なぜ中国の指導者はエンジニアリングの学位を持ち、アメリカの指導者は法律の学位を持っているのか?

by Philip Jägenstedt

同じ政治家であってもアメリカの場合は法律の学位を持っていることが多く、中国の場合はエンジニアリングの学位を持っていることが多い、と国によって学歴に差異があります。「なぜこのような差異が生まれるのかは、国がたどってきた歴史にある」と中国の検索エンジンBaiduのインターナショナルコミュニケーション部代表でありライターのKaiser Kuoさんがつづっています。

Why do Chinese political leaders have engineering degrees whereas their American counterparts have law degrees? - Quora
https://www.quora.com/Why-do-Chinese-political-leaders-have-engineering-degrees-whereas-their-American-counterparts-have-law-degrees

1990年に発表された「エリートの変容と近年における中国・台湾の変化」という論文では、中国における人口100万人以上の都市の市長・知事などを調査した結果、80%以上が自然科学やエンジニアリングについて4年制の大学に通ったか、それ以上の経歴を持つテクノクラートだったことが明らかにされました。論文の中では中国の政治的エリートにおいて、高度な科学技術の専門知識を持ったテクノクラートがいかに多いか、ということが語られています。

この傾向は1980年代初頭から始まった「新権威主義」「ソフト権威主義」と呼ばれるものの一環としても見られ、専門知識を持った多くの政治的エリートが中国の高度経済成長を促してきたと考えられてきました。

なぜこのような傾向が生まれたのかという理由は、近代の中国の成り立ちにあります。1961年から1965年にかけて毛沢東が失墜した後、鄧小平はイデオロギー主義的な官僚や裕福な家庭に生まれたが故に政治家になり、政治の世界で幅をきかせる官僚を減らし、「専門家」を増やそうと働きかけました。そして、政治的思想と専門的技術の双方が重視された結果、1980年代には物理学者でありながら民主運動家でもあり六四天安門事件の首謀者として拘束された方励之や、「中国宇宙開発の父」よ呼ばれる航空力学研究者の銭学森など、テクノクラート的発想を持った知識人が数多く登場し、中国共産党に対して批判を繰り広げることに。銭氏が「経済的・社会的・政治的な問題であっても、政府はエンジニアリング的アプローチで問題を解決すべきだ」と語っていることからも、いかに現代中国で技術者的発想が浸透しているかがわかります。

by Zach Dischner

また、歴史的に見ても、技術者と政治が結びつく土台が存在します。古代中国で孟子は「頭脳労働者に肉体労働者を統治させよ」という言葉を残していますが、彼が生きていた殷王朝は死者と会話することができるという僧侶が権力を持ち、テクノロジーといえば青銅を鋳ることぐらいでした。その後、漢朝から清朝の官僚制度の中では儒家の始祖である孔子の教えと公務員試験に通ることが政治家の最重要事項とされていましたが、20世紀初頭には公務員試験制度が終わりを迎え、旧体制が打倒されて「科学的事実」が重視されるようになり、知識階級によってそれまで「事実」とされてきた儒教が否定されることとなります。しばしば科学的社会主義と呼ばれるマルクス主義が中国に大きな影響を与えたのもこのためである、とKuoさん。

一方、アメリカ合衆国建国の父の中でも影響力の強かったジョン・アダムズが弁護士であり、もう一人の建国の父ジェームズ・マディソンが弁護士になろうとしていたように、建国以来、アメリカのDNAには法律が組み込まれています。このことからも、アメリカの政治がチェックアンドバランスや法の支配といったコンセプトの上に成り立っているのは極めて自然なことに見える、とKuoさんは語っています。

by North Charleston

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