サイエンス

超伝導をこれまでよりもはるかに高温の環境で発生させることに成功


金属や化合物を非常に低い温度に冷却したときに電気抵抗がゼロになる「超伝導」は、送電時に損失が生じないなどさまざまなメリットがあるため、実用化が期待される夢の技術です。しかし、極低温状態でしか発生しないため、超伝導をより高温で発生させることは、実用化に向けて避けては通れない道というわけで、世界中で高温超伝導物質の研究が進められています。そんな中、ドイツの研究グループが、203K(マイナス70度)という高温な環境で、高温超伝導体につきものの物質をまったく含まない状態で超伝導を発生させることに成功しています。

Conventional superconductivity at 203 kelvin at high pressures in the sulfur hydride system : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v525/n7567/full/nature14964.html

The Superconductor That Works at Earth Temperature | MIT Technology Review
http://www.technologyreview.com/view/542856/the-superconductor-that-works-at-earth-temperature/

Superconductivity record bolstered by magnetic data : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/superconductivity-record-bolstered-by-magnetic-data-1.17870

マックス・プランク研究所のミハエル・エレメット博士やマインツ大学の共同研究グループが、マイナス70度で硫化水素が超伝導性を示すことを発見したと論文で明らかにしました。論文はarXivに掲載されるやいなや物理学会に衝撃を与えましたが、高温環境下で発生する超伝導効果については、これまでさまざまな論文が出されてもその後、眉唾モノであると判明することが多いため、当初はエレメット博士たちの発表についても慎重な判断が求められていたそうです。

エレメット博士らは、硫化水素をダイヤモンドアンビルセル(DAC)内で200万気圧という超高圧環境にした上で冷却していくと、203K(マイナス70度)に到達した時点で、電気抵抗がゼロになり、超伝導に特徴的な伝導体内部の磁束密度がゼロになる「マイスナー効果」を確認したとのこと。arXivで論文を発表して以降もエレメット博士たちは研究データを集め、最終的に2015年10月に科学誌Natureに論文が掲載されることになり、一定のお墨付きを得た形です。


金属の超伝導体には、電気抵抗がゼロになること、マイスナー効果を示すこと、物質の同位体比によって転移温度が変化する同位体効果などの特徴が知られていますが、これら金属超伝導体とは異なる仕組みで、マイナス110度で超伝導性を持つ無機化合物の存在が知られています。

エレメット博士たちの研究グループは硫化水素が203Kという高温で超伝導性を示すことを発見しましたが、これまで硫化水素は40K(マイナス233度)という極低温環境下でしか超伝導性を持つことが見つかっていなかったとのこと。さらに、銅や鉄など高温超伝導体で不可欠な物質が含まれていないにもかかわらず高い温度での超伝導性を発見していることから、今回の研究がきっかけで、メカニズムがほとんど解明されていない金属化合物以外の超伝導体の仕組みへの理解が大きく進むのではないかと期待する声もあります。

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in サイエンス, Posted by logv_to

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