1700万円以上の私財を投じて数万人の健康や知能指数に被害をおよぼす鉛汚染水問題を救った研究者


人口約10万人のアメリカ・ミシガン州フリントで、水道水が鉛に汚染されていることが発覚しました。汚染水の影響で、住民は髪の毛が抜け、顔に湿疹が生じ、地域全体の知能指数に影響があることも示唆されています。フリントでは2014年から住民による体調不良の声があがっていたそうですが、ミシガン州は水が汚染されていることを1年半あまりにわたって認めてきませんでした。

Virginia Tech Researchers Said Flint Water Unsafe
http://www.attn.com/stories/5314/virginia-tech-flint-water-crisis

AFPBB Newsによると、汚染水問題は市当局が経費削減のためにフリントの水道水の水源を切り替えたことで生じた模様。それまでフリントではデトロイトから水を購入していたそうですが、2014年4月からは地域内を流れるフリント川の水を利用するようになります。しかし、この水は腐食性が高く、同地域の古い水道管を傷つけることとなり、水道水に鉛が溶け込むようになったそうです。なお、フリントの住民は水が原因で気分が悪くなるなどの体調不良を訴えていたそうですが、ミシガン州当局は水による健康被害の危険性を数か月間無視しました。

アメリカ自由人権協会(ACLU)と天然資源保護協議会(NRDC)の訴状によると、ミシガン州の環境当局は、フリントにある浄水場ではフリント川の水を州と政府が定める水質安全基準を満たすレベルにまで浄化・消毒処理できないにもかかわらず、これを利用することを許可していたとのこと。この問題は最終的にバラク・オバマ大統領がミシガン州に非常事態宣言をし、公的資金で支援することを発表する事態にまで発展しています。

同地域の住民には汚染水により髪が抜けたり顔に湿疹ができたりという影響が生じている模様。また、住民の認知力にも影響が及んでおり、思考力や地域全体の知能指数にも影響があるとのこと。この汚染水問題については以下のムービーが簡潔にまとめています。

米フリント市の水道水に鉛 髪は抜け知能指数にも影響と - YouTube


そんなフリントで起きた汚染水問題は、大学の調査チームや同調査チームを指揮しながらプロジェクトに個人的に資金提供してきたバージニア工科大学のマーク・エドワーズ教授がいなければ、より長期にわたってその事実をミシガン州により隠蔽(いんぺい)された可能性があります。ミシガン州が問題を認めることとなった背景には、水処理の専門家であるエドワーズ教授とバージニア工科大学の調査チームが、2015年にフリント川の水質調査結果を発表し、ミシガン州の「水道水は安全である」という主張を覆したからです。

エドワーズ教授がフリントの汚染水問題の存在を知ったのは、フリントの住民であるリーアン・ウォルターズさんから連絡を受けた際。ウォルターズさんは水道水の悪臭や変色を心配しており、州の環境当局に問い合わせたそうですが、当局からは「問題ない」という返答しか得られず、エドワーズ教授に連絡したとのこと。なお、エドワーズ教授はフリントやミシガン州の環境当局が「水道水は安全である」という主張したのは、複数のサンプル水から良いデータのものだけを選んだから、と指摘しています。


そして、エドワーズ教授率いるバージニア工科大学の調査チームは、フリント川の水質調査やサンプリングなどを行って調査結果を公表したわけですが、その調査にかかった費用が同チームの公式サイト上で公開されており、調査費用は合計18万917ドル(約2100万円)にも上ることが明かされました。

この調査にはアメリカ国立科学財団から3万2843ドル(約390万円)の資金援助もあったそうですが、その他の収入を含めてもなんと14万7174ドル(約1700万円)もの赤字となってしまった模様。そして、この赤字はすべてエドワーズ教授が個人の資金でまかなったことや、調査チームに参加した25人の学生と研究者は水質調査のために合計6000時間以上働いており、これらは16万5000ドル(約2000万円)相当の労働であることも明かされています。この通り、調査には多くの費用と人員が裂かれたことが分かるわけですが、エドワーズ教授は「我々が防いだ損害に比べれば、かかった費用は問題ではありません。我々が行える社会に対する最善の投資になりました」ともコメントしています。


調査チームの一員であるシッダールタ・ロイ氏は「市民の安全を守るために適切に行われるべき検査を、政府機関や施設は怠りました。もしもエドワーズ教授が調査に費やしたような資金を持っていなかったり、そもそもフリントの汚染水問題に興味を示さなかったら、一体今頃どんなことになっていたでしょうか?」とコメント。

また、エドワーズ教授は過去にワシントンD.C.の水道水の水質調査を行っており、この調査の際にはなんと自身の家を抵当に入れてお金を借りたそうです。ロイ氏はそんなエドワーズ教授について「ひどい政策決定により人々の健康が害されることに深い関心を抱いているんです。そして、その関心は特に鉛による汚染に傾いています」と語ります。


エドワーズ教授が支払った費用を取り戻すため、調査チームはクラウドファンディングサイトのGoFundMeで寄付を募っています。ページには記事作成時点で約2万5000ドル(約300万円)が集まっていますが、目標金額の15万ドル(約1800万円)まではまだ開きがある状況です。

FlintWaterStudy Research Fundraiser by Siddhartha Roy - GoFundMe


なお、映画監督のマイケル・ムーア氏もエドワーズ教授と調査チームへの寄付を募っています。

・関連記事
世界のメールの暗号化はたった一人の男に依存しており、開発資金はゼロになってしまっているという衝撃の事実が判明 - GIGAZINE

OpenSSLにオランダ政府が6400万円を寄付、「バックドア反対」を公式表明 - GIGAZINE

Wikipedia創始者の元に仮想通貨BitcoinがWikipediaへの寄付として続々と集まる - GIGAZINE

インターネットアーカイブが年末までに1300万円の寄付を募集 - GIGAZINE

159

in サイエンス,  動画,  メモ, Posted by logu_ii