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「パナマ文書」が白日の下に晒す、スパイとCIAの銃密輸がどのように企業を隠れ蓑にしてきたのかという秘密

By Mike Holmes

「タックス・ヘイブン(租税回避地)」に設立したペーパーカンパニーを利用した「オフショア取引」で税金の支払いを回避する実態が初めて明らかになった「パナマ文書」の流出劇が世界中で大きな波紋を広げていますが、そこで行われているのは単なる税金逃れだけではないことが明るみになっています。オフショア取引の高い匿名性を使い、アメリカ中央情報局(CIA)が世界の諜報機関やスパイなどと取引を行って武器の密輸を行うなど、タックス・ヘイブンが世界的な一大スキャンダルの舞台にもなっていたことを証明する内容も明らかになっています。

Spies and shadowy allies lurk in secret, thanks to firm’s bag of tricks | News & Observer
http://www.newsobserver.com/news/nation-world/world/article70044452.html

歴史に名を残す一大事件にタックス・ヘイブンのオフショア取引が用いられていたことを裏付ける記録が明らかになっているわけですが、その中では元CIA職員とその協力者が銃の密輸を行い、個人的な利益を得ていたことも明らかにされているとのこと。また、特定の集団が、CIAや他の諜報機関のスパイチーフ(国家情報部顧問)、シークレット・エージェント、工作員としての任務時期中あるいはその後に、オフショアカンパニーを使って行っていた取引の中身も明らかにされています。

パナマ文書からは、サウジアラビアの諜報機関のトップを務めていたSheikh Kamal Adham(シェイク・カマル・アッダハム)氏の名前が、パナマ文書の流出元であるモサック・フォンセカのリストに含まれていることが明らかになっているとのこと。この人物は、後にアメリカ上院委員会で「1960年代中盤から1979年における、中東地域全般に関する最も重要なCIAに対する連絡者」として認められている人物であり、2名の米軍関係者が関与した銀行にまつわるスキャンダルに使われたペーパーカンパニーを運用していた人物でもあります。


モサック・フォンセカは同社のクライアントについて声明の中で「われわれは、新規または見込みのあるクライアントに対して徹底的なデューデリジェンス(適正評価手続き)を実施しています。これは存在するどの規則や基準を上回る要求の厳しさを持つものです」と語り、正当な評価を行っている点を強調。さらに「クライアントの多くは、定評があり信頼のおける世界中の法律事務所や金融機関を通じてやって来たものであり、自身の証明や資金の出所を証明する文書を提供できない場合は仕事をお断りしています」と、自社の取引の正当性を主張しています。

しかし、実際のクライアントの中にはニセモノと思われるものも多く含まれているとのこと。2010年にモサック・フォンセカを通じて英領ヴァージン諸島のタックス・ヘイブンにフロントカンパニーを設立した投資家の人物は、「例えば、『World Insurance Services Limited』や『ユニバーサル貿易(Universal Exports)』と言った、映画『007』に登場する名前の企業がありましたが、それらに関連するものかどうかはわかりません」と明らかにしています。また、モサック・フォンセカのリストには「ゴールドフィンガー」や「スカイフォール」「ゴールデンアイ」「ムーンレイカー」などのスパイ映画のタイトルを思わせる企業名や、ボンド作品最大の敵とされる「スペクター」といった名前を冠した企業が多く含まれているとのこと。さらに「オースティン・パワーズ」や「ジャック・バウワー」といった名前の人物が関わる企業なども含まれているとのこと。これらはいずれも実在する人物の「名前」であり、モサック・フォンセカのデータベースには「ジャック・バウワーとパブで面会」というメモが残されています。ただし、この名前が本当の偽名であるかどうかはわからないとのこと。

まるでジョークのような事例ですが、実際のモサック・フォンセカと諜報員の関連は現実のスパイの世界と密接なものがあったことが明らかにされています。

◆オフショア取引を使った取引の実態
モサック・フォンセカの文書には、Farhad Azimaという名の人物が2000年に英領ヴァージン諸島に「ALG (Asia & Pacific) Limited」と呼ばれる企業を設立したことが記録されています。この企業はアメリカの民間企業で、60機の航空機を運用する「Aviation Leasing Group」の子会社として設立されたもの。2013年、モサック・フォンセカがクライアントの実態調査を実施したところ、Azima氏がCIAとの関連疑惑をもたれていることを発見。モサック・フォンセカの社員が行った調査記録には、「CIAの元職員がリビアに武器を密輸する際に空路と運輸の手配を行った」ことを指摘する記事がファイリングされており、FBI職員がCIA職員から「Azima氏は一線を越えてしまった」と警告を受けたと発言する内容を記した記事も見つかっているとのこと。


モサック・フォンセカは調査のためにAzima氏の代理人にコンタクトを試みるものの、返答はなかった模様。Azima氏はその後もクライアントリストに名を連ね続けていた形跡が残されていますが、さらに新たな事実が判明することになっています。

Azima氏とCIAの関係が明らかにされた1年後の2014年、Hosshang Hosseinpourという名の人物がアメリカ財務省の調査を受けました。その原因はHosseinpour氏がイランにある企業に何千万ドルもの資金を移動させたというもので、その段階ではイランに対する経済制裁に抵触するものと捉えられていましたが、徐々に真相が明らかにされていきます。パナマ文書からは、Azima氏とHosseinpour氏が2011年にジョージア(かつてのグルジア)にあるホテルを買収するための企業を設立していたことが記録されているのですが、これはHosseinpour氏が共同設立者を務める民間航空会社「フライジョージア(FlyGeorgia)」などの企業がイランに何百万ドルという資金を送金したタイミングと同じ頃であると財務省は見ています。Hosseinpour氏はその後、3年間の制裁措置を受けています。

文書によると、Hosseinpour氏は2011年11月以降、「Eurasia Hotel Holdings Limited」社の株を一時的に保有していましたが、2012年2月になると同社はモサック・フォンセカに対し、Hosseinpour氏は同社に関連がないこと、そして同氏が保有していた株式を「管理上のエラー」として扱っていることを説明。その後、同社は「Eurasia Aviation Holdings」と名称を変更し、2012年に小型ビジネスジェット機の「ホーカー 400」を162万5000ドル(当時のレートで約1億3000万円)で購入したことがモサック・フォンセカの記録に残されています。

Azima氏は、パナマ文書を公表した「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」の取材に対し、「同社は航空機の購入にのみ使われており、Hosseinpour氏が関与したことはなかった」と語っているとのこと。Hosseinpour氏とのコンタクトは実現しなかったとのことですが、制裁措置が有効になる直前の2013年にはウォール・ストリート・ジャーナルに対して自身のイランへの関与を否定し、制裁には関係がない旨を語っていたとのこと。

上記のケース以外にも、CIAの関与が明らかにする内容がモサック・フォンセカの記録から見つかっているとのこと。アイスランドの首都レイキャビクに住むLoftur Johannessonと呼ばれる85歳の裕福な人物は、「アイスランダー」という名前でも知られている人物。同氏は1970年代から80年代にかけて、アフガニスタンの反共産主義ゲリラ組織に対して銃を供給するためにCIAに協力していたとして広く伝えられている人物でもあり、CIAから受け取った報酬でカリブ海の島国バルバドスに自宅を建て、フランス国内のぶどう園を所有していると伝えられています。

モサック・フォンセカの記録におけるJohannesson氏の名前は、諜報部員としてのキャリアを終えてしばらくが経過した2002年に登場しているとのこと。同氏の名前は少なくとも4つのオフショア企業に見つけることができ、いずれも高級住宅の売買に伴うものであり、2015年1月にJohannesson氏はモサック・フォンセカに対して何千ドル(数十万円)のサービス料を支払っているとのこと。モサック・フォンセカはICIJに対し「Johannesson氏は主に航空機に関する国際ビジネスマンであり、諜報機関と協働してたという貴社の指摘を完全に否定します」とコメントしています。

また、アメリカをはじめ世界的にも大スキャンダルとなったイラン・コントラ事件の中でもCIAがオフショア関連の活動を行っていたことが判明しています。この事件では、サウジアラビアの武器商人であるアドナン・カショギ氏がCIAに協力してイランに武器を密輸していたことが明らかになっており、現在のアメリカ国務長官を務めるジョン・ケリー氏が上院議員だった1992年に共同でまとめた報告書では「合衆国に対する中心的な活動を行った」人物として名前が挙げられています。


カショギ氏の名前がモサック・フォンセカの文書に登場するのは1978年ごろで、パナマに拠点を構える企業「ISIS OVERSEAS S. A.」の社長として名前が記載されており、モサック・フォンセカとの取引は1980年代から2000年代にかけて少なくとも4つの企業との間で行われているとのこと。各企業の設立目的は明らかではありませんが、少なくとも4社のうち2社はスペインとカナリア諸島の住居の抵当権に関する業務を行っているとのことです。

なお、モサック・フォンセカがカショギ氏の過去を調査した形跡はないとのことですが、カショギ氏がフィリピンのフェルディナンド・マルコスの犯罪に加担したことを理由に罪に問われたことが原因で、2003年にはモサック・フォンセカが同氏との取引を終了したとのこと。


この他にも、モサック・フォンセカのリストにはギリシャの富豪で東ドイツの秘密警察「Stasi(シュタージ)」に関与していたとされるソクラティス・コッカリス氏など、世界的なスパイ・諜報活動家などの名前が挙がっていることが明らかになっています。これまで明らかにされることがなかったオフショア取引を巡る世界の暗部が今後どれだけ明らかにされるのか、関心が集まることは必至です。

なお、モサック・フォンセカはタックス・ヘイブン関連では世界第4位の規模を持つ企業とのこと。上にはさらに3つの企業が存在しているということで、いったいどれだけの中身が隠されているのか途方に暮れてしまいそうになります。

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