クリエイティブな職業の考え方をガラリと変える「ヘルシンキのバス停理論」とは?

By Andy Siitonen

フィンランド系アメリカ人の写真家Arno Minkkinen氏は、2004年に学校を卒業する行った卒業スピーチ(Graduation Speech)で「ヘルシンキのバス停理論」について語りました。その中でMinkkinen氏は、フィンランドの首都・ヘルシンキのバス路線を例にした理論について「クリエイティブなキャリア形成を完結させる秘密が隠されている」との持論を展開。それ以降、ヘルシンキのバス停理論は数年間にわたって写真家の間で拡散されたのですが、The Guardianはこの理論が写真家に限らず、多くのクリエイティブに関わる職業で価値があるものであると論じています。

This column will change your life: Helsinki Bus Station Theory | Life and style | The Guardian
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2013/feb/23/change-life-helsinki-bus-station-theory

「ヘルシンキのバス停理論」の概要は以下のようなもの。20本前後のプラットホームを持つバス停があると仮定し、あなたはいずれかの路線のバスに乗って出発します。プラットホームから出発した全てのバスは、それぞれの決まったルートを走り、ルート上のバス停に止まります。Minkkinen氏はこれを「バス停はそれぞれの写真家の人生における1年間を表わします」と例えて説明します。例えばヌード写真家としてのキャリアを積み始めた写真家がいるとすると、3つの停留所にたどりついた頃には3年が経過し、初期のヌード写真作品をいくつか手に入れています。

3年間で撮影したヌード写真で写真展を開いた時、作品を見た専門家が「あなたはアーヴィング・ペンのヌード作品に精通しているのではないか?」と尋ねてきます。そこで自分が乗ってきた同じバスの路線には「アーヴィング・ペンのバス」も走っていたことに気がつきます。気付かないうちに著名な写真家と同じルートを走っていたことに気付いた写真家は、人のマネと思われるのを嫌ってバスを飛び降りてしまうかもしれません。

そうやってバスを降りた写真家は新たなスタート地点を求めてタクシーに乗り、最初のバス停に戻ります。この行動についてMinkkinen氏は「新しい仕事に出会ったり、他人と比べられることはクリエイティブな現場でよくあることです」と語りつつ、「3年後に同じようなことが起きるでしょう」と指摘します。

オリジナリティを求めて他者と自分を比較し、常に新しい可能性に対する挑戦することは、一見すると価値ある行動に思えますが、結局は誰かと同じルートを走ってしまうことが多々あります。Minkkinen氏はこのジレンマについて、「答えは簡単です。自分のクソみたいなバスにとどまるのです(Stay on the fucking bus)」とアドバイスしています。ヘルシンキのバスのルートはとても多様に分岐しており、最終地点に向けて急なルートを通ることがあるとのこと。つまり、本当のオリジナリティを見つけるためには、他者に関係なく自分が満足する写真を撮影し続けることが自分らしさにたどり着く近道になるというわけです。

By Thomas Leuthard

なお、The Guardianの記者はこの理論について、2つの説得力のある隠喩があると述べています。1つ目は「クリエイティブな職業において、最初の数年間で自分の感覚や他者からのフィードバックは信頼できるものではなく、持続することが重要である」ということで、もう一つは「オリジナリティをむやみに信仰する世界の危険性を示している」ということ。数多くの自己啓発本は、大学を中退してスタートアップを成功させる「特別な人」になる勇気を奮い立たせようとするものですが、ヘルシンキ理論はむやみにオリジナリティを追求しても英雄になるのは難しいことを示唆しています。

By glasseyes view

・関連記事
クリエイティブな才能は注意散漫な人の方が発揮できる - GIGAZINE

クリエイティブさを発揮させる人が行っている10個の行動 - GIGAZINE

コンピューターはアルゴリズムで「クリエイティブな芸術作品」を見分けて格付けできるのか? - GIGAZINE

インスタントカメラなのにレンズ交換式、長時間露光撮影や自撮りにも対応したクリエイティブすぎる「Lomo’Instant White」を使ってみた - GIGAZINE

トヨタの生産方式をベースにしたビジネス理論「リーンスタートアップ」の提唱者がKickstarterで限定著書を発行 - GIGAZINE

135

in メモ, Posted by darkhorse_log