「殺し」からビジネス・政治の世界へシフトしながら活動を続けるマフィアの姿とは
By Eneas De Troya
長いコートに身を包み、ボルサリーノの帽子をかぶってピストルを撃ち合う、そんなマフィアのイメージは映画の中だけのようで、現実社会のマフィアは一般市民の社会に入り込んでいるといいます。本場イタリアのマフィアは、暴力のイメージがある社会からビジネスの世界、そして政治の世界へとその勢力範囲を移動させていることが明らかにされました。
Italian Mafias killing less but infiltrating more businesses | The Japan Times
http://www.japantimes.co.jp/news/2015/12/16/world/crime-legal-world/italian-mafias-killing-less-infiltrating-businesses/
イタリアの警察組織の中でもマフィア捜査を専門に扱うDIAが発表した年末報告書によると、マフィアなどの反社会的組織が関わった殺人事件の件数は、過去10年から15年間で明確に減少しているとのこと。その一方で、DIAのNunzio Antonio Ferla氏は「複数のマフィアグループは、さまざまな地域や社会的環境に深く適応する動きを見せています」と、一般的に想像されるものとは異なる分野にマフィアが進出していることを明らかにしています。
この新しい社会への進出を受け、DIAはマフィア対策を「事業入札の監視やマネーロンダリング対策、犯罪を通じて得られた金で取得された資産の没収」へと変化させています。イタリア国家警察のMatteo Piantedosi副部長は、「2015年開催されたミラノ万博では著しい成果を挙げており、マフィアの標的とされることを防止しました。この成果と取り組みのモデルは、将来開催される同規模のイベントでも発揮されることになるでしょう」と、その成果を語っています。
イタリア議会で反マフィア委員会のトップを務めるRosy Bindi氏は「マフィアは『殺し』を行わなくなりましたが、腐敗は増加しています」と指摘。マフィアと関係がないと思われていた「クリーンな」社会への浸透は、2015年に明らかになった事件で広く知られるようになりました。この年、北部イタリアである人物が逮捕される事件があったのですが、この一件をきっかけにして世界の麻薬流通を牛耳っていると言われるマフィア「ンドランゲタ」が、30年以上にわたって裕福な地域に深く浸透していたことが判明。警察では、マフィアが麻薬取引で得た不正な資金を、裕福なイタリア北部で資金洗浄していたものと見ています。
By erik ERXON
また、2014年にはローマの市当局で長年にわたってマフィア型のネットワークが浸透し、市民サービスに充てられるはずの予算がマフィアに吸い取られていたことが発覚して騒然となったこともありました。世界中の汚職・腐敗をリスト化して発表するトランスペアレンシー・インターナショナルが2014年に発表した腐敗認識指数では、イタリアは175か国のうち69位だったことが明らかにされています。また、世界銀行の試算によると、マフィアの影響により失われた投資の規模は、2006年から2012年の間で160億ユーロ(2012年末のレートで約1兆6000億円)にのぼったとみられています。
DIAのFerla氏によると、マフィアが逮捕されるのは不正に得た資金を支出するタイミングであることがほとんどであるとのこと。イタリアの中央銀行が備えている、疑いのある資金操作を感知するシステム「SOS」のおかげで、警察は確たる原因なく預金額を急激に増やした口座を把握して捜査を行うことができるわけです。
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