗り物, Posted by logu_ii

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