「宇宙食用アイスクリーム」は実はウソだった

by omgponies2

乾燥させたマシュマロのような「宇宙食用アイスクリーム」がテーマパークや宇宙関係の機関でお土産として販売されているのを見かけますが、実際のところ、宇宙食用アイスクリームが宇宙に持って行かれたことはなく、宇宙飛行士たちが食べていなかったことが判明しました。

これが「宇宙食用」とされるアイスクリームのパッケージ。Amazonではバニラ味のものが1つ税込648円で販売されていました。

中はこんな感じ。

この宇宙食用アイスクリームは実は宇宙で食べられていなかった、という衝撃的な真相が以下のムービーで明らかにされています。

Astronaut ice cream is a lie - YouTube


ムービーは宇宙食用アイスクリームを食べた人の感想からスタート。「歯が折れそうなほど固い！」というコメントや……

「薬っぽい味」

ラッキーチャームというシリアルに入っているマシュマロっぽい、という意見もありました。

しかし、テーマパークや宇宙関連の施設で「宇宙で食べられていたアイスクリーム」として販売されることが多いこの商品は、実際のところ1度も宇宙に持って行かれたことがありません。国立航空宇宙博物館には……

宇宙に持って行かれた食べ物が多く保存されていますが、その中にも宇宙食用アイスクリームは見当たらないとのこと。

チューブ状の食べ物や……

アポロ計画の時代に持って行かれたチョコレートのキューブは保存されています。

博物館の館長であるジェニファー・レバッサーさんは「まるでPEZみたいな容器よね」と当時使われていたアイテムについて語ります。

しかし、アイスクリームについて尋ねると……

「ここにはありません」と一蹴。

宇宙でアイスクリームが食べられていた、話の元となった資料はNASAが発行したもの。

宇宙食の献立の中に「バニラアイスクリーム」の文字があります。

また、1968年の新聞にも「アポロ7号ではバニラアイスクリームが食べられた」という内容の記事が掲載されていました。

しかし、宇宙食用アイスクリームの製造元に連絡を取ってみるも、誰が開発したのかは分からない、という解答。

そこで、今度は実際に宇宙に行った、アポロ7号ミッションの月着陸パイロットだったウォルター・カニンガム氏に連絡を取ります。

アポロ7号は3人の宇宙飛行士の命を奪ったアポロ1号ミッションの後、初めて地球周回低軌道上に人間を載せて送られました。

宇宙ではやることが多く非常に忙しかったため、食事はスケジュール通りに決まったものを食べる、という方式だったそうです。しかし、アイスクリームの話になると、カニンガム氏から「絶対に食べてないよ」という返事が返ってきました。

アポロ7号に関して「理由は分からないけれど広がったウワサ」はアイスクリームだけではありません。アポロ7号ではクルー全員が風邪をひいた、と報じられましたが、実際に風邪をひいたのは1人だけだったそうです。

アポロ7号ではチョコレートプリンなどもメニューとして登場していたため、混同された可能性もあります。

宇宙で食べられていたのはサーモンサラダなど、水を加えて元に戻す乾燥食品が主でした。

また、この時の宇宙飛行士たちは甘い物が嫌いな人が多く、食べ物に関しては宇宙飛行士間でトレードが行われたそうですが、プリンなど甘い食べ物は残りがちだったとのこと。そのため、アイスクリームがメニューにあれば記憶に残るはずです。

ところで、無重力空間では食べ物も破片化して飛び散ってしまうため、いくつか工夫が施されています。例えば、フルーツケーキは内部がジェリー状になっており、破片がぽろぽろこぼれないようになっていました。このことからも、破片化しやすい宇宙食用のアイスクリームが実際に宇宙に持って行かれなかった可能性が高いと言えます。

そして、1973年のミッションでは初めて宇宙船に冷蔵庫が搭載されたとのこと。

これによって宇宙飛行士たちは宇宙食用のアイスクリームではなく、通常のアイスクリームを宇宙で食べられるようになりました。

なお、カニンガム氏はもしもの時のために宇宙服のポケットにベーコンを入れていたとのことなので、宇宙関連の施設に行った際、歴史的に正しいお土産を望むならベーコンをチョイスすると、宇宙飛行士の気持ちを体験させられることになります。