読み書きが高速で耐久性に優れる「相変化メモリ」の低価格化へ向けた第一歩が実現

by Razor512

IBMリサーチの研究者が、現在使われているDRAMやフラッシュメモリの利点を備えた相変化メモリ(Phase Change Memory:PCM、PRAM)の1つのセルに3ビットを格納することに成功しました。これまでに成功していたのは1セルに1ビットでしたが、今回の成功により、相変化メモリを同密度のフラッシュメモリに迫る価格で作れるようになったとのこと。

IBM Scientists Achieve Storage Memory Breakthrough
http://www.prnewswire.com/news-releases/ibm-scientists-achieve-storage-memory-breakthrough-300269117.html


IBM scientists achieve storage memory breakthrough
http://phys.org/news/2016-05-ibm-scientists-storage-memory-breakthrough.html

相変化メモリはここ数年、読み書き速度や耐久性、不揮発性、密度の点で、普遍的なメモリ技術となる力を秘めているものとして注目を集めてきました。

PCのメモリとして用いられるDRAMは読み書き速度と耐久性に優れますが、電源が切られると記憶していたデータが失われるので、データをずっと保持しておくための記憶媒体としては使えません。一方、フラッシュメモリは電源が切られてもデータは保持できますが、DRAMに比べると読み書き速度は遅く、耐久性にもやや難があります。

相変化メモリはその「いいとこどり」ができる技術で、電源が切られてもデータを保持することができ、耐久性も最低で1000万回の書き込みに耐えられます。一般的に、フラッシュメモリを用いたUSBメモリの耐久性は3000回の書き込みだと言われているので、3000倍以上の耐久性があるということです。

by IBM Research

モバイル端末やモノのインターネット(IoT)によってデータ量の指数関数的成長が見込まれる中で、相変化メモリは高速かつ簡単なストレージとして期待されています。また、単に高速なキャッシュ用としてだけではなく、フラッシュストレージと組み合わせたハイブリッド型も構想されています。

たとえば、相変化メモリにスマートフォンのOSを格納すれば、わずか数秒で起動することも可能になります。企業レベルの話なら、データベースを相変化メモリに格納することで高速にクエリ処理が行えるので、金融取引のように緊急を要する案件で非常に役立つはず。さらに、巨大なデータセットを用いる機械学習でもレイテンシを小さくすることができます。

すでに、IBMと他の研究所の科学者たちは、相変化メモリの1セルに1ビットを格納する実証を行っていますが、2016年5月17日にパリで行われた国際メモリワークショップにおいて、IBMの研究者は、100万回の耐久性サイクルのあと高温の状態で、1セルに3ビットを格納することに成功しました。

「相変化メモリはDRAMとフラッシュメモリの両方の特性を備えた普遍的なメモリの最初の姿であり、私たちの産業の壮大な挑戦の1つの答えです」と語ったのは、相変化メモリについての論文の著者でありIBMリサーチで不揮発性メモリ研究のマネージャーを務めている。ハリス・ポジディス博士。博士は「『1セルあたり3ビット』に達したことは、同じ密度で考えたときに相変化メモリのコストがDRAMより著しく低くなりフラッシュメモリに迫るものになったということで、意義深いマイルストーンです」とも語りました。

これまではコストの面がネックとなって利用が広がっていなかったとのことですが、その問題を乗り越えて、これから一気に普及が始まるかもしれません。

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in ハードウェア, Posted by logc_nt