ハードウェア

サイトのアクセス数を物理的にカウントする「機械式アクセスカウンター」の作り方


今から15年ほど前の2000年前後にインターネットに親しんでいた人なら、訪問するページに設置されていた「アクセスカウンター」を覚えている人も多いはず。刻々と増えるカウンターの数字に一喜一憂し、きりのいいキリ番に当たって「キリ番ゲトー ズザー」と書き込んだ碧い経験を持つ人も多くいると思います。

今やページのアクセス解析はGoogleアナリティクスなどの解析ツールが広く使われるようになり、単純にアクセス数だけをカウントするカウンターはすっかり姿を潜めてしまったのですが、SpriteことJeroen Domburgさんは、物理的なカウンターを使ってウェブサイトのアクセス数をカウントする方法を開発し、ネットで公開しています。

Sprites mods - Mechanical webpage hitcounter - Intro
http://spritesmods.com/?art=mechctr

ある日、Spriteさんが手に入れた機械式カウンターが以下の写真。友人から譲り受けて捨てるつもりだった袋に入っていたもので、黒くて四角い箱から伸びる2本のリード線と回転式の数字ドラムを見て、「これは機械式のカウンターに違いない」と思ったそうです。このカウンターは、2本のリード線にパルス状の電気信号が加えられると、数字が書かれたドラムが回転して数字が増えるようになっています。


この部品を見たSpriteさんは、その見た目を活かして「インターネットを始めた頃によく見かけたアクセスカウンターを作りたい」と思ったとのこと。さらに、このカウンターを使うことによる、見た目以外の別のメリットもあるそうです。それは、実際にこのカウンターが動いて数字が増える時に鳴る「カチッ」という音が、実際に誰かがページにアクセスしたことを知らせてくれるというもの。これが非常にわかりやすいモチベーションになるとのことで、Spriteさんはさっそく回路図を作成して、実際に動くカウンターを作り始めました。

ということで、Spriteさんが作成した回路図がコレ。右上にカウンターを示す部品が書き込まれており、その他にはトランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサがそれぞれ1個ずつ、というシンプルな回路になっています。


カウンターが動く仕組みは次のようなもの。左端にある「3」「7」「4」と書かれた部分がSpriteさんが管理するサーバーマシンに接続され、専用のプログラムを作成することでアクセスを感知した時に電気信号を出力します。そして出力された信号がトランジスタに入り、増幅されることでカウンターを動作させるための信号へと変換するというものです。

具体的にいうと、このカウンターは24V(ボルト)の電圧で動作する部品だとのこと。しかし一般的に見て、PCマシンが扱える電圧は5V程度がやっとで、必要とする電圧には到底およびません。そこでSpriteさんが目をつけたのが、20mAの電流を-10Vと+10Vで出力できるシリアルポート、いわゆるD-sub端子を使うポートだったとのこと。

By DuLithgow

とはいえ、+10Vと-10Vのいずれの端子を使っても、本来必要とする24Vには届かず、20mAという電流容量もカウンターが必要とするものには足りません。そこでSpriteさんはある秘策を投入。それは、D-sub端子の3ピン「+10V端子」と4ピン「-10V端子」の両方を使うことで、なんとかカウンターが動作する20Vの電圧差を作りだすというもの。また、両端子の間にコンデンサを入れて充放電することで、20mAという電流の上限をクリアすることにも成功。さらに、NPN型トランジスタのBN550を使い、7ピンからの信号で20Vの電気信号をスイッチング(オン/オフ)することで、カウンターの動作に必要な信号を与える仕組みを作り上げたのです。


いわば、オーディオアンプのプッシュプル方式に似た考え方で大きな出力を得ようという回路設計なのですが、唯一の懸念材料は、3ピンがマイナスの時に4ピンがプラスに転じることでコンデンサの極性が反転してしまい、コンデンサの破裂に至るという事態。しかし、流れる電流が20mAという小さなものであるため、保護回路は省略することにしたそうです。

この回路図を元に作り上げたのが以下の回路で、プリント基板を使わずにパーツ同士を直接ハンダ付けしてもなんとかなるレベルのシンプルさだった様子。ちなみに、この写真には水色の筒状のコンデンサ、黒いトランジスタ、青くて縞模様の抵抗が写っていますが、ダイオードだけが見えない状態。これは、カウンター本体に内蔵されているからだそうです。


そして実際にカウンターを台に設置したのが以下の様子。実際に動作している様子は見ることができないようですが、きっと動いていることを確信させてくれる内容となっていました。


なお、D-sub端子を使った信号のやりとりはLinuxで書いたデーモン(プログラム)で制御しているとのこと。デーモンはGPLライセンスで配布されており、ここからダウンロードが可能だそうです。(クリックで圧縮ファイルをダウンロード)

なお、ソース元であるSpriteさんのページでは、実際にカウンターを作成した人からの報告を心待ちにしているとのこと。ページが公開されたのは2007年ですが、2015年時点でも時おりコメントが寄せられている様子からも、定期的に同好の士が集まっている様子が垣間見えるようになっていました。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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