手書きのメモを残すことで本当に頭が良くなるものなのか?

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学校や塾などで「手で書かないと覚えられないぞ!」と先生に言われた経験がある人もいると思いますが、手書きが成績に影響を与えるとする考え方は海外にもあるようです。アメリカで行われた研究からは、手書きのメモをとりながら授業を受けることで、よりよい成績をあげる傾向にあることが判明しています。

Can Handwriting Make You Smarter? - WSJ
http://www.wsj.com/articles/can-handwriting-make-you-smarter-1459784659

この研究はプリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームによって実施されたもの。大学生を対象に、普段の講義を手書きでメモをとる学生とノートPCやMacbookでメモをとる学生を比較したところ、手書きでメモをとる学生のほうがよい成績をあげ、より長い時間にわたって記憶が定着し、新しいアイデアを思いつきやすい傾向にあることが判明しています。

ネブラスカ大学リンカーン校の教育心理学者であるケネス・キエウラ博士は「手書きのメモのほうが、私の考えていることをうまく形に残してくれます」と、手書きメモの優れている点を指摘しています。

手書きによる記憶の定着は、古代の人類がパピルスにアシのペンで文字を書き始めた行為がきっかけとなって秘められた力を発揮するようになりました。書くという行為は、われわれが耳にしたり目にしたものを確実な記録として残し、学習と後の再収集に大きな力を発揮するからです。事実、何かを書き残すという行為は脳に興奮を与えることが、脳イメージングを使った研究からも明らかになっています。ハーバード大学の認知心理学者であるマイケル・フリードマン氏は「メモをとるという行為は、活動的なプロセスです。メモをとるとき、私たちは聞いたものを心の中に変換する処理を行っています」と、メモという行為に秘められた脳の処理を語ります。

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メモをとることの効果については1世紀近くにわたって研究が行われてきましたが、その手法による違いについてはあまり研究が行われてこなかったとのこと。事実、メモを残す道具が鉛筆なのか、万年筆なのか、ボールペンなのかと言った違いはさほど大きくないものであり、キーボードを使ってメモをとるという行為が広まりだしたことで、手段による効果の違いがクローズアップされてきたという流れがあるとのこと。

一般的に、手書きでメモをとる学生よりも、PCのキーボードでメモを残す学生のほうが、より多くの文字数を残せることがわかっています。研究によると、手書きのメモの場合は1分あたり22語を書き残せていたのに対し、PCでのメモの場合は33語を記録できることが判明しています。

より多くの情報を残せるPCのほうが短期的にはメリットになることが分かっています。ワシントン大学が2012年に行った研究からは、講義の直後に行われたテストでは、キーボードでメモをとっていた学生のほうが少しだけよい成績を取る傾向を示すことが判明しています。

By Brian

しかし、その効果は短期間で失われてしまうことも判明しています。同じ学生を対象に、24時間後に行われたテストの結果からは、キーボードでメモを残した学生の多くがその内容を忘れてしまうことが明らかになっています。その一方、手書きのメモをとっていた学生は、記憶が長く残り、講義のキーポイントを確実に覚えている傾向にあることがわかっています。このことから専門家は、手書きでメモを残す行為には記憶を意識のより深い部分へ定着させる効果があると語っています。

また、この違いは両者のメモの取り方の違いも表れているとのこと。キーボードを使ってメモを残す学生の場合は、講師が語った内容をそのまま文字に残す傾向があるのに対し、手書きのメモをとる学生は一定のまとめを行ったうえで文字に残す傾向があることがわかっているとのこと。自分の頭の中で1度まとめる段階を踏むことで、記憶を定着させやすくなる効果があるようです。

とはいえ、手書きメモが万能というわけでもないというのが要注意のポイントかもしれません。キエウラ博士は学生を対象に、講義の中で語った内容をどれだけ網羅できているかを測る実験を行いました。すると、手書きメモで記録できていた内容は全体の3分の1程度にとどまっていたうえに、話すスピードに追いつくために重要な語句を書き落としていたり、文脈を記録しきれず、キーとなるポイントを逃してしまっていたことが明らかになっています。

このように、メモをとるという行為自体が実は高い集中力を必要とし、重要なことから意識を削いでしまうという弊害があることも事実として判明しているというわけです。キエウラ博士が学生だったころ、メモをとることで講義の内容に集中できないことを問題視した教授が、講義中は「メモ一切禁止」というルールを掲げたことがあったとのこと。そのかわりに、その講義の内容をまとめたレジュメが配布されたとのことなのですが、メモの効果と弊害を相殺するためには、このような対策をとるというのも効果的と言えるのかもしれません。

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