Googleの書籍全文検索サービス「Googleブックス」は著作権違反なのかそうではないのか?

By Enokson

Googleは2004年に国内外の複数の図書館と契約し、図書館と合意の上で蔵書をスキャンしてデジタル化し、電子化したデータを図書館側に寄付する一方で、スキャンした本の目次や一部の内容をインターネットユーザーが閲覧できるようにするためのプロジェクト「Google Books Library Project」をスタートさせました。このプロジェクトから生まれたのがGoogleが提供する書籍の全文検索サービス「Googleブックス」です。同サービス内では著作権の保護期間が満了した作品については全文が掲載されており、それ以外の書籍は目次や内容の一部が閲覧できるようになっていますが、サービスが著作権違反を犯している可能性が指摘されています。

The Authors Guild Is Still Wrong About Google's Book Scanning
http://fortune.com/2016/02/08/authors-guild-google/

ニューヨークに拠点を置く業界団体のアメリカ作家協会は、Googleブックスのサービスが始まって間もない2005年にGoogleを提訴しました。それから10年が経過した2015年10月中旬、アメリカの連邦巡回区控訴裁判所で行われた審議で、アメリカ作家協会の「Googleブックスが行う『本のスキャンとインデックス付け行為』は著作権違反である」という訴えが満場一致で却下されました。同裁判所は「Googleの行為は著作権法に違反することなく公共利益をもたらすものである」としています。


これを受け、アメリカ作家協会は最高裁判所への上訴を検討。さらに、同協会の会長を務めるロクサーナ・ロビンソン氏はGoogleの行為がどのように間違っているのかを世の中に知らしめるため、The Wall Street Journal上で「How Google Stole the Work of Millions of Authors(Googleはどうやって何百万もの作家の仕事を盗み出しているのか)」という意見記事を掲載しました。

記事中でロビンソン氏は「2004年、Googleは図書館に引っ越し用のトラックをよこし、2000万冊にも及ぶ本を持ち去っていきました。これらの本の中には著作権の保護期間中のものとそうでないものがありましたが、すべてコピーされました。この施策は本の作家や出版社に対して何の許可も取っておらず、権利者に対して一切の保証を行っていません」とGoogle側の行いを痛烈に批判しています。

作家協会側はGoogleが2000万冊の本を版権保有者に対して何の断りもなく「盗んで」いき、その影響で作家が苦しんでいると主張しているわけですが、2度の裁判が示したようにGoogleブックスは著作権違反には当たらないという考えが多く存在します。


Googleブックスとアメリカ作家協会の法廷論争は、アメリカの歴史上においても最も長期に渡り続いているもののひとつです。訴えが起こされたのは2005年で、アメリカ作家協会はGoogleブックスが版元の許可なく「本の目次を検索可能にしている点」が著作権違反に該当すると訴えを起こしており、Googleは版元に賠償金を支払うべきと主張しています。

しかし、Googleとその支援者は本のデジタル化と目次付けは「ユーザーが本をオンライン上で検索可能になる(潜在的には本の販促にも繋がっている)ので、Googleブックスは社会にとって有益なものである」と主張。さらに、本のデジタル化は単純な「複写」ではなく、デジタル向けの有用な形に「変形」させたものであり、これは著作権法の「変形的利用」に該当するものであるとしています。また、Googleは本のデジタル化に際して目次をデジタル上でも検索可能にする行為は、「目次を見ただけでは本の中身までは分からず『目次はただの短いテキストの断片に過ぎない』ので、著作権侵害には当たらないと主張しています。

By Catface27

アメリカの法律では、版元の許諾なく著作物を利用しても「フェアユース(公正な利用)」であると認められれば、著作権侵害には当たりません。その「フェアユース」の判断基準は4つあり、1つは「利用の目的と性格」、2つ目に「著作権のある著作物の性質」、3つ目に「著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性」、4つ目に「著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響」が挙げられています。

アメリカ作家協会は2013年に行われた最初の裁判でGoogleに負け、2015年の2度目の裁判でもGoogleの「フェアユース」が認められる形となりました。第一審の裁判官を務めたデニー・チン氏は「Googleの本のデジタル化および目次付けは、作家と本好きの両方にとって有益なだけでなく、社会全体にとっての利益にもなっている」と述べています。また、「本のデジタル化で享受できる社会全体への利益」が「Googleが営利企業である」という点を上回る、ということで著作権違反ではなくフェアユースとして認められているとのこと。

By quattrostagioni

アメリカ作家協会はオリジナルの著作権法を考案した人物が「Googleのような強大な力を持った企業や、インターネットの存在を予知できなかったことは仕方のないこと」としており、フェアユースに関する条項が「営利目的の企業が版元の許可なしに多くの作品をデジタル化して複製・公開してしまう」ことを意図しているとは思えない、と既存の著作権法自体にも問題があると示唆しています。

しかし、そもそも著作権法が設けられたのは「作者が永遠に著作物から収入を得ること」を防ぎ、「科学や役に立つ芸術などの発展を促進」するためです。アメリカ作家協会にとって、本のデジタル化と目次付けにより人々に潜在的な販促が行えるということは、決して最悪のことではないはずであり、それどころか社会全体として考えればGoogleブックスが有益なものであることは間違いありません。アメリカのビジネス雑誌Fortuneは「アメリカ作家協会側の主張は法的に間違っているだけでなく、Google側よりもはるかに打算的なものに見える」と、作家協会側を痛烈に批判しています。

なお、アメリカ作家協会は「控訴裁判所での審議を他の裁判での判決と比べると、『変形的利用』のアプローチがかなり異なる。より基本に立ち返らなければ、デジタル時代における著作権保護は異常な範囲にまで広がってしまう可能性がある。著作権法の根本的な改変は、最高裁の判断なしで認められるべきではない」として最高裁に上告しています。

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