マインクラフトに人工知能を搭載するMicrosoft公式プロジェクト「Project AIX」


2014年9月にマインクラフトを買収したMicrosoftは、自由な発想でゲームを楽しめるマインクラフトが人工知能の研究の場として最適だと考え、人工知能の研究者とアマチュアの愛好家向けに、マインクラフトを使って人工知能の研究を行うためのプラットフォームを2016年夏に公開すると発表しました。

Project AIX: Using Minecraft to build more intelligent technology - Next at Microsoft
http://blogs.microsoft.com/next/2016/03/13/project-aix-using-minecraft-build-intelligent-technology/


Minecraft to run artificial intelligence experiments - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-35778288


ニューヨークにあるMicrosoftの研究所では、マインクラフトを使った人工知能の研究が行われています。研究員はマインクラフトのゲーム内でキャラクターに丘を登らせようとしていて、これはマインクラフトの操作としては非常に簡単なものですが、研究チームでは人工知能に自己学習能力を搭載させて、人工知能がマインクラフトのバーチャル世界の中で一番高い場所に登れるようにプログラミングしています。

この研究は、人工知能が全く新しい環境下でどんな行動を取るべきかすら分かっていない状況に置かれた際のシミュレーションとして行われており、人工知能はまず周りの状況を理解し、重要な情報(丘を登ること)と、重要度の低い情報(周囲が明るいか暗いかなど)を区別します。人工知能の学習の過程では多くのトライ&エラーが発生していて、例えば川に落ちたり、溶岩に突っ込んだりするといった失敗を踏んで、人工知能が徐々にゲームの目標を学習していくとのこと。研究所のリーダーであるFernando Diaz氏は、「我々は、人工知能に単純なタスクをこなすためのプログラムではなく、自己学習能力をプログラミングしています」と語ります。

以下の写真に写っているのが、Microsoftニューヨーク研究所の研究員たち。


人工知能の自己学習能力の研究は、Microsoftのケンブリッジ研究所で開発された「AIX」というプラットフォームを使って行われています。AIXは人工知能の性能向上のために作られたソフトウェアで、マインクラフトを使って人工知能の自己学習能力をテストしています。AIXの開発者の1人であるKatja Hofmann氏は、以前は人工知能の研究のために別のプラットフォームを使っていたのですが、プラットフォームによってさまざまな制約があり、もっと自由に研究したいと考えてAIXのアイデアを思い付いたそうです。

Hofmann氏によれば、マインクラフトは人工知能の研究にピッタリだそうで、理由として、「マインクラフトは他のゲームと違って、無限の可能性があります。宝箱を探すような簡単なタスクから、ユーザー同士で協力して建物を作るといった難しいタスクまで、さまざまなタスクを行えます」とHofmann氏は語っています。また、サバイバルモードや建築を競うモードで友達と戦ったり、自分で目標を設定してプレイしたりすることもできるため、人工知能が既存の能力の枠を超えて学習するために、マインクラフトはちょうどよいゲームとのこと。

実際にAIXを使って人工知能にマインクラフトをプレイさせているデモ画面は以下のような感じ。


ゲーム画面の隅に表示されたウィンドウを使い、「人工知能がどのような判断を行ってゲームを進めているのか」を見ることができます。


また、マインクラフトを活用した人工知能の研究では、AIXを使うだけでなく、実際に研究員自身がマインクラフトをプレイすることも。


人工知能に単純なタスクを実行させるプログラミング技術は、近年急速に発達しており、Google翻訳のようにコンピューターが言語を翻訳したり、Siriのように言葉を話したり、画像の説明文を自動的に生成したりといったタスクが可能となっています。しかし、研究者が「一般的知能」と呼んでいる分野はまだあまり開発が進んでいません。一般的知能は、人間が学習したり物事を決めたりする複雑な意思決定タスクと似ています。Microsoftニューヨーク研究所のRobert Schapire氏は、「音や光、におい、触感などを知覚するのは人間にとっては簡単ですが、人工知能には非常に難しいタスクです」と語ります。Hofmann氏は、人間がどのように複数のタスクを組み合わせているかという仕組みの全貌がいまだに解明されていないため、コンピューターに人間と同じようなタスクを実行させることが難しい、と考えています。

これまで、人工知能の理論的研究を実世界で実行することはシステム面やコスト面で困難でした。しかし、マインクラフトを使えば、バーチャルの世界でコンピューターに丘を登らせるなどのタスクを実行させることができ、ロボットの開発費や修理費用が一切不要のため低コストで研究を行うことができます。難しいタスクを次々と追加していくことも可能で、さらにはユーザー同士で助け合ってゲームを進めることもできるため、研究チームでは、今後は人間と人工知能が共同で作業を行うという実験も進める予定とのこと。

Microsoftニューヨーク研究所のAIXとマインクラフトを使ったプロジェクトの目標は、「Microsoftの研究チームだけでなく、外部の人工知能研究コミュニティも使えるような、人工知能研究のためのプラットフォームを作り上げること」とHofmann氏は語っています。記事作成時点ではMicrosoftの研究者がプライベートベータ版を作っており、2016年夏にオープンソースとして公開される予定となっています。

なお、同じようにゲームに人工知能を搭載するプロジェクトとして、以前にはマリオに人工知能を搭載して自己学習させるという研究が行われています。

マリオが自己学習し感情さえも持つ人工知能のプロジェクトとは? - GIGAZINE

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in ソフトウェア,  ゲーム, Posted by darkhorse_log