「危険なレベルでの天候変化が数十年以内に起きる」と科学者が警告

By Jussi Ollila

地球規模の温暖化の進行が叫ばれて久しく経ちますが、従来の常識を覆す学説が新たに発表されました。その学説によると、危険なレベルでの天候変化の進行スピードが従来とは比較的にならないほど速く、最悪のシナリオをたどると今後50年以内に海面が大きく上昇し、海に隣接する大都市でも人間が住めなくなる状況が起こるとされています。

Scientists Warn of Perilous Climate Shift Within Decades, Not Centuries - The New York Times
http://www.nytimes.com/2016/03/23/science/global-warming-sea-level-carbon-dioxide-emissions.html?_r=0

この説を発表したのは、気候科学の第一人者で、かつてNASAの気候科学者でもあったジェームス・ハンセン博士とその研究チームです。研究チームが(PDF)発表した論文はすでにドラフト版が2015年に発表されて議論を巻き起こしていたのですが、今回の正式版が発表されたことで議論が再発することも予測されています。

論文の中で研究チームは、気候シミュレーションの結果や過去の気候変動を研究する古気候学の調査、そして現在進行中の南極及び北極圏のグリーンランドにおける氷床の質量減少などのデータを用いることで今後の気候変動を予測。現在のペースで化石燃料を使い続け、温室効果ガスを排出し続けると、人類は今後、厳しい気候の変動に直面することになると指摘しています。ハンセン博士はニューヨーク・タイムズの取材に対して「我々は今、人の手に負えない状況を若い人たちに与えようとしています」と、将来にわたる危機的な状況を生みだしつつあることを語っています。

論文では、陸地の氷が海に流れ出して「真水」が海水に混ざることで、南極やグリーンランドの氷床が崩壊する速度が上がってしまうというフィードバックの発生が気候変動のメカニズムに大きな影響を与えると述べられています。これは、海上に浮かぶ氷山などが溶けるのではなく、陸地の上に載っている氷が溶け出すことによって気候の変動が生じるというもので、「氷山は海に浮いているから溶けても海面は上昇しない」という理論とは全く異なるもの。真水が海に流れ出すことで氷床崩壊のフィードバックが加速度的に生じて海水量が文字どおり増加すること、そして極域と赤道付近の海水の温度差が大きくなることで、有史以来人類が直面したことがないレベルの強力な台風が発生する危険があると述べられています。

By Oregon State University

論文によると、まず氷床が溶けることで南極とグリーンランドの海水面に真水の層が生じます。次にこの層が海流に影響を及ぼし、海水が地球を大きく周回する流れを遅くさせ、場合によっては流れの一部を止めてしまうことになる可能性があります。この海流は地球の熱を大きく移動させ、一部を宇宙へと放出する役目を持っているのですが、海流が弱まる(または停止する)ことで熱のマネジメントにアンバランスが生じ、海水温が上昇。さらにこの海水温の上昇により氷床の溶解がさらに促進され、熱エネルギーが地球にとどまり続けるという正のフィードバックが生じる現象が起こり得るとしています。


さらに、これにより生じる気候の変動スピードは従来想定されていたものよりも速いスピードで進行する可能性が指摘されています。2009年に開催された第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では、「産業革命以前と比べて気温上昇をセ氏2度以内に抑える」という目標が掲げられ、合意されましたが、2015年時点で気温はすでに1度上昇しています。論文では、現在よりもわずかに気温が高かったと考えられている12万年前にあった温暖期のピークの時代を調査したところ、現在よりも海水面が6メートルから9メートル高いレベルだったことが判明しているのですが、地球はそのレベルに近づきつつあると指摘。さらに、その状況に達するまでの時間は従来考えられていた「一世紀レベル」ではなく、最悪のシナリオをたどれば半分の50年規模で進む危険があるとされています。

この論文で語られている理論に対しては、過去の地球で起こった気候の変動メカニズムのパズルを解明するものである、と評価する声がある一方で、この理論に賛同しかねる科学者も存在しています。ペンシルベニア大学の気候科学者、マイケル・マン教授は「この論文の中のいくつかの主張は、実に桁外れなものです。これらは、現在の気候変動についての理解と衝突するものです」と、論文の内容について語っています。

このように賛成・反対両面からの意見が存在しているとはいえ、事実上全ての科学者が賛同しているとみられるのが、「重大な危険を引き起こすであろう温室効果ガスの排出を減らすための取り組みを十分に素早く実施していない」という点にあるとのこと。論文に対して慎重な見方を示しているマン教授もそんな状況に対し、「われわれは、危険を知りながらハンセン教授の考えを見て見ぬ振りをするのでしょう」と語っています。

By NASA Goddard Space Flight Center

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in サイエンス, Posted by logx_tm