DirectX 12環境下ではついにAMDがNVIDIAを逆転する可能性

PC用グラフィックボード市場は、NVIDIAとAMDという2強が長らくしのぎを削ってきましたが、近年は絶対的なパフォーマンスでもワットパフォーマンスでもNVIDIAが圧倒するという展開が常態化していました。しかし、Microsoftの新世代API「DirectX 12」の登場で、この力関係は大きく変化し、AMDがNVIDIAを逆転する芽が生まれたことが、明らかになっています。

DirectX 12 tested: An early win for AMD and disappointment for Nvidia | Ars Technica
http://arstechnica.com/gaming/2015/08/directx-12-tested-an-early-win-for-amd-and-disappointment-for-nvidia/

Ars Technicaは、DirectX 12を使ったゲーミング性能を比較するために、NVIDIAの「GTX 980Ti」、AMDの「R9 290X」という両メーカーの誇る高性能グラフィックボードを使って各種ベンチマークを測定しています。なお、グラフィックボード以外の主要パーツは、マザーボードがASUS X99 Deluxe、CPUがIntel Core i7-5930K(6コア4.5GHzにオーバークロック)、32GBのDDR4メモリ、SSDストレージがSamsung SM951、電源がCorsair HX1200iという構成になっており、GPU性能をフルに発揮できる内容となっています。

性能比較はベンチマークソフト「Ashes of the Singularity」を使って、1080p、1440p、2160pの3つの異なる画面解像度で、Multisample Anti-Aliasing(MSAA)を切った上でパフォーマンスを「hight」の状態にした状態で、DirectX 11環境、DirectX 12環境についてそれぞれのグラフィックボードで実行されました。

まずは平均フレームレートの測定。オレンジ色のグラフがDirectX 11環境下で、青いグラフがDirectX 12環境下でのフレームレートを示しており、数値が大きいほど性能が高いことを表しています。CPUを6コア分フルに使った状態では、以下の通り、980Tiが若干、フレームレートを落としたのに対して、R9 290Xはスコアを大幅に向上させることに成功。いずれの画面解像度でも980Tiに肉薄する数値をたたき出しています。

なお、980Tiが伸び悩み、R9 290Xが劇的にフレームレートを増加させるという傾向は、CPUコアを4コアに制限してハイパースレッディングをOFFにした状態でも変わらず。特に1080p解像度におけるR9 290Xは、DirectX 12環境下でフレームレートが75％以上もアップするという劇的な効果を発揮しており、R9 290Xが980Tiよりも2年前に登場し価格がほぼ半値のグラフィックボードであることを考えれば、十分な戦闘力を発揮していることは驚異的と言えそうです。

激しい描画シーンにおけるCPU 6コア使用時の平均フレームレートはこんな感じ。

同じく激しい描画シーンにおけるCPU 4コア(ハイパースレッディングなし)の平均フレームレートはこんな感じ。

最後はデータのバラツキを回避するために99パーセンタイルでのフレームレートの測定結果。やはりR9 290XのDirectX 12環境下での強さが際立ち、ついに980Ti超えを実現しています。

今回のArs TechnicaによるAMD・NVIDIAのグラフィックボード性能比較試験では、これまで苦戦を強いられてきたAMDが、ことDirectX 12の環境下ではNVIDIAグラフィックボードを大きく上回るパフォーマンスを発揮する可能性を大きく感じさせる結果となりました。

この結果は決して偶然ではなく、AMDが早くから独自API「Mantle」の開発を進めつつ作り上げてきたGraphics Core Nextアーキテクチャが、メモリバッファ上で描画コマンドやパラメータをドライバに受け渡せるというローレベル制御のプロセスを改善したDirectX 12の設計思想にマッチしたGPUデザインになっていたことで、ついに大きな威力を発揮することになったというわけです。

Mantle APIのおかげでDirectX 12環境下での開発に実質的に約2年分の「リード」があるAMDが、DirectX 12世代ではNVIDIAとの性能差を一気に詰め、逆転する可能性がありそうです。