サイエンス

まるでSFのような電気エネルギーで生きる「電気合成」微生物の存在を初めて特定、光合成や化学合成に続く第3の合成


電気エネルギーを直接利用して生きる微生物を初めて特定し、その代謝反応の検出に成功したことを東京大学 理化学研究所の共同研究チームが発表しました。二酸化炭素から栄養分を作り出す方法としては、太陽光をエネルギーとして二酸化炭素からデンプンを合成する「光合成」、そして太陽光が届かない環境で水素や硫黄などの化学物質のエネルギーを利用する「化学合成」の2つが知られていたわけですが、今回の発見によって新たに「電気合成」可能な微生物が存在することが確認され、その代謝メカニズムの一端が明らかとなっています。

電気で生きる微生物を初めて特定 | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150925_1/

KAKEN - 深海熱水海底発電と電気合成微生物群集の存在証明(24244091)
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/24244091.ja.html

生体機能触媒研究チーム | 理化学研究所
http://www.riken.jp/research/labs/csrs/biofunct_catal/

まず今回の発見の前段階として、2010年に太陽光が届かない深海熱水環境に、「電気を非常によく通す岩石」が豊富に存在するということが発見されており、この電気を流す岩石が触媒となって、海底下から噴き出る熱水と接触することで「電流が生じる」ということも発見されていた、というのがあります。この前提より、「海底に生息する生物の一部は光と化学物質に代わる第3のエネルギーとして電気を利用して生きているのではないか?」という仮説が立てられ、今回の発見のもとになる研究が行われたわけです。

研究の結果、鉄イオンをエネルギーとして利用する鉄酸化細菌の一種であるAcidithiobacillus ferrooxidans(A.ferrooxidans)を、鉄イオンを含まず、「電気のみがエネルギー源」となる環境で細胞の培養を行った結果、細胞の増殖を確認。なんと、細胞が体外の電極から電子を引き抜くことでNADHを作り出し、ルビスコタンパク質を介して二酸化炭素から有機物を合成する能力を持つことを突き止めた、というわけです。

これが電気エネルギーを利用して栄養分を作り出す微生物であるA.ferrooxidansの顕微鏡像。電気エネルギーを使って二酸化炭素を有機物に作り変える「電気合成」を実現。


しかもこの鉄酸化細菌の一種は、わずか0.3V程度の小さな電位差を1V以上にまで高める能力を持ち、非常に微弱な電気エネルギーを利用できるようにしていることも突き止めています。

これはどういうことかというと、0.3Vでは二酸化炭素から有機物を作り出すことはできないものの、外膜から内膜にかけて広がる分岐型の電子輸送経路を「昇圧回路」として用いることで1.14Vまで高め、電位差を利用して生きる「電気合成生物」であることが明らかとなった、ということになります。

以下の図が電気合成の現時点で判明している代謝回路。細胞内に存在する分岐型電子伝達系を昇圧回路として利用することにより、わずか0.3Vの電位差を1.14Vまで高め、二酸化炭素から有機物を作り出すという仕組み。


今回の研究結果によって、電気をエネルギー源として利用して、増殖できる微生物の存在が明らかとなり、同時に、電気が光と化学物質に続く地球上の食物連鎖を支える第3のエネルギーであることを示しており、深海底には電気に依存した生命圏である「電気生態系」があるのではないか、ということにつながっており、重要な知見になると期待されています。

なお、極めて微小な電力で生きる「電気合成微生物」の存在によって、微小電力の利用という観点からも新たな知見を提供するものとされています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse