ハードウェア

ウェアラブル端末を進化させるカギは「汗」?運動量測定などの精度向上に有用な新技術が登場

By Kullez

FitbitJawboneなどの、装着者の運動量を計測してくれるデバイスは、「フィットネスバンド」や「フィットネストラッカー」などと呼ばれています。多くのフィットネスバンドは歩数カウントや心拍数の計測しか行うことができないのですが、スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発したデバイスは、そんな現状を大きく変えてしまう可能性を秘めています。

Fully integrated wearable sensor arrays for multiplexed in situ perspiration analysis : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v529/n7587/full/nature16521.html

This headband analyzes your sweat to improve your workout | The Verge
http://www.theverge.com/2016/1/27/10840680/sweat-wearable-analysis-real-time-berkeley

研究チームの開発したデバイスは、2016年1月28日に国際的な総合科学ジャーナルである「Nature」で公表されました。このデバイスは複数のコンポーネントを駆使することでリアルタイムで装着者の汗を分析することが可能です。

人間の汗をリアルタイムで分析するこの技術を使えば装着者の運動量や筋肉疲労度などをより正確に計測できるようになるので、スポーツマンにとって非常に有用なものになることは想像に難くありません。しかし、医者にとっても非常に有用な端末になり得るそうです。その理由は、汗は人間の体内から分泌される代謝物質であり、筋肉疲労度の他に体内の水分レベルを調べるのにも役立つからです。


この端末はヘッドバンドなどに埋め込まれ、無線通信で収集した情報をスマートフォンなどに送信する想定のようで、実際の開発風景などが以下のムービーで見られます。

This device analyzes your sweat to improve workouts - YouTube


多くの人々にとって、汗は「べたつき」や「感情を他者に示してしまう」だけの不要なものと考えられがちです。


ところが、汗には多くの情報が含まれているので、「筋肉疲労」や「体内の水分レベル」を示す指標にもなります。


しかし、汗の成分は時間と共に刻々と変化していくため、ここから情報を得ることはこれまで非常に難しかったそうです。


そこで開発されたのが、リアルタイムで汗の成分を分析できる小型のデバイス。


以下の写真がそのデバイスで、フレキシブル基板の上にある5つのセンサーで汗の成分を分析します。


これがデバイスの基板。


基板の左端には乳酸塩・ナトリウム・グルコース・カリウム・体温を検出するためのセンサーが配置されています。


そして、回路の反対側にはこれらのデータを保存しておくためのスペース。計測したデータは以下のようにスマートフォンに送信されます。


デバイスは小型なので、以下のようにヘッドバンドなどに取り付けることも可能。


実際にデバイスを身につけてもらい、数値を計測している様子。


新開発のデバイスで計測した数値は、据え置きのトレーニングマシンなどに取り付けられている汗センサーが示す数値と同じくらいに正確だったそうです。


「従来の汗センサーはパッチを含んでおり、分析したあとにはそれをはがす必要がありました。つまり、ウェアラブル端末ではなかったのです」と語るのは、イリノイ大学の物理化学者であるジョン・ロジャース氏。よって、スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発したデバイスは「ウェアラブル」である点と、「連続的なデータを提供可能」という点で革新的、とのこと。


また、汗センサーがあれば装着者の筋肉疲労度なども測定可能となるため、運動時にどの動作に対して体が特に反応しているのかなども分かるようになる、とのこと。


さらに、こういったデバイスを使えば病院レベルの血流や血圧などの測定も可能となるので、人間の健康管理はさらなる進化を遂げることになるだろう、とロジャース氏。


フィットネスバンドやスマートウォッチには歩数計や心拍数計が搭載されたものが多々あります。ここに新たに汗センサーが搭載されることとなれば、より多くのデータを処理することが可能となり、ウェアラブル端末がさらに便利になることは間違いありません。


なお、同デバイスの研究チームは現在のところ商業化に向けたパートナー企業を見つけられていないそうです。

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in ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

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