1959年と2009年の自動車を衝突させるとこんなに違う、50年間で自動車の衝突安全性能はこれだけ向上

自動車の進化の歴史は、安全性能の向上の歴史と言っても過言ではありません。そんな安全性能の変化を、1959年製と2009年製の2台の自動車を衝突させるという方法で、これ以上なく分かりやすく示すムービーが公開されています。

A small 2009 car demolishes a 1959 Chevy in a crash test
http://kottke.org/16/01/a-small-2009-car-demolishes-a-1959-chevy-in-a-crash-test

この実験は、自動車関連の安全に関する研究を行っている米国道路安全保険協会(IIHS)が実施したもので、テスト用の車両として1959年型シボレー・ベルエアーと2009年型のシボレー・マリブが選ばれています。以下のムービーは、あらゆる製品やサービスの品質を独自の方法で検証するアメリカの雑誌「Consumer Reports」がIIHSの実験映像に解説を加えたもので、2台の新旧シボレーが衝突する様子を克明に見ることができます。

2009 Chevy Malibu vs 1959 Bel Air Crash Test | Consumer Reports - YouTube


スタジオの中を走ってくる2009年型シボレー・マリブが次の瞬間……

反対側から走ってきた、シボレー・ベルエアーと衝突。2台の車は大きく壊れましたが、そのレベルには明らかな違いが生じています。

右から走ってきたゴールドっぽい色の車がベルエアー。2台が衝突すると、バンパーが外れ、ボンネットが折れ曲がるところまでは同じですが……

ベルエアーは衝突の衝撃を吸収しきれない様子で、めきめきと車体がつぶれて行く様子が分かります。

別角度からみると、ベルエアーが壊れる様子がよく分かります。衝突の衝撃は、ボンネット部分だけで収まらずに……

そのまま運転性のドアをひしゃげさせ、ドライバーが乗る空間までをも容赦なく破壊。現在の自動車は、衝撃をうまく吸収することで事故の際にもドライバーや搭乗者を守るための「サバイバルスペース」を確保するように設計されているのですが、1959年当時はまだそのような思想はほとんどありませんでした。

車内カメラをみると、その様子がさらに良くわかります。2台の自動車は、お互いの左前方で衝突する「オフセット衝突」でぶつけられています。オフセット衝突は、衝突のエネルギーを自動車の半分だけで受け止めるという過酷な条件に加え、ドライバーどうしがまともに衝突の影響を受けるという、非常に危険な事故のパターンとして知られています。

衝突の瞬間、ベルエアーのドライバーは体を前に投げ出され、体と頭がハンドルに激突。ベルエアーに代表される当時の自動車にはエアバッグがなく、さらにはシートベルトすら装備されていないため、いとも簡単に体が投げ出されてしまうわけです。

さらにその後、車体は大きくひしゃげ、固定の強度が十分でないシートが車体から外れてドライバーを真後ろから襲います。シートが外れたため、ドライバーの頭は天井にぶつかってしまっており、頭部に大きな衝撃を受けることになります。さらには、ムービーには映っていませんが、ドライバーのヒザや足回りにもペダルや各種パネルが激突することで、大きなダメージを負っていることは想像に難くありません。

一方の2009年型マリブは全く違った様子を見せています。衝突の瞬間、マリブではハンドルのエアバッグが展開してドライバーを保護。さらに、ドアが大きく損傷する様子もなく、Aピラーも折れることなくサバイバルスペースを確保。

内部をみてもその違いは一目瞭然。ドライバーの頭はエアバッグによって車体への衝突を免れ、シートベルトが体をホールドすることで、前へ投げ出されていろいろなところに激突する危険を防いでいます。さらに、車体にガチッと固定されたシートもドライバーの安全に影響を与えないようになっています。

このように、50年間で自動車の安全性能は大きく進化していることがわかりました。とはいえ、必ずしも昔の自動車が「劣っていた」のではなく、当時はそういう時代だったわけであり、今も昔も安全な運転が最も重要であることには変わりがない事は言うまでもなさそうです。