取材

流氷を車窓から眺められる観光列車「流氷ノロッコ号」に乗ってきた


冬の日本海北部・オホーツク海沿岸には流氷が南下してきて陸からも見ることができるので、観光名物の1つとなっています。この流氷を、ゆったり走る列車から眺められるという観光列車が「流氷ノロッコ号」です。運行機材の老朽化、および維持費の問題から廃止の方針が打ち出された列車でもあり、一度は体感しておくべく、乗りに行ってきました。

流氷ノロッコ号2016年運転案内
http://www.jrkushiro.jp/ryuhyou2016/index.html

「流氷ノロッコ号」は釧網本線・網走駅と知床斜里駅との間を走る観光列車で、冬季の約1ヶ月だけ運行されます。車両は1号車が自由席、2号車から5号車は展望車で指定席となっていて、料金は自由席なら乗車券(運賃)の840円だけで乗車可能。指定席券も310円と、かなり安めです。


列車は1日に2往復あるのですが、そのうち網走を10時25分に出る「流氷ノロッコ号1号」なら、バスを挟んで、同じく釧網本線を走る観光列車「SL冬の湿原号」に乗り継ぐことが可能だということがわかったので、まずこの1号に乗ることを決めました。ところが、当日に東京や大阪を出発してこの列車に乗ることは、たとえ朝イチの飛行機に乗ろうとも不可能。札幌近郊に泊まって、新千歳空港を7時30分に出る飛行機で女満別空港へ向かうぐらいなら、現地近くに泊まればいい……ということになりました。

……そんなわけで検討の結果、流氷ノロッコ号で知床斜里→網走→知床斜里と往復するルートを取ることに。朝8時、知床斜里駅に到着。


駅前には斜里バスターミナルがあって、実は札幌から夜行バス「イーグル号」でも来ることが可能でした。とはいえ、朝5時45分に駅前に降ろされても困っていたこと間違いなし。


ここには「ツインクルバス知床号」の案内板も立っていました。前述の、「ノロッコ号1号」から「SL冬の湿原号」への乗り継ぎができるのはこのバスのおかげです。


駅舎の中に入ってみると……


ガラス越しに、すでに入線している「流氷ノロッコ号」の姿が確認できました。


入場の扱い開始は出発の10分前ぐらいからで、ホームにいるのはノロッコ号より1本早い列車で網走方面へ向かう人たちです。


出発まではまだ時間があったので、駅に隣接する駐車場の方へ回ってみると、障害物なしで列車を見ることができました。


小さな駅には不釣り合いにも感じる、5両編成の列車。機関車を入れると6両で、一番後ろの車両はホームから半分はみ出しています。


駅の東側には跨線橋があったので、上ってみると駅構内の全景が見えます。右側にある大きな建物は、駅前にある「ホテルグランティア知床斜里駅前」。


駅と反対方向を見るとこんな感じ。


客車からモクモクと黒い煙が上がっています。これは、車内にダルマストーブが設置されているため。


駅まで戻ってくると、ちょうど網走行きが発車していくところでした。


やがて、改札が始まったので駅へ入場。構内跨線橋を渡り、ノロッコ号の止まっているホームへ。ちょうど、跨線橋の窓からノロッコ号を牽引するDE10 1660を見下ろす形に。


客車は緑色に塗装されています。


「ノロッコ NOROKKO TRAIN」のサイドボード。


1号車は通常の客車で自由席、2号車から5号車は展望車で指定席です。それにしても、塗装のひび割れがすごい……。


車内では車掌さんや係の人がストーブの様子をチェックしていました。


指定席車の内部はこんな感じ、進行方向南側(山側)はボックス席、北側(海側)は窓向きの席になっています。


なお、自由席はオーソドックスなクロスシート車両でした。指定席の方が展望はいいですが座席にクッションがないため、座り心地だけならこちらの方が上かも。


この駅にも「B72」と駅番号が振られています。JR北海道の駅ナンバリングではルートを示すアルファベットが用いられていて、Aは札幌~旭川~網走で用いられているので、釧路~網走間の駅では「B」が用いられています。


人が多く乗り込んでくる前に、5号車まで行ってみました。座席配置は他の展望車と同じ。


最後尾だけちょっと変わっています。


牽引するディーゼル機関車は網走側に連結されるので、網走から知床斜里に戻ってくる時はこの運転台が使われるようです。


3号車の後ろ寄りには販売カウンターがあり、お土産品や飲食物を販売。


アルコール、ソフトドリンク、焼き物、軽食などがあります。


焼き物はダルマストーブの上で炙って食べてOK。するめやじゃがバター、でんぷんだんごなどがあります。


ダルマストーブの上には網があるので、するめは直接置けばいいのですが……


でんぷんだんごなどくっついてしまうものもあるため、ストーブのそばにはアルミホイルが用意されていました。


いよいよノロッコ号、出発です。


「いってらっしゃいませ!」と横断幕のお見送りつき。


知床斜里駅が後方へ流れていきます。


知床斜里駅はちょっと海から離れていましたが、網走まではほぼ海沿いで、多くの区間で海を眺めることができます。ただし、流氷は風の影響を大きく受けるため、前日までは見えていたはずのものが当日見えない……ということも。


この日は残念ながら流氷の見えない日でした。ちなみに2016年の、流氷の網走への接岸は2月22日のことで、観測開始以来最も遅い接岸初日だったとのこと……。


気持ちを切り替えて、朝ご飯がてら物販カウンターで「網走プリン」(330円)と「オホーツク流氷塩サイダー」(200円)を購入。


網走プリンは数量限定なのでタイミングによっては食べられないこともある、卵の風味が濃厚な一品。


サイダーは、流氷を仕込み水に使用しているというサイダーで、色は流氷をイメージしたオホーツクブルー。宗谷の塩が使われていて、甘みと同時にしょっぱさがやってきます。色に影響されてか、サイダーというよりも「ブルーハワイを炭酸で割ったような味」を感じました。


列車はその間もオホーツク海の横を走り抜けていきます。……というこの写真は車内に展示されていたもの。乗車していると、この走行中の姿を撮影することができない、というのがちょっと残念なところ。


途中の橋や、ちょっと前後が開けたような場所にはカメラを構えた人を見かけることもありました。


撮影ポイントの1つ、「止別川鉄橋上のノロッコ号」。


「知床連山とノロッコ号」


「シマフクロウ ラウス側にて」


山側に、まるで草原のような場所が広がっています。これは氷に覆われた濤沸湖(とうふつこ)


そうこうしているうちに、列車は北浜駅に到着しました。流氷ノロッコ1号を除く2号・3号・4号は、この北浜駅に約10分停車するので、駅のホームにある展望台に上ることができます。わざわざ流氷ノロッコ号で往復することにした理由の1つがコレ。


「北浜驛展望台」


海に向けて張りだしているかのように見えるのが、これから向かう網走。


振り返るとこんな感じ。流氷は見えませんが、天気が良かったのが救い。


知床斜里駅ではホームからはみ出て止まっていた最後尾にも、この北浜駅では近づくことができました。「流氷ノロッコ号 極寒体験」というヘッドマークをつけていました。


しかし、ホームが列車のステップに対して低いので、お年寄りの中には乗降にちょっと手間取る姿も。


北浜駅を出ると次は終点・網走まで止まりません。その途上では山側が狭まり、オジロワシやオオワシを見ることができることもあるということでカメラを向けていたところ、鳥が木に止まっているのを発見。


しかし、いかにノロノロ走るから「ノロッコ号」だとはいえ、鳥はあっというまに視界内から消えてしまい、また逆光だったこともあって、貴重なオジロワシだったのかどうなのか分からずじまい。


海側に巨大なニポポ像が見えると……


北浜と網走のほぼ中間、鱒浦です。


網走港の防波堤が見えてきて……


短いトンネルを抜けると、一気に市街地の中へ。


終点、網走です。


流氷ノロッコ2号はここでお客さんをすべて降ろし、25分後、流氷ノロッコ1号として知床斜里へ折り返します。


流氷ノロッコ号廃止の原因の1つが、ディーゼル機関車の老朽化。冬季は主に除雪作業で使っていて、その余っている機材を使って流氷ノロッコ号が運行されているのですが、在籍するディーゼル機関車はいずれも国鉄時代に製造されてJR北海道へと引き継がれた年代物。維持費もかかることから、2015年度末から順次廃車されることになっているので、ノロッコ号運行に回す機材がなくなるからだそうです。

外からの目視では老朽化しているかどうかはまったく見分けることができませんでした。


立派な顔つき。むしろ、客車の方がダメージは大きそうに見えました。


ノロッコ号が休んでいる間にやってきたキハ40型。この列車は知床斜里方面ではなく、折り返して石北本線・遠軽へと向かいます。


列車の準備が整うまで、いったん駅の外へ。出口近くに、特急オホーツクとノロッコ号のプラレールが飾られていました。


網走駅で押さえておくべきポイントは、駅前の階段を降りたところにある、縦書きの「網走駅」。網走刑務所で知られる地だけに、出所した人が横道に逸れないようにという思いをこめて、縦書きになっているのだそうです。


なお、「網走監獄」の顔ハメもあります。これは博物館網走監獄から寄贈されたもの。


10時25分、「流氷ノロッコ1号」で網走を出発。往路もそうだったのですが、列車は団体の観光客に大人気。このときは海外からの観光客の方がたくさん乗車していました。


網走駅で入手したノロッコガイド。車窓のどこが見所かが紹介されています。


ノロッコ号の走る区間は、両端の網走駅・知床斜里駅を除く全駅が無人駅。藻琴駅・北浜駅・浜小清水駅・止別駅には食べ物屋さんが入っていて、網走駅と合わせてグルメスポットとなっていました。流氷ノロッコ1号は原生花園駅を除く各駅に停車するので、これらの駅に寄るにはもってこい。……ただし、降りると次の列車まで約3時間待つことになります。


車内では多くの人がカメラを取り出して風景を撮影していました。流氷が見られなかったのが実に残念。


実は、車内にはこんな顔ハメ看板が用意されているのですが、海外の人には大人気で、車内のあちこちで撮影大会が繰り広げられていました。


今度は、進行方向右手に濤沸湖。その向こうに見える山は藻琴山。


そしてそれより左側(東側)、ちょっと尖っているのが日本百名山にも選ばれている斜里岳


地元では斜里岳は雄山として知られており、ペアである雌山の海別岳がその北側にあります。知床斜里方面へ向かって走る途中、わずかに斜里岳と海別岳が同時に見えるポイントがあるということでカメラを向けたのですが、残念ながらこの日、海別岳は雲の中に隠れていました。


車内にはうっすらと煙が。


左右の海と山を楽しみつつ、するめをかじるのはたまりません。するめは丸ごと1匹分で400円。お酒やビールも販売されていてますが、乗車時間は1時間ほどなので、飲み過ぎにはご注意を。


やがて列車は知床斜里駅に到着。ホームには一斉に人がなだれ出てきました。廃止の方針が変わっていないならば、「流氷ノロッコ号」の運行は2016年2月28日がラスト。利用者は毎年2万人前後いるとのことで、実際に乗ってみて、団体客の利用の多さを実感しましたが、続けていくだけの規模ではなかったということなのかもしれません。


・2016/02/24 16:53追記
2016年2月24日、JR北海道が現行方式での流氷ノロッコ号の運転を今年度で終えることを発表しました。あくまで現行の「ディーゼル機関車と客車を用いた方式での運行を終えることが決まった」だけで、来年度以降は普通列車用の気動車を用いた臨時列車の運転を検討するとのこと。

「流氷ノロッコ号」の運転について
(PDFファイル)http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160224-1.pdf

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in 取材,   試食,   乗り物, Posted by logc_nt

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