キーボードの文字配列はどうして「QWERTY」なのか?

By Sarah

ベーシックなキーボード配列といえばQWERTY配列ですが、キーボードに初めて触った際に「なぜこんな奇妙な配列なんだ?」と疑問を抱いた人も多いはず。その起源がどこにあるのかをHackadayが探っています。

The Origin of QWERTY | Hackaday
http://hackaday.com/2016/03/15/the-origin-of-qwerty/

◆キーボードの親「タイプライター」の誕生
キーボード配列の創案はタイプライターから来ています。このタイプライターは1人の人間が発明したものではなく、多くの人々が発明・改良を加える中で現在のカタチに進歩していったものと考えられています。そんなタイプライターの初期の発明家として知られているのが、イギリスのヘンリー・ミル。彼は1714年に「文字をきれいかつ正確にひとつずつ銘記もしくは転写する、調停や公文書を書く際に便利なもの」として、タイプライターの特許を取得しています。この装置に関する情報はほとんど残っていないのですが、これはインクで文字を転写するものではなかった模様。ただし、ミルのタイプライターが開発された時点では、タイプライターでインクの代わりに使用されることもあったカーボン紙が発明されていませんでした。

カーボン紙を用いたタイプライターが初めて言及されたのは、1867年6月にアメリカの科学雑誌であるサイエンティフィック・アメリカンに掲載されたジョン・プラットの発明したものです。このタイプライターは文字盤を押すとハンマーが降りて、紙に1文字ずつ文字を押していくことができるというものでした。プラットの発明したタイプライターは、現在のキーボードのようにキーが少しずつずらして配置されているものとは異なり、文字が縦横にきれいに並べられたものになっていたそうです。

サイエンティフィック・アメリカンに掲載されたタイプライターに関する記述。プラットの発明したタイプライターは「ペットロタイプ」と呼ばれるもので、キーの数は17個だった模様。


1つの文字当たり1つのキーが配置された初のタイプライターを開発したのがデンマークのラスマス・マリング・ハンセン。彼が1865年に発明したタイプライターは「マリング・ハンセン・ライティングボール」と呼ばれています。このタイプライターはドーム型の形状で、そこから入力用のキーが伸びているという奇妙な見た目をしていました。このキーを押すと、中でハンマーが降りて紙に文字が印字できるようになっています。

しかし、「マリング・ハンセン・ライティングボール」はタイプしながら文字をチェックすることができず、キーの配置もランダムなものではありませんでした。文字の配置は頻繁に使用されるものを最も早く押せる指の下に配置するというもので、それに習って他のキー配置も決定された模様。

マリング・ハンセン・ライティングボールの実物はこんな見た目です。


なお、マリング・ハンセン・ライティングボールは「手書きよりも素早く文字を印字できる初のタイプライター」であったそうです。

◆ショールズのタイプライター
そして、世界で最初に商業的に成功したタイプライターを開発したのはクリストファー・レイサム・ショールズらです。

ショールズたちは1846年に発明された印刷電信を基にタイプライターを設計しました。印刷電信ではピアノスタイルのキーボードが採用され、各鍵盤にはどの文字の鍵盤かを示すためのアルファベットが彫られています。


よって、ショールズが最初に開発したタイプライターでも印刷電信のキーボードが採用されました。このタイプライターは特許(7868号)を取得しますが、商業的には成功しませんでした。

ショールズが最初に開発したタイプライターのキー配置。


ピアノスタイルのキー配置を諦めたショールズが1870年に開発したタイプライターは、大文字のアルファベット、2~9の数字、ハイフン、コンマ、ピリオド、クエスチョンマークというキーを配置しており、一見、現代のキーボードによく似たキー配置になっています。これらのキー配置は基本的にはアルファベット順になっていますが、母音が文字列の1番上に配されているのが特徴です。


ショールズはタイプライタービジネスからすぐに手を引くつもりだったそうですが、ジョージ・ハリントンとダニエル・H・クレイグのAmerican Telegraph Worksがショールズのタイプライターを購入したいと話をもちかけます。しかし、その時点ではタイプライターが製造されていなかったため、キー配置にいくつかの変更が加えられることとなります。

◆QWERTYの始まり
ここからQWERTY配列のキーが誕生します。QWERTY配列はモールス符号のためにデザインされたもので、キーボードのホームポジションに頻繁に使用する文字を配置したものだそうです。ただし、QWERTY配列が誕生する19世紀のアメリカでは、モールス符号が現在のモールス符号とは異なる使われ方をしていました。

当時のアメリカのモールス符号は現在の国際基準とは微妙に異なり、「Y」を「・・ ・・(トントン、スペース、トントン)」、「Z」は「・・・ ・(トントントン、スペース、トン)」とされており、「Z」が最初の文字の場合「SE」と混同されたそうです。ここから、QWERTY配列では「Z」「S」「E」の3つが近くに配置されることとなりました。そして、「・・ ・(トントン、スペース、トン)」で表された「C」も、混同されやすい「S」「E」の近くに配置されます。なお、いくつかの文字を混同しやすい、ということでアメリカ式のモールス符号は使われなくなっていきます。

これらの改良を加えたキー配列のタイプライターが1872年8月10日にサイエンティフィック・アメリカンに掲載されます。そのキー配列は以下の通りで、横一列で「QWE.TY」の文字が並んでおり、現在のキー配列に非常に近いものになっているのがわかります。ただし、「M」が「N」の隣になく、「C」と「X」が現在のQWERTY配列とは異なっているのが特徴です。なお、これがタイプライターとしては初めて商業的に成功したため、キー配列の基礎となっていきます。


その後、ショールズと他の開発者たちは、当時ミシン製造で知られていたレミントン・アームズにコンタクトをとってタイプライターの製造を依頼します。レミントンは契約にサインし、1873年に同社としては初めてのタイプライターである「Sholes&Glidden Type-Writer」を製造します。なお、この時ショールズはタイプライターの特許を1万2000ドルでDensmore and Yostに販売してしまいます。

なお、この「Sholes&Glidden Type-Writer」では「O」と「I」の文字が「9」のキーの近くに配置されることになり、ショールズの要求により「Y」が「T」の隣にくるよう配置が変更されました。さらに1878年には、バイロン・オールデン・ブルックスが「プラテンシフト機構」を発明します。これは1つのキーで2種類の文字を入力可能にする機構で、レミントンはこれを採用したタイプライターを1882年にリリースします。

このタイプライターでは「2」の配置が大きく変わり、「M」が「N」の隣にやってきました。


つまり、QWERTY配列はタイプライターがジャミング(アームの絡まり)しないように設計されたものでも、「QWERTY」というブランド名のために作られた配列でもなく、初期のタイプライターユーザーであったモールス信号のオペレーターたちのために設計されたものでした。なお、当時の速記者がタイプライターを使用した場合、1分間で100単語以上を記録できる猛者もいたそうです。

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