高校生を監視し政府に批判的な言動をすると教師に密告させるスパイ計画が発覚

by Edwin Setiawan

FBIが新しいガイドラインに基づきアメリカ中の高校に「政府の方針に批判的で将来的にテロリストになる可能性のある生徒」を報告するような指導を行っていることがわかりました。特に貧困状態にある子どもや移民の子ども、テロと深い関わりがある国に旅行した子どもなどに注意を払っているようです。

The FBI has a new plan to spy on high school kids across the country - Salon.com
http://www.salon.com/2016/03/06/the_fbi_has_a_new_plan_to_spy_on_high_school_kids_across_the_country_partner/

Preventing Violent Extremism in Schoolsというガイドラインは2016年1月に施行されたもの。「子どもを守るため」という名目で、政治的に危険な発言をしていたり社会経済的に孤立している子どもも対象にしていますが、「ムスリム・コミュニティを監視するものとして機能する」として懸念が寄せられています。

公開された資料によると、「高校は過激派にとって自分たちのイデオロギーに賛同し、暴力を人々に伝えるための海外戦士をリクルートする理想的な場所」であり、若者は本質的に危険因子を持っているとのこと。ガイドラインに従い、高校教師たちは過激派について注意を促す授業を9~12年生の生徒に対して行うよう指示されました。

生徒たちに向けて作られた教材の中には「暴力に関わろうと計画している」兆候として、「疑わしい場所に旅行する話をしている」「普通でない言葉を話したり、暗号を使っている」「携帯電話を複数台持っていたり、私的なメッセージアプリを利用している」「政府の建物といった特定のターゲットについて勉強していたり写真を撮っている」というものが挙げられ、イラスト付で説明されました。

教材の中では「過激派のアナーキストは社会にとって政府・法律・警察などは不要だと考えており、中心となるリーダーは不在で緩やかに組織されています。暴力的な過激派アナーキストのターゲットは通常、大企業・政府・警察など社会に大きな影響を及ぼすと考えられる資本主義のシンボルとなるものです」などと説明されています。政府に対して不信を抱いている人や「退廃した西洋諸国」といった批判を行う団体に対して注意するように呼びかけると共に、「動物の権利や環境に関する過激派」や「過激派の白人至上主義」についても、テロリストと並んで高校生をリクルートする可能性があるものとして挙げられているとのこと。そして、もし暴力的な過激派と見られる行動を目にした時は、地元の法執行機関や警察、FBIを含んだ「信頼する人」に相談するように、と呼びかけました。

by Karin Willet

FBIのガイドラインは一見すると一般的な「危険」を高校生に対して警告したもので、ムスリムの学生をターゲットにしたものには見えません。しかし、注意深く見ていくと、FBIは常にイスラムの脅威を名前として挙げており、文化と宗教の違いを「未来の過激派」の因子として繰り返しつづっていることがわかります。

The Muslims Are Coming!」という本の作者であるArun Kundnaniさんは「この文書は高校に対し、過激派に向かうサインを出している生徒たちをもっと監視するよう呼びかけるものですが、『過激派』の定義は曖昧です。『過激派のモデル』として書かれているものもめちゃくちゃですし、正当なイデオロギーの表現と暴力的な批判行動の違いも書かれていません」とコメント。Kundnaniさんは、資料があいまいであるため、ムスリムの学生がテロリズムと関係のない宗教や政治に関心を抱いていても疑念を持たれる可能性があり、最終的にはムスリムの生徒を監視するためのガイドラインとして機能しかねないと懸念を抱いています。

過去にオバマ大統領が導入したCountering Violent Extremism(CVE/暴力的過激主義対策)というプログラムは「ムスリム・コミュニティを監視するものだ」として議論の的となってきた一方で、欧米諸国で広まりを見せています。特にテロの被害にあったイギリスの公立高校では「過激派のサインが見られる生徒」を報告するよう指示されているのですが、プログラムの一環で、親の同意なしで子どもに対する尋問が行われることも多いとのこと。中には「パレスチナに自由を」というバッジを付けているだけで警察が子どもを呼び止めるケースも存在するそうです。

by Tanya Reihill | Flickr - Photo Sharing!

当然、ムスリムのコミュニティはCVEに反感を示しており、「政府は我々のコミュニティを非難し、社会から孤立させるだけのプログラムをやめるべきだ」と主張しているのですが、Preventing Violent Extremism in SchoolsというFBIガイドラインを導入させることで政府はCVEの範囲をより拡大しようとしているものと見られています。

「宗教的な行動」と「政治批判」によって過激派かどうかを測るという行為の歴史は、アメリカではベトナム反戦運動を制圧したFBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーの時代にまでさかのぼります。英雄としてもてはやされたフーヴァーは死後に評価が一転し、現在では諜報活動・恐喝・政治的迫害を行ったとして非難されています。しかし、9.11以降、フーヴァーの用いていた手法がニューヨーク市警からFBIに至るまで、多くの法執行機関によってとられているわけです。

新しいガイドラインについて「当局は心理的、あるいは人口統計学的なプロファイルや、どの生徒が過激派に走る傾向にあるか、という指標を求めていない」と説明していますが、一方でFBIは「懸念される行動」を資料内でリスト化しているわけなので、「懸念される行動」に従って指導が行われた結果、FBIは「将来的にテロリストになる可能性がある生徒」の識別にガイドラインを利用していると言えます。

American Civil Liberties Union(アメリカ自由人権協会)のHugh Handeysideさんは、「暴力的な過激派の定義に『宗教上の理由に基づく暴力』を含めることは、FBIがコミュニティの監視に力を入れていることに他なりません。『懸念される行為』を示したことは、FBIが生徒の考えを監視し、これらの考えによって引き起こされる未来を予測しようとしているということを表しています」と語りました。

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