福島でも活躍した放射性廃棄物の処理で利益を上げる企業「Kurion」とは?


Kurion(キュリオン)」は、放射性廃棄物や有害廃棄物の処理に関する事業を専門に行う企業です。過去には福島第一原子力発電所のタンク水処理に関する契約を締結したり、核燃料及び同位体の遠隔除去を行うためのシステムを開発したりと活躍してきましたが、設立からわずか8年で同じエネルギー産業の大手企業から3億5000万ドル(約410億円)という価格で買収される見込みであることが明らかになりました。たった8年間でKurionがどうやって難しいと考えられてきた「放射性廃棄物の処理」という分野で、大きな功績を挙げられるようになったのかを、ベンチャーキャピタルのLux Capitalがまとめています。

From Wasteland to Fund-Maker — Medium
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過去25年間で最も大規模な原子力事故である福島第一原子力発電所事故が起きた際、誕生して3年ほどのスタートアップであった「Kurion」は、難しい問題であると分かっていながら、いち早く原発への対応を表明しました。それから約5年が経過した2016年、Kurionはフランス・パリを拠点に活動するエネルギー関連企業の「Veolia」に買収されることが明らかになりました。

わずか数年の間にKurionが放射性廃棄物の処理分野でこれほどまでに成長できた要因として挙げられるのは、これまでに何度も「人と反対の行動を取ってきた」ことと、常に「アウトサイダー」であったということだそうです

By Chris Potter

現在、世界中で大量の化石燃料が使用されています。2007年から2008年中旬までに、原油価格は倍以上に高騰しましたが、これは化石燃料が有限の資源であるからです。しかし、世界人口は増え続けており、経済成長を遂げる国々の登場でより多くのエネルギーが求められているのは明らか。また、化石燃料には地球環境に悪影響を及ぼすという側面もあるため、「これに取って代わる安価なエネルギー源を開発すること」が大きなビジネスチャンスにつながることは明白です。

実際、エネルギー産業では化石燃料に取って代わる新しいエネルギーの開発レースが勃発しており、太陽光やエタノールを用いた研究などが活発に行われています。そんなエネルギー産業で、核エネルギーを用いる原子力発電は有望なエネルギー源と考えられていました。しかし、核エネルギーの源となる「ウラニウムの採掘ビジネス」は詐欺師であふれかえっており、ウラニウムを使って発電を行うにしても、小型のモジュール炉を作るだけで非常に高額な費用がかかり、その上発電すれば放射性物質が出てくるというリスクを負う必要もあります。

By eutrophication&hypoxia

そんなエネルギー産業への参入をもくろんでいたKurionは、「エネルギー産業が成長したときと縮小したときに、どのような未来が待ち受けているのか?」を調査すべく、専門家約300人にインタビューを行い、徹底的な市場調査を行ったそうです。さらに、あらゆる研究レポートを読みあさり、関連知識をメキメキとつけていった模様。その中で、Kurionは世界中になんと440もの原子炉が存在することを知ります。さらに、これらはアメリカの核爆弾製造産業と同規模の市場であることにも気づきます。加えて、原子力発電産業は「発生する廃棄物をどう処理するか?」「第2のチェルノブイリ原発事故が起きたらどう対処するのか?」という大きな課題も抱えていたことにもKurionは気づいたそうです。さらに追加で、アメリカのエネルギー省が公開している情報から、アメリカでは放射性廃棄物の処理に年間で60億ドル(約7000億円)もの費用をかけていることを知ります。

核廃棄物の処理は非常に難しいもので、完全に処理するには50年以上の時間がかかる可能性もあります。しかし、当時はまだ最先端の科学技術がほとんど導入されていなかったそうで、それらの状況を踏まえてKurionは「最先端技術を駆使した放射性廃棄物の処理を専門とするスタートアップ」となることを決意した模様。


しかし、Kurionにとっても創業当時は苦難の連続であったそうで、特に多くのスタートアップと同じように人材確保に非常に苦戦を強いられた模様。しかし、幸運にもKurionはフランスに本社を置く世界最大の原子力産業複合企業である「AREVA」から現在のCEOであるウィリアム・ギャロ氏を引き抜くことに成功。他にも元ホワイトハウスの高官であるジョン・フォスターや、Fluorの前CFOであるマイク・スチュアート氏、Westinghouseの前CEOであるアリス・カンドリス氏など、多くの優秀な人材を迎え入れることに成功しています。

そして、放射線廃棄物の処理を安全に行うためのロボット開発や、危険な放射性同位体を安定した物質に変えるための化学処理の発見、低レベル放射性廃棄物をガラス形成剤及び他の添加剤と混ぜ合わせることでガラス状の固体にする「GeoMelt」などの開発を進めて業界内での地位を築き上げていきました。

GeoMeltでガラス状の固体になった低レベル放射性廃棄物。


さらに、日本で起きた福島第一原子力発電所事故の際には、福島第一原子力発電所のタンク水処理に関する契約を締結し、いち早く放射性廃棄物の処理に参加した実績もあります。また、福島第一原発には6800万ガロン(約2億6000万リットル)もの放射性廃棄物を処理するための技術システム構築ノウハウも提供した、とのこと。Kurionは「福島での仕事が終わった際、災害現場からはセシウムを含むほぼすべての放射性同位体を取り除くことに成功した」と記しています。

その後、Kurionは福島原発での実績を基に、アメリカやヨーロッパの市場でさらなる実績を積み重ね、ついにはフランスのVeoliaに買収されることとなるわけです。そんなKurionが誰もが難しいと考えた「放射性廃棄物の処理」という分野でスタートアップとして成り上がったように、「創造性やアイデア次第でどのような未来にも光は差しうる」とLux Capitalは記しています。

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