インタビュー

6年3ヶ月をかけて192ヶ国の世界一周を果たした渡辺大介さんにいろいろと質問してみた


伸びきったヒゲと動きやすいラフな服装が「この人はただの旅行者ではない」ことを教えてくれます。「南極のシーズンに旅程を合わせたので、南米も2回目となりまして」と旅のルートを尋ねても、理解するのにひと苦労。全ての国の制覇を目指していた渡辺大介さんとの出逢いは衝撃でした。

こんにちは、150ヶ国訪問で旅を終える予定の自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。私だって全ての国を訪問したいと夢は見るのですが、ビザを取る場所が限られていたり、ツアーで10万円以上かける必要があったりと、なかなか難しいものがあります。だからこそ、世界をくまなく周る旅人を尊敬してやみません。


初めて渡辺さんに会ったのは2013年9月のペルーでした。「全部の国を周るつもり」でという彼を放っておけずに、連絡先を交換。その甲斐もあって、2015年5月にインドで再会します。「とりあえず一通りは回りきったので、行きそびれた所を周っています」と相変わらず凄いことをしてました。コルカタの日本人宿だったんですが、みんな大介さんの旅路に興味津々。そりゃそうでしょう。私だってチャド、エリトリア、中央アフリカ、ナウル、サウジアラビア、アフガニスタンといった謎の国は気になるし、いろいろと教えてもらいました。

チャドの首都ンジャメナのモニュメント


サウジアラビアのスーク散策


タジキスタン、パミールは子どもがめちゃ可愛い。


こんな旅人と、出逢える機会なんてそうはありません。だからこそ、今回はいろいろと質問して、記事としてまとめてみました。

チャリダーマン(以下「チ」):
そういうことなので、よろしくお願いします。簡単な自己紹介をいただけますか?

渡辺大介(以下「大介」):
1979年生まれの36歳で、出身は岡山県倉敷市です。

ミクロネシアにて


チ:
世界一周を目指したきっかけはなんでしょう。

大介:
8歳の時に「世界ふしぎ発見!」を見て、ミステリーハンターのように世界中を見たい!と触発されました。

チ:
トータルで何ヶ国を訪問しました?

大介:
192か国(台湾含み)、未訪問国はイラク本国、リビア、南スーダン。非独立国(地域)を含めたら222ぐらいです。

ウズベキスタンの子ども


アンゴラ


チ:
この非独立国(地域)とはどの辺りになるのでしょうか。

大介:
訪問済みが英領ケイマン、米領プエルトリコ、仏領シントマーチン、蘭領サンマルティン、蘭領アルバ、蘭領キュラソー、英領アンギラ、フレンチポリネシア、クック諸島、米領サモア、グリーンランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド、ジブラルタル、沿ドニエステル、ガンジー島、ジャージー島、マン島、コソボ、西サハラ、パレスチナ、北キプロス、クルディスタン、香港、マカオ、シッキム、ラダック、ナゴルノカラバフ、南極大陸の30地域。

未訪問が英領タークス&カイコス諸島、英領バーミューダ諸島、米領バージニア諸島、英領バージニア諸島、蘭領サバ島、蘭領シントユースタティウス、仏領サンバルテルミー島、仏領グアドループ諸島、仏領マルチニーク諸島、英領モンセラルト諸島、蘭領ボネール島、ビトヶアン、トケラウ、ウォリス&フツナ、ニウエ、ノーフォーク島、ココス島&クリスマス島、仏領レユニオン、仏領マイヨット、サンピエール&ミクロン島、セントヘレナ島、フェロー諸島、セウタ、メリリャ、オーランドの25地域……です。

クルディスタンのアルビル新市街


仏領ギアナの巨大アオウミガメ母さん


プエルトリコ


ナゴルノカラバフにある「我らの山」像


マン島にあるラクシー鉱山の水車


チ:
全部の場所を周ろうと決めた理由はなんでしょう?

大介:
地球儀を見て、色分けされた場所はそこに何があるのかずっと気になってて、せっかく一周するならなるべく全部見ようと思ってました。旅に出る前は調べてなくて、行けない国はもっとあると思ってたんですが、意外に行けるもんでした。そうなるとますます制覇したくなりました。

ミクロネシアの伝統的な踊りの練習


ベトナムの道端にあった寝顔


チ:
世界一周が始まった日、終わった日はいつでしょう?

大介:
2009年5月11日に出国して、2015年7月3日に完全帰国。そのまま北海道を旅して帰宅したのが8月14日でした。旅の間に3度帰国して、合計で1ヶ月ほど日本で過ごしています。

出発して間もないフィリピンでの写真


マニラ市内


チ:
全部で、どのくらい費用がかかりました?

大介:
レートやATM手数料で詳しく覚えてない部分もありますが、大体1000万円前後です

チ:
この旅の資金って、どうやって貯めました?

大介:
ずっと世界一周が頭にあったので、最初に再就職しやすい看護師の資格を取得。その後に旅の資金を、4年弱くらい病院で働いて貯めました。他にはバイトしてた頃の残りや、子どものころからの貯金。それでも少しだけ足りなくなったのですが、何とか旅を完遂させました。

インドネシア、バリ島のロブスター


カイラスで見たチベット侍


チ:
長い旅の中で、一番良かった場所はどこでしょうか。

大介:
景色だと南極です。

流氷の海


ペンギンと一緒に


食べ物だとベトナムですね。

バイン・ロイ(左)とバイン・べオ(右)


フエ宮廷料理・孔雀編


そして、美人だとアルメニアとコロンビア。

アルメニア美人の一例


コロンビア、メデジン花祭りのパレード


コロンビア、メデジン花祭りのパレード


人の親切さだとシリア、イエメン、イランといった感じでしょうか。

シリアのクラック・デ・シュヴァリエというお城


シリアのハマ


イエメンの男たち


チ:
長い旅の中で、嫌だった国、もういいやっていう国とかあります?

大介:
赤道ギニア、ギニア、中央アフリカとか、賄賂請求がめんどうな国々は疲れました。

赤道ギニアのビーチ


ギニアの宿場町


チ:
一番多く訪れた国はどこでしょうか?

大介:
中国で、5回訪問しています。それ以前も、語学留学で上海に1ヶ月、北京に1年住んでました。留学中も授業さぼって旅行ばかりしてたので中国は大体周っています。

大理


三江・程陽橋とトン族の村


棚田


四川大地震から4年


モソ人の女性集落


チ:
訪れるのに苦労した国とかありますか?

大介:
「訪れるのに苦労する」=「ビザが難しい国」ですね。

アンゴラは、ザンビアでコンゴ民主のビザを取って、ナミビアのオシカンゴでトランジットビザを取得するのが、南から入る唯一の手段でした。そのあとコンゴ民主は入国できたのに、首都キンシャサすぐ手前の検問で「ビザのルールが変わったからアンゴラに帰れ」と言われ立ち往生。キンシャサからブラザビルに船で渡るだけで3時間後にはいなくなるのに、強制的に国境まで護送されました。理由を説明して、特別にアンゴラへ再入国。首都ルアンダでコンゴ共和国のビザを取ってブラザビルへ飛んでいます。

コンゴ民主共和国の丸木船


アフガニスタンは、オリエンテーリングみたいに、ウズベク→キルギス→タジク→パミールとビザやパーミットを取りつつ移動し、ホーローグでビザを取得。タジキスタンの首都ドゥシャンベから入るより、安全優先のため、ウズベキスタンビザ取り直して、テルメズとマザリ・シャリフの国境から、アフガニスタンに入国しました。

カブールで、リクエストされて撮った一枚


カブールの内戦で壊れたダラマン宮殿


バーミヤンの遺棄された戦車


「バンデ・アミール」という一押しの景色


最終日の朝に散歩したマザリシャリフ


あとは、トルクメニスタンのビザはウズベキスタンのタシケントで取れずに4年後にイランでリトライ。アルジェリアのビザは、東京で取るのも結構手間がかかりました。太平洋の島国ナウルも飛行機の便が異常に少なくて日程調整に苦労しています。

ナウルの硝石採掘跡


チ:
島国もあることですし、192ヶ国となれば結構飛行機も利用してると思うのですが……。

大介:
トランジットも含めたら100回くらい飛行機に乗っています。カリブ海と太平洋で6割ぐらいです。乗り遅れはなかったのですが、ドミニカ共和国のフライトで、空港を間違えていたことに前日の晩に気付いて、改めて買い直したときは、数千円無駄にしました。

キリバス、魚の養殖池


ミクロネシアのヤップ島


チ:
長い旅の中で、一番暑かった場所はどこでしょうか?

大介:
温度としては、パキスタンのモヘンジョ・ダロで50℃くらいです。ただ、体感的には45℃くらいだったクウェートとイランのバンダルアバアースが、湿度が日本の夏より高くサウナ状態で参りました。

イランのバンダルアッバース、ミナーブの土曜市


クウェートの街なみ


チ:
では反対に、一番寒かった場所はどこでしょうか?

大介:
グリーンランドのクルスクで-15℃ぐらいを体験しました。

飛行機から見たグリーンランド


日没


クルクスの朝


どの家にも犬ぞり


チ:
長い旅の中で、標高が一番高かった場所はどこでしょうか?

大介:
ボリビアのワイナポトシで、6088mの山頂まで登りました。次点はタンザニアのキリマンジャロ登頂で、5895mまで登っています。

ワイナポトシ登頂成功


寒くて死にそうだったキリマンジャロ


チ:
長い旅の中で、一番お金を使ったことは?

大介:
南極です。1USD=78円の時ですが、それでも約27万円しました。


チ:
長い旅の中で、何か病気とかありませんでした?

大介:
平均すると年一回ほど、風邪にはかかっていました。便秘や下痢は日本と同じ程度。後はダニや蚊に刺されたぐらいです。

チ:
いたって健康ですね。私はマラリアもやって、犬に噛まれたりしてるんですが……。

大介:
米領サモアで犬に噛まれましたが、地元の人が「予防接種してないけど狂犬病ウイルスはいない」と言うのと、ネットで調べてみても、噛まれたけれど大丈夫だった人もいて、放置しました。大丈夫でした。

チベットのカイラスにて


チ:
長い旅の中で、何か危険な目にとか巻き込まれませんでした?

大介:
命の危険は一度もなく、アルジェリアで乗ってたバスがバックミラーの接触事故を起こしてスピンしたのが一度、スリランカのキャンディーで3輪タクシーの運転手によるひったくり未遂が一度あったぐらいです。

パキスタン・カラッシュバレーの乙女


チ:
長い旅の中での、失敗とかありますか?

大介:
平和な時にリビアへ行かなかった事ですかね。他に2002年にイラクのバグダッドに行ってれば……。金銭的な失敗は全て終われば大した事ないです。

チ:
行きそびれた国を失敗と数えるなんて恐れいります。

イタリアといったらナポリのピザ


グルジアのアチャルリハチャプリ


チ:
何か国語を話せるようになりました?外国でのコミニケーションってどうしてます?

大介:
英語と中国語が少し。スペイン語、フランス語、ロシア語が単語50~60ぐらい。他は30個ぐらい覚えて、次の国で忘れての繰り返しです。困ったときはジェスチャーと絵でなんとかなります。

ブータンの首都ティンプーの映画館


民族衣装である「ゴ」を着用したブータンの人々


ブータン美人


じーっと見つめてきたブータンの子ども


ブータンの女学生


チ:
長い旅を終えた今、これからの展望をお聞かせください。

大介:
今後の事ですが、とりあえず数年間は地元で働きます。その数年間で結婚とか、子どもとかができたらどうなるか分かりませんが(定年まで出れなくなるかも)、その後は友人が関東の方でホステルやってるので、半分そこで働いて、半分バイトで看護師やろうかと。そこのホステルなら年に2回、1カ月ずつ休みとれるそうなので、その時はバカンスにでかけたいです。地元でがっつり稼ぐ→関東で旅行しつつ少しづつ貯金した後に、2度目の旅行を計画しています。行けなかった場所、行ってない海外領土(残りの島など)、居心地良かった沈没地の再訪。メッカへの巡礼、金が足りたら北極点が訪問予定地です。その後は未定ですが、看護師やりつつ、亡き祖父の家をちょろっと改装してAirbnbみたいにしようかなっと。働きながらちょこちょこと旅行して、死ぬまでに南極点と宇宙(高高度旅客機とか)を目指します。

以前泊めてくれた外国人が、宝くじが当たったら、世界豪遊の旅をしたいと言ってました。僕の場合は、安宿のドミで旅人と語らい、地元の人と同じバスに乗って、同じ物を食う、そんなバックパッカーの生活が好きなので、もし宝くじを当てたら、バックパッカーやりつつ、金がないと体験できない事には惜しげもなく金を使う。その国の上流も下流も体験する。そんな最高に贅沢な旅をします。

グアムの恋人岬


ビーチの頭上を飛行機が通過するセント・マーチン島


チ:
私も含め、みなさん大介さんのこれから気になるでしょうし、ブログなんかの開設とかはしないのでしょうか?

大介:
またどこかに行く機会があれば、報告を入れたりするので、Facebookを覗いてくれたら嬉しいです。

旅した人の数の分だけ、それぞれのストーリーが存在。記事を書きながらも、渡辺大介さんの旅路にワクワクさせられっぱなしでした。ありがとうございました。

(文・写真:渡辺大介
Facebook https://www.facebook.com/daisuke.watanabe.58118
文:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
英語もロクに話せないアラサー女子が「世界一周」したらこんな冒険が待っていた - GIGAZINE

世界一周バックパッカ―を1年間したらこんな冒険が待っていたまとめ - GIGAZINE

夫婦で世界一周した僕がよく聞かれる10個の質問 - GIGAZINE

「世界で最もビザを取るのが難しい国」を全世界196カ国を50年かけて制覇した旅人が語る - GIGAZINE

世界一の自転車旅行を22歳から50年も続けるドイツ人ハインツ・シュトゥッケさんに魅せられて - GIGAZINE

もしバックパッカー世界一周すればこんな1日を送ることになる - GIGAZINE

世界一周出発までの45日間にこなした10のタスクとそろえた58の持ち物 - GIGAZINE

in インタビュー, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.