インタビュー

1.5cmの史上最小ヒーロー「アントマン」のペイトン・リード監督インタビュー


「アクションヒーローはデカイほど偉い」という常識を覆す、わずか1.5センチメートルの史上最小ヒーロー「アントマン」が、2015年9月19日(土)から公開されます。公開直前のタイミングで、アントマンのペイトン・リード監督に、小さなヒーローを撮影する上で技術的に難しかったところ、「笑い」をちりばめた意図、注目して欲しい親子愛やこだわりのリアルな「アリ」など、いろいろなことを聞いてきました。

アントマン|映画|マーベル|Marvel|
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html

アントマンがどんなヒーローなのかは、以下の予告編ムービーを見れば一発で理解できます。

「アントマン」予告編 - YouTube


GIGAZINE(以下、「G」):
リード監督は、これまで「チアーズ」「恋は邪魔者」「イエスマン」などコメディタッチの映画を撮り続けてきました。今回、アントマンというアクションヒーロー映画のオファーを受けたとき、率直にどのように感じたのですか?

ペイトン・リード(以下、「リード」):
子どもの頃からマーベルコミックス、マーベル映画が大好きで、中でもアントマンはお気に入りのヒーローの一人でした。なので、アントマンのことを知り尽くしていたし、監督を任されてもできるという自信は、ある程度あったのです。

G:
アントマンはヒーローの中でも、小さくなるという特殊なヒーローですよね。

リード:
ええ。小さくなるヒーローということで、ビジュアル面でも今までにない斬新な映画になるんじゃないかと思って、作る前からワクワクしていました。


G:
これまでのアクションヒーロー映画では、「大きな世界での戦い」というのが一般的。それに比べると、1.5センチメートルのアントマンというアクションヒーローは画期的です。「小さな世界」で「迫力あるシーン」を描くことは、非常に難しそうに感じますが?

リード:
私は小さくなることこそが一番の魅力ではないかと思い、一番惹かれた部分でもあるのです。小さいこと、こじんまりしたところが、他のスーパーヒーローにはない親密さを感じさせてくれる、ある種の魅力があると思います。街全体が浮き上がるとか、マンハッタンが全壊とか、そういうことにはならずに、アントマンでは、クライマックスのバトルにしても裏庭だったり、少女の寝室の一角だったり、ブリーフケースの中だったり、そういう場所が大決戦の舞台になるという、今までの映画ではあり得ないところが、面白いところだと思います。

ヒーロー映画はあまりにスケールが大き過ぎて、観客がついて行けない、共感できないという、現実からかけ離れた部分がどこかにあり、その部分を私はマイナスではないかと感じていました。アントマンは現実世界の中の、現実世界に根ざした部分で、観客に共感してもらえるのではないかと思います。


G:
撮影技術上、難しかった点と、逆にやりやすかった点は何ですか?

リード:
技術的な面はすべてがチャレンジングでした。これまでも主人公が小さくなる映画はいくつもありましたが、現在の最新のテクノロジーを駆使した「リアル」なものにしたいという思いがありました。例えば、アントマンが小さくなって走り回るシーンでは、木目の筋のひとつひとつの質感が映るようにこだわったり、普段何でもないホコリでも小さい世界では大きな物になるはずで、現実世界の肉眼では見えない物を、想像力を駆使して作っています。

特に、ライト、照明のあて方にもこだわっていて、例えば、テーブルの上にランプが置かれているとして、普通の世界だと少ししか光が当たらないとしても、そこにアントマンが来たらものすごい光を浴びることになります。そういう小さな世界を想像しながら、リアルさを積み上げていきました。


G:
個人的に昆虫が好きなのですが、アリのリアルさには感嘆しました。羽アリが空中を舞うときに、ヘリコプターのような音を出すところなど、圧倒されました。

リード:
おお、それは嬉しいです!主人公はもちろんですけど、アリがアントマンの見所の一つだと思ってますし、徹底的にアリのことを調べ上げました。映画には数種類のアリが登場しますが、それぞれのアリにはそれぞれのスキル、技術があり、いろんな事ができるのです。何かと害虫扱いされることの多いアリですが、「アリってスゲーな!」と、アリの魅力に目覚めてもらえると願っています(笑)

あと、アントニーというスコットを背に乗せて飛ぶアリがいるのですが、西部劇のカウボーイと愛馬のような関係です。スコットとアントニーの関係から生まれるドラマがあると思います。そういう部分も見ている人に感動してもらえれば嬉しいです。


G:
感動だけでなく、アントマンには随所に「笑い」の要素がちりばめられていますね。コメディ映画を数多く撮影してきたリード監督には、やはり笑いに対して、こだわりがあるのですか?

リード:
子どもから大人まで純粋に楽しめる映画を作りたいという思いがあったのです。基本的な構成というのは泥棒映画でドキドキ、ハラハラというのがあるのですが、スコットをポール・ラッドが演じることでコメディ色を前面に打ち出すことができました。

そもそもアントマンの設定自体が、唯一のパワーが小さくなってアリをコントロールできるという、かなりバカバカしい部分があるのです(笑)そこから生まれる笑いというのも、とても大切にしました。


G:
主演のポール・ラッドと一緒に仕事をするのはやりやすかったですか?

リード:
ポールは素晴らしい俳優です。それと同時に、みなさんが映画の中の彼を見て「こういう人だろうな」と想像する通りの人です。とにかく気さくで、頭も切れるし、ユーモアもあるし、一緒に居て最高に楽しいヤツです。もちろん彼との仕事は最高に楽しかったです。

映画を作るということは、毎日毎日撮影に来て、いつも顔を合わせて、本当に大変な作業です。そういう仕事の中で、「楽しむ」ということを忘れないというのはポールと共通して持っていて、彼の仕事に対する真摯な姿勢というのも共感するところが多いです。


G:
ところでアントマンには笑いだけでなく「親子愛」、「愛情」という要素もあります。スコットと娘のキャシーとの愛情、ピム博士と娘のホープとの愛情など。これらの「愛情」という要素と「笑い」という要素のバランスをとるのは難しくなかったですか?

アントマン(C)Marvel 2015

リード:
まさしく、そういうバランスをうまくとるということが私にとって最大の課題でありチャレンジでした。「アントマン(蟻男)」なんてタイトルの映画を見に行って、まさか泣かされるとは誰も思わないと思うのですけれど、感動をきちんと伝えつつ、クスっとした笑いも起こす。それこそが私が一番やりたかったことですし、気をつけていたことです。ポール・ラッドが演じることで、それが実現できたと思います。ポールは主演だけでなく脚本にも携わっているのですが、彼とはいろいろ話し合いました。

そして、エモーショナルな、感情を揺さぶるという事に関しては、主人公のスコット以上に、ハンク・ピムとホープ・ヴァン・ダインという父と娘の物語が、複雑でありながらも心に響くところではないかと思っています。ピムの思いは非常に複雑ですよね。過去の悲劇から立ち直れずにいる。とてつもない罪悪感を抱え、そのせいで娘とぎくしゃくした関係になってしまう。そういう部分にも共感を覚えてもらえるのではないかと思います。


G:
当然、アントマンの続編にも期待しているのですが、次回作について何か話せることがあれば、教えてください。

リード:
まだ正式に話が進んでいるわけではないのですが、ポールも私もぜひ続編をやっていきたいという気持ちはあります。素晴らしいキャラクターがたくさんいて、物語も語り尽くせないほどあるので、ぜひ実現できれば良いと思っています。


G:
ぜひ、小さなアントマンを「大きく」育てていってください。

リード:
ありがとう。

G:
本日はありがとうございました。

「アントマン」は、2015年9月19日(土)から全国の映画館で上映開始です。

アントマン|映画|マーベル|Marvel|
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html

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