極小サイズの光るナノ粒子「ナノライト」が医療・技術・生活など世の中を変える将来

By PlasmaChem

特定の波長の光エネルギーを吸収し、再び放出することで血管で穴の開いた箇所を映し出したり、テレビ画面の蛍光体となったり、さらにはガンなどの病気を検知することも可能にする可能性を秘めた「ナノライト(nanolight)」が今後の世の中を変えるかもしれません。大きさ数ナノメートルという、ウィルスほどの大きさしかない小さな物質には多くの可能性が秘められているようです。

The nanolight revolution is coming : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/the-nanolight-revolution-is-coming-1.19482

シンガポールにある国際的なバイオメディカル分野の研究開発拠点であるバイオポリスでは、麻酔をかけたマウスの血管に、明るい黄色の特殊な溶液を注射する実験が行われていました。実験を進める博士論文提出志願者(Ph.D candidate)であるChi Ching Goh氏は、紫外線を照射する機器の中にマウスを置き、顕微鏡でマウスの耳の部分を観察します。そして紫外線照射のスイッチをオンにすると、マウスの耳の血管を流れる血液が緑色に光り、細かく張り巡らされた血管の中を血流が流れる様子を克明に映し出すことに成功しました。

この観察は、大きさわずか数十ナノメートルという、病原体ウィルスとほぼ同じ大きさの物質「ナノライト」を混ぜた溶液を血管に注射したことで可能になったものです。このナノライトは、X線を遮ることで影を作って血管を見やすくする造影剤とは異なり、特定の波長の光を吸収し、別の波長の光を放つという特徴を備えていることから、医療の現場でも大きな可能性に期待する見方が広がっている物質です。

ナノライトに似た物質は、例えば自ら光を放つクラゲや、レアアースの化合物などにも見られますが、これらの物質に比べてナノライトは安定して光を発することができる特徴を備えているとのこと。また、種類が豊富で作成も比較的容易であることから、産業分野や学術分野から注目されるようになっています。

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ナノライトは複数の種類があり、その例の一つが半導体物質の中に作られることがある量子ドットと呼ばれるもの。これは、物質中の電子が特殊な状況にあるものを指す言葉で、鮮やかな光を放つことで知られています。また、最近になって別の新たなナノライトが知られるようになったとのこと。その中には、低エネルギーの光子をたくさん吸収し、そのエネルギーを合体させることで高エネルギーの光子へと変換するものや、ポリマー状や小さな有機分子で構成されているものもあり、これらは量子ドットに比べて動物に対する毒性が低いという特性を備えていることから、医療分野などへの転用が期待されています。

前出のGoh氏が用いる蛍光物質を作成するシンガポール国立大学の技師、Bin Liu氏は「無機物よりも明るく光る有機物を作成できることがわかり、私は驚いています」と、新しいナノライトの有用性について語っています。ナノライトの活用性は以下のような大型のフラットディスプレイをはじめ、医療分野、さらにはソーラーエネルギー分野、DNAマッピング、モーションセンシングや、手術技術への転用も期待されているとのこと。


ナノライトが注目されるようになったのは、1981年に量子ドットが発見された時にさかのぼります。ソ連の科学者がケイ酸塩ガラスの上で塩化第一銅の結晶を作成していたときに、ガラスの色がその粒子の大きさによって決められていることを発見しました。これは、結晶のサイズが小さいあまりに量子力学の影響を受けるに至り、原子と同じような挙動を見せるようになったことで、特定の波長の光を吸収、放出できるようになったというもの。このことから、発する光の色は粒子の大きさによって左右されることとなっています。


ナノライトは現在も研究が進んでいる分野で、さまざまな特性を持つものや、新たな作成手法などが明らかになっている状態とのこと。今後は作成方法の確立と発光性能の高効率化が新たな目標とされており、これらが実用化されると医療技術の発展はもとより、スマートフォンや自動運転カー、さらには高齢の家族の健康モニタリングなどにも活用が期待されるとのこと。今後の技術に注目するとき、「ナノライト」というキーワードは覚えておく価値があるようです。

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in サイエンス, Posted by logx_tm