犯罪者自身のせいではなく「脳が犯罪を起こさせた」として罪状軽減を目指す行動遺伝学

by houstondwiPhotos mp

犯罪における神経科学の役割についての議論が2011年ごろに活発化してから、「脳の異常や機能不全が犯罪の動機や行動特性にどのような影響を与えるか」や、「モノアミン酸化酵素などの遺伝子変異体と暴力的な振る舞いの関係」などについて、科学者が研究を進めてきました。裁判に神経科学的証拠が使われるなど、神経科学が徐々に刑事司法制度に取り込まれ始めている中、デューク大学で法学・哲学を教えるNita Farahany教授は、行動遺伝学を活用して殺人事件などの被告人の刑罰を軽減できるのではないか、と研究を行っています。

Neuroscience and behavioral genetics in US criminal law: an empirical analysis
http://jlb.oxfordjournals.org/content/2/3/485.full

My brain made me do it: Neuroscience and behavioral genetics in court | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/03/my-brain-made-me-do-it-neuroscience-and-behavioral-genetics-in-court/


Nita Farahany教授は、神経科学が裁判に使われることで結果的に何が起こるのか、について系統学的な研究を行っています。アメリカ国内で2005年から2012年の間に起こった1万例以上の刑事事件を分析したFarahany教授は、神経生物学的証拠が使われた事件が1585件あったことを突き止めました。2005年にはおよそ100件だったものが、2012年には250件に増加しており、刑事裁判の被告人に対して神経科学・行動遺伝学的な判断を行う傾向が強まっていることを示しています。


神経科学的証拠が使われた刑事事件の内容は、重大な殺人事件や、麻薬犯罪、性的暴行、強盗、詐欺など犯罪の種類は多岐にわたっています。


Farahany教授は、学術的または科学的に容認されていない証拠が使われていることも突き止めました。また、裁判にMRIやCTなどで撮影した脳のスキャン写真が使われるケースは全体の15%にとどまっていて、刑事事件で見てみると神経学的証拠が使われない裁判が40%以上あるとのこと。Farahany教授によれば、1585件のうち約44%の事件で、量刑を軽減するために神経生物学的証拠を使用していたことが判明。これらのうち、被告人が「以前は弁護士が神経科学的証拠を使用してくれなかった」と主張しているケースが約半数も存在することも判明しました。

20~30%の被告人が神経科学的証拠を使って罪を軽くすることに成功していますが、逆に言えば70%以上のケースで神経科学的証拠の活用に失敗していることを意味しています。Farahany教授は、「神経科学と行動遺伝学は、人間の平均的な行動を分析することはできますが、個人がなぜ行動を起こしたのかを分析することは難しいことが分かります」と語っています。

なお、Farahany教授は神経科学学会に向けて、「刑事事件の証拠として神経科学が使われるケースが増える傾向にあるため、科学者は責任をもって刑事司法制度に協力し、優れた裁判官、弁護士、陪審員を育てるべき」と呼びかけています。

by Levi

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log