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禁止されたインターネットを衛星放送を通じてUSBメモリで提供する「Toosheh」

By mbeo

イランでは政府主導でインターネットに制限が設けられており、中国同様に海外のニュースメディアやウェブサイトへ接続できない状態です。インターネット設備も不十分で、回線速度は非常に遅く、イラン国民は自由にインターネットから情報を得ることができない状況を強いられています。インターネットの代わりに国営放送などを放送する衛星TVの設備が普及しているのですが、衛星放送の電波を使って禁止されたインターネットの情報を入手するという試みが行われています。

The Ingenious Way Iranians Are Using Satellite TV to Beam in Banned Internet | WIRED
http://www.wired.com/2016/04/ingenious-way-iranians-using-satellite-tv-beam-banned-data/

情報が厳しく規制されているイランにインターネットをもたらす活動を行っているのは、「Net Freedom Pioneers(ネットの自由開拓者)」と呼ばれるイラン人とアメリカ人の活動家8人で構成されている団体です。ロサンゼルスに拠点を持つNet Freedom Pioneersは、2016年3月に人工衛星を通じてインターネットから情報を得ることができる無料ソフトウェア「Toosheh」を公開しました。

Tooshehの使い方を解説するムービーは以下から見ることができます。

Toosheh - YouTube


まずはテレビのリモコンを使って、Tooshehのチャンネルを選択します。


次に衛星放送のセットトップボックス(STB)に記録用のUSBメモリを接続。


60分ほどかけて1GBの情報が書き込まれます。


記録し終わったら、USBメモリをPCに接続。


USBメモリを開くと、イラン政府によってアクセス制限がかけられているニュースサイトの記事のPDFや、YouTubeのムービーのMPEGファイルなどが入っています。Tooshehはリアルタイムでインターネット接続を可能にするわけではないものの、イラン政府に気付かれることなくオフラインで制限されたコンテンツが楽しめるというわけです。


イランにはインターネットは存在するものの、「反イスラム教」と政府が認定したウェブサイトへの接続は制限されています。また、TEDなどいくつかの海外のウェブサイトはアクセス制限がかけられていないため、インターネット環境があれば見ることができますが、インフラ設備の不足により速度が非常に遅く、ムービーはまともに再生できないというのがイランのインターネット環境の現状です。

VPNTorPsiphonなどのツールを使えば、イラン国内でも政府の監視を回避できますが、イラン政府もこれらのツールの制限に注力しているため、いたちごっごになってしまいます。一方で、イランでは衛星放送の普及率が70%を突破しており、小さな村でも家庭にひとつ、衛星アンテナとSTBがあります。衛星放送は国営チャンネルなどしか視聴できませんが、Tooshehはイラン政府が干渉できないアラブ首長国連邦の企業・Yahsatの人工衛星を使っており、政府の制限を心配することなくインターネットのコンテンツを入手可能とのことです。

Tooshehのソフトウェアは、公開以来、5万6000回以上もダウンロードされており、イラン国内で人気を集めつつあります。すでにTooshehのウェブサイトはイラン政府によってアクセス制限がかけられていますが、TorなどのプロキシツールでTooshehにアクセスできれば、無料でダウンローダーを入手することができるとのこと。衛星から送られるコンテンツはNet Freedom Pioneersによって注意深く選ばれており、エンターテインメント・教育・人権といったコンテンツが偏りなく組み合わさっているそうです。コンテンツの内容は、プロキシを通じてメールやTwitterから届くフィードバックからも参考にしてるとのこと。


また、衛星信号を通じてPsiphon・Lanternのような新しい政府の検閲回避ツールを配布するという試みも行われています。衛星放送を通じてイラン国外の情報にアクセスするというアイデアは、Net Freedom Pioneersの創始者であるYahyanejad氏が10代のころの1990年代に思いついたものであり、実現に至るまでに非常に長い月日を経ています。Yahyanejad氏がスタンフォード大学で博士課程終了後の研究者時代に具体的な構想を立て始め、STBにUSBポートが搭載されるまでに10年近くが経過したとのこと。

各家庭にUSBポートを持つSTBが普及し始めたことから、2012年にYahyanejad氏は開発者チームを結成し、実際にデータをMPEG-2 TSフォーマットに圧縮する方法を実現したそうです。Yahyanejad氏は「私たちはゼロからソフトウェアを構築しました。私の知る限り、誰も同じことを成し遂げた人はいません」と話しています。

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