脳内神経物質「ドーパミン」が人々をより衝動的にする仕組み


人間の性格にはいろいろなタイプがあり、我慢強い人から短気で衝動的な反応を示す人までさまざまな種類があります。特に衝動的な反応を示す人の場合には、脳内で起こるドーパミンの働きが重要な意味を持っているといわれています。

Why Dopamine Makes People More Impulsive - Knowing Neurons
http://knowingneurons.com/2016/03/10/dopamine-makes-people-impulsive/

これまでにもドーパミンは脳の報酬系において重要な役割を果たしていることが知られてきました。これは、欲求が満たされたときに快感を感じる脳の働きの一つであり、この快感が決断や行動を判断する際において大きな役割を果たしていると考えられています。

しかし同時に、ドーパミンがもたらす別の影響についても理解が進んでいます。ドーパミンのレベルが増加した状態の人には性格が衝動的になるという現象が存在しおり、これはパーキンソン病を患っている人の間で多く見られる特徴の一つであるとのこと。パーキンソン病患者がギャンブルやショッピング、または食事などの行動に対して衝動的な反応を見せることがよく見られています。また、これはアルコールやコカインなどの中毒患者にも見られる症状で、脳内でドーパミンが多く放出されることで衝動的な行動を起こす傾向が確認されています。

ドーパミンの働きにおいて重要な脳の部位が、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)と呼ばれる部分です。この部位にはドーパミンの働きに関わるニューロンが集まっており、脳の報酬系を形づくっている一部であると考えられています。


以下のグラフは、サルの脳内の活動を電気的に記録したもの。「REWARD(報酬)」のタイミングでフルーツを与えられたサルの脳内では、腹側被蓋野のドーパミン関連のニューロンがスパイク(突発的な電気パルス)を多く発しており、報酬系の働きが活発化していることがわかります。


この反応は、実際の報酬に関連する刺激が与えられた際にも生じるとのこと。以下のグラフでは、実際の報酬に関連づけておいたある音を聞かせたときの反応を示したものですが、サルの脳ではその音を聞いたときにスパイクが多く発生しており、「音=フルーツがもらえる」という報酬系による快感が実際の報酬よりも前の段階で生じていることがわかります。


報酬に関連づけられた刺激によってスパイクが起こることがわかったのですが、一方で、刺激と実際の報酬の時間が長く開くと、その反応が弱くなることがわかっています。以下のグラフは同様の実験を行った際に、刺激から2秒後、4秒後、8秒後に報酬を与えた時の反応を示したものですが、刺激から8秒後の報酬に慣らされたサルのグループ(下図"8s delay")では、音による刺激を与えられても反応を示していないことがわかります。


これは、「遅延報酬による価値割引」と呼ばれるもので、刺激から報酬までの時間が長くなることにより、報酬による快感が弱くなるという現象。そして、この価値割引の感じ方は、その人ごとの我慢強さのレベルによって左右されています。

以下のグラフは、人間に対して「今すぐ20ドルもらうか、または6か月後に40ドルもらうか、どちらが良いか?」という問いを行った際の反応を図式化したもの。単純化されたグラフではありますが、ここでは、Patient(我慢強い)、Average(平均的)、Impulsive(衝動的)な3つのタイプの性格(Personality Type)によってそれぞれの反応が大きく異なっていることがわかります。Patientな人は長時間後の報酬に対しても大きな価値があると判断する一方で、Impulsiveな人は待ちきれないので、金額が少なくてもいいので今すぐ報酬をもらいたい、という反応を示しているというわけです。


そしてこの傾向は、ドーパミンの放出と関連があることがわかっています。以下のグラフは、体内でドーパミンを生みだすL-DOPAを投与した被験者と、偽薬(プラセボ)を与えられた被験者の間で、遅延割引がどのように発生するかを示したものなのですが、L-DOPAを与えられた被験者、つまりドーパミンが多く放出されている被験者のほうが、遅延割引が多く発生しており、すなわち衝動的な反応を見せる傾向にあることがわかっています。

ドーパミンの働きで重要な役割を果たしているのが、ドーパミンと結合することで脳の反応を促すD2受容体と呼ばれる神経伝達物質です。

D2受容体はドーパミンと結合することで抑制性作用を促す働きを持っています。衝動的な人の脳では、正常な人の脳にくらべてD2受容体の働きが弱いため、脳の衝動を抑制させる働きが弱くなり、結果的に衝動的な感情や行動を起こすことになります。また、ドーパミンの放出が正常な人に比べて多い場合にも同様の反応が起こるとのこと。また、サイコパスな人にも同様の兆候が見られるとのことです。

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in サイエンス, Posted by logx_tm