映画

反イルカ漁映画「The Cove」で描かれなかった映像で反証を試みる「Behind “THE COVE”」


和歌山県太地町で行われるイルカの追い込み漁を題材にした2009年の映画「The Cove(ザ・コーヴ)」は、盗撮という手法が撮られたことや事実とは違う内容が主張されたこと、編集の方法に問題があったという指摘などがありつつも、第82回アカデミー賞を受賞したことで大きな話題となりました。公開から約6年が経過した2015年、日本人監督によってThe Coveの反証を試みる映画「Behind "THE COVE"」が作られ、カナダで行われた第39回モントリオール世界映画祭にも出品されたのですが、そのダイジェスト版がYouTubeで見られるようになっています。

Behind "THE COVE" digest - YouTube


「いただきます!」という小学生の元気な声が響く場面からムービーがスタート。


日本の捕鯨船にアタックするシーシェパードの様子と……


「ごちそうさまでした!」と再び大きな声で食後のあいさつを行う子どもたち。映画制作に協力した側であるシーシェパードと、映画の題材になった日本の学校の様子が対比的に描かれています。


学校給食として提供される「クジラの竜田揚げ」は、古くから伝わる日本の料理の1つ。


イルカ漁や食料としてのイルカについて、The Coveの主役とも言えるリチャード・オバリー氏は「確かに日本では注目されていないが、日本以外では注目されている」と語ります。


映画では「立ち入り禁止」の看板と共に「虐殺現場」としてものものしい雰囲気で登場していたイルカ漁が行われる入り江ですが、夏場は一般に開放されており全く印象が異なります。


入り江に入り込んできたイルカに……


子どもたちは大喜び。


一方で、エコテロリストとして指定されるシーシェパードのメンバーがやってくると、太地町には緊張感が生まれています。


はためく海賊旗。


多くの人が集まり、何やらもめている様子。


「関係者以外立入禁止」と書かれた看板が掲げてある金網越しに、撮影を試みるシーシェパードのメンバーたち。


街のあらゆる場所に黒いTシャツを着た人々が散らばり、撮影を試みています。


さらに、映画ではシーシェパードの内部文書も公開されています。


「武器はカメラと声だ」という文章があったり……


「私たちの使命は彼らを惨めにさせること」と書かれていたり。


そのためなのか、町ではとにかく至るところでカメラを向けられます。


あっちでもカメラ。


こっちでもカメラ。


町中が異様な空気で包まれています。


オバリー氏は自身の行動について、「これをやっているのは、ほんの一部の男性で、責任を彼ら以外の太地町の人や1億2700万人の日本人になすりつけてはいない」と説明。


一方で、もと捕鯨漁師は、資源としてのクジラについて評価できるまで商業捕鯨を一時的に禁止にした「商業捕鯨モラトリアム」がなければ映画で描かれているような問題は存在しなかった、と語ります。


また、The Coveでは「イルカ肉は水銀を多く含んでおり、毒性がある」という主張がなされているのですが、そのことについて「学校給食からイルカ肉を撤退したのは自分の子どもたちに毒を食べさせたくないためだ」と主張するオバリー氏。どうやら、イルカ漁を行う人々はイルカの毒性を認識していながらお金のために事実を公表していない、しかし自分の子どもたちには食べさせたくないのだ、という内容のようです。


しかし、学校側は「イルカ肉は給食として提供されていないのだが、彼らはしていると考えているみたいで」とオバリー氏の理論の根拠となる部分を否定しています。


さらに、作中で毛髪を採取され「水銀の陽性反応が出た」人として描かれた諸貫秀樹氏は「The Coveを見た人はみんな映画の中の主張を簡単に信じてしまいます。そして私は水銀中毒ということにされました」と語っています。なお、映画では「水銀の陽性反応が出た」と示されましたが、具体的な数値は示されませんでした。


入り江が真っ赤に染まる様子については「カメラの技術を使って真っ赤に変えられた」とのこと。


太地町の町長である三軒一高氏は「もし国連が日本のイルカ漁を受け入れられないのであれば、『人間は毎食特定のビスケットを食べなければいけない』と決めればいいんです」と語りました。


太地町のイルカ漁を考える会会長の中平敦氏は「日本人の悪いところは『多分』という言葉を使ったり、自分の感情をハッキリ言わないことだ」と語っています。


映画では、撮影側に対して怒鳴る町民の姿がよく映し出されましたが、少なくとも「感情を示す」行為だったとも言えます。


シーシェパードが日本の捕鯨船を攻撃する様子を描いたドキュメンタリー「Whale Wars」のカメラマンであるサイモン・ワーン氏は「私は何が撮影され、何が『Whale Wars』に使われたか、そしてその最終結果も知っている。編集前の素材と最終的な『Whale Wars 1』の番組内容も、実際に起こった事との違いも知っている」と語っており、ドキュメンタリーの内容が事実とは違うことを匂わせています。


The Coveの監督であるルイ・シホヨス氏は「私の最初の目的は、この話の両面を捉えるというものでした。だから太地町の役場にも漁師にも会い、彼らの話を聞きました。でも彼らはカメラが回っている時には何も話してくれなかった」と語っており、「両面を捉える」という方法が取れなかったため、The Coveの完成像が変化したことがうかがえます。


賛否両論ある映画ですが、オバリー氏は目的が「外圧」であるときっぱり断言。


ということで、ダイジェスト版を見ても真実を追ったドキュメンタリーというよりはプロパガンダ的な色合いが濃かったことが読み取れる内容になっています。映画を撮影した八木景子監督は「海外の活動家たちは感情論で、日本の捕鯨に圧力をかけている。環境のバランスを考えたら特定の動物だけを守るのはおかしい。相手の食文化や宗教を尊重しなくては、いさかいは決して終わらない」と語りました

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in 動画,   映画, Posted by darkhorse_log

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